剥離する石

 今日もうれしいおやつの時間。私のおやつはバームクーヘンで、私の人形のおやつは黒雲母。

 人形はわくわくした顔つきで、手のひらほどの大きさがある雲母を薄く剥いでパリパリと食べている。

「雲母食べるとき、いつも剥いて食べるよね」

「そっちこそ、バームクーヘン食べるとき、剥いて食べるよね」

 前歯でバームクーヘンを一層ずつ剥いで食べる私を見て、人形はにこりと笑う。

 この剥いで食べる癖は元々の物なのか私を真似しての物なのかはわからないけれど、まぁ、似たもの同士って事で良いんじゃ無いかな。

 ふと、人形が薄い雲母を目の前にかざして窓の外を見た。

 雲母越しに見える白い雲は厚みが無くなっていて、もうすぐ夏が終わるのだと思った。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る