宝石の花

 今日は僕と一緒に暮らしている人形の誕生日。正確には、この家に来た記念日だ。

 あの子がこの家に来て、もう十年になる。きっと、もうすぐ寿命だろう。だから、僕はこの記念の日に特別なプレゼントを用意した。

 ふわふわとなびく、桃色と緑のグラデーションの髪。それを持った人形に、僕は箱を差し出した。

「お誕生日おめでとう」

 すると人形ははにかんだように笑って、箱を受け取って丁寧に開ける。中身を見て、彼女は驚いたような顔をする。

 中に入っているのは、宝石で出来た色とりどりの花。一輪一輪、ひとくちで食べられるほどの大きさだ。

「すごくきれい。おいしそう」

 そう言って彼女は花を一輪口に入れる。

 パキッと言う美味しそうな音がした。

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