まどろむ琥珀

 細い煙が揺蕩う部屋の中で、その人形は眠る。僕は彼女をぢっと見つめる。

 彼女はうつくしい人形だ。他の石とは違い、地中からしか採れない琥珀という貴重な化石だけを食べさせて育てた。

 僕が住んでいる家は人里から離れた海の入り江。そこには打ち上げられた琥珀が沢山転がっている。これを少しずつ拾って、遠く離れた街へと売りに出かけ、生活に必要な物を買ってくる。大きな荷台を牽いて街に行くのは大変だけれども、家で彼女と共に過ごす時間が少しでも多くなるのならどうと言う事は無い。

 今日は琥珀拾いも遠出の用事も無い日。こんな時には、琥珀を焚いて彼女と休むのが僕の楽しみだ。

 燃える琥珀からは刺激的だけれども甘い香りが立ち上った。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る