第7話 サブドミナント
夜は長い。
黒崎をタクシーに乗せて俺は自宅に向かって歩いていた。
来る時に利用した路線バスの最終はとっくに過ぎていた。俺と黒崎は生憎自宅の方向が真逆であるため、やむなく月を眺めながら歩いていた。今日はそれほど飲んでいないから、歩いてもアルコールは回らないだろう。
こんな夜中に歩くのは久しぶりだ。学生の時は家にいるのが嫌になって、夜中に外をふらついていた事があった。今思えばバカな話である。
歩くのがだんだんと嫌になってきた時、気付けばいつもの公園の近くまで来ていた。
キョロキョロと回りを見た。公園は、シン…と静まり返っている。ならばと思い、いつものベンチに座って、タバコを咥えチッと火をつける。ふー、と一息。
携帯灰皿を取り出した。せめて、灰は落とさないようにしようと、携帯灰皿にトンと灰を落とした。
誰も居ない。隣の方を見て、見つめていた。
未知との遭遇。俺からすれば地球外生命体と何ら変わりない存在。だが、悲観することはない。エジプトやメソポタミヤみたいに異次元のヒラメキを授けてくれるかもしれないのだ。未知ではなく、可能性である。カッコつけて言えばだが。
ふー、と吐いて見上げて眺める月は朧月である。
「かーえろ」
タバコの火を消して携帯灰皿を閉じて、再び帰路についた。
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