供物の菜の花

 春。暖かな日差しの下で、今日も神様は花を沢山摘んでは僕の所に持ってきてくれている。いつもこうやって花を贈ってくれるのは嬉しいけれども、そう言えば僕は、神様に贈り物をしたことが無い。

 今更ながらにそれを恥ずかしく思いながら、僕は人間から供えられた菜の花を受け取りに行く。

 沢山の菜の花を抱えてふと思った。そして僕は、それをすぐに実行に移した。

 菜の花を全て適切に処理したあと、僕は神様の所へ行く。神様は不思議そうな顔をして僕を見る。その常磐色の髪の上に、僕は硬質な輝きを帯びた菜の花の輪を乗せた。

「いつもお花を下さるので、お礼です」

 神様はきょとんとしてから、嬉しそうに声を上げる。

 贈り物がお気に召したようだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る