最終話 ホワイトデイ

明と愛子が殺されたが、沙江子は逮捕(たいほ)されなかった。警察は正当防衛と判断(はんだん)した。立花タワーで明が死んだ一週間後、沙江子はベッドで横になっている。世界で一番の医者がいるが、沙江子の状態はだんだん悪くなっている。沙江子:「どうして、まだ解毒薬が見つからないんですか?」医者:「申し訳ありません。検査では何も見つからなかったのに、沙江子様の状態はもっと、もっと悪くなっています。とても不思議です。これは論理的ではありません。」沙江子:「あなたたちは世界で一番頭がいい医者ですわ。でも、何も見つけられませんか?払ったお金を返してください。」あゆみ:「ねえ、残念ながらミラー博士も見つかりませんでした。この人はまるで存在しないみたいですわ。明は死ぬ前に電話に登録されてある全部の番号を消しました。」沙江子:「あの野郎!じゃあ、しょうがない!たくさん仕事が待っていますね。」医者:「すみません!沙江子様!それはよい考えではないですよ。その状態で働いたら、状態がもっと早く悪くなります。」沙江子:「どうでもいいです。100%の確率(かくりつ)で死ぬのなら、死ぬまで働きたいです。死ぬまで役に立ちたいですわ。現在の社会で私は世界で一番強い女性ですわ。」あゆみ:「でも、あなたの子供たち。死ぬまで子供を見ていたくないのですか?」沙江子:「今まで子供はあまり見られなかったわ。少しでも早く慣れるほうがいいですわ。」あゆみ:「かわいいそうに!」沙江子:「緑が子供をちゃんと見ていますわ。」あゆみ:「でも、残念です。真里菜ちゃんと高広くんは本当の両親を全然見られません。」沙江子:「大丈夫ですよ。より強くなりますわ。」あゆみ:「そうですよね。あなたの子供は将来で、とても強くなります。私もそうだと思います。」

4日後に沙江子はオフィスで胸を手で押(お)さえ、倒れて、ゆっくり目を閉じた。医者は遅れて来た。沙江子は心臓発作で死んでしまった。

それ以来、真里菜と高広が大人になるまで、副社長が会社を引き継ぐことになった。緑が二人を育てている。真里菜と高広は寄宿学校に入学しなかった。毎年、両親の墓(はか)に寄るようにしている。緑は新しい恋人ができ、一緒に普通の家族みたいに暮らしている。

18年後、真里菜と高広は大人になる。ホワイトデーの前にまた両親の墓に寄る。会話が始まる。真里菜:「残念だよね。特にお母さんはいつも幸せじゃなさそうだった。天国で幸せになるように祈っているわ。」高広:「そうだね。でも、それでも二人が出会ってよかった。」真里菜:「ねえ、おばさん?お父さんはどんな人だった?」緑:「残念ながら、明さんのことはあまり知らないの。でも会ったときは、優しそうだった。復讐の感情が強すぎて残念だったわ。さあ、覚えておいて。人生で難しい状況になったら、その時はいつもポジティブな考えをしてください。時々人はひどいけど、復讐は誰も幸せにならない。復讐で、たくさん人は傷つく。だいたいの場合、自分が一番つらくなるだけ。」真里菜:「なるほど!」高広「分かった!でももうひとつ、どうしてお母さんは幸せじゃなかったの?」緑:「そうねえ、沙江子様はいつも会社とお金のことだけを考えていたわ。欲が強すぎたの。だから、沙江子様の欲と明さんの復讐がお互いを壊し合った。とても悲しいね。」真里菜:「どうして人はお互いを苦しめあうの?」緑:「それは難しい質問。私にも分からない。ごめんね。」真里菜:「大丈夫!」緑:「たぶん衝動だと思う。」真里菜:「さ、明日は大事な日だよ!高広は準備したの?」高広:「準備したと思う。めっちゃ大きい会議でスピーチをしなきゃいけない。」真里菜:「ちゃんとできるよ。」高広:「ありがとう!お姉さん!」真里菜:「じゃあ、明日は早く起きなきゃいけないから、早く帰るね。」

今日、ホワイトデー、高広と真里菜はパートナーみたいに立花エレクトロ製品の社長になる。その会議は全国で生放送される。小さな外国のテレビでも生放送される。だから、理論的には世界中の人が会議を見られる。会議が始まる。

真里菜:「皆さんお越(こ)しいただきありがとうございます。私は一年前から副社長を務めている立花真里菜と申します。よろしくお願いいたします。去年から我が社で働き始めました。私は実際(じっさい)の経験がまだ少ないですから、社長の地位を断りました。責任が大きすぎると思いました。しかし、今日から私の弟も社長になりますから、十分足りると感じます。私たちは新しい時代を作りたいです。一緒にすべてを叶えます。今から我が社の新しい時代が始まります。そう、今後も引き続きご支援(しえん)のほどお願いいたします。以上です。では、弟に代わります。」

高広:「ありがとう!お姉さん。いいスピーチだったと思います。皆さん来てくださってありがとうございます。私は20歳、新しい立花エレクトロ製品の社長、立花高広と申します。よろしくお願いいたします。今日から私たちは両親の会社を相続します。元社長の目標は一番多く利益(りえき)を得(え)ることでした。この考えは終わります。今日から新しい時代が始まります。今から、私たちの一番の目標は人間の幸せです。」会議で皆さんは驚いている。立ち上がって叫ぶ誰か:「どういうことですか?」高広:「皆さん聞いてください。今日から姉と私は新しい基金(ききん)を作りました。立花ファンドという名前です。毎年会社が得た利益の80%は基金に入れます。世界の貧しい人たちが登録(とうろく)できます。毎年、ホワイトデーにお金をあげます。私たちは幸せでない人を助けたいです。両親の話を考えると、欲と復讐が一番良くないものです。今から、立花エレクトロ製品は欲に対して戦い始めます。欲と復讐のせいで、私たちは孤児(こじ)でした。世界中の皆さんが家族を持つに値します。お金だけで人は助けられないけど、そのお金によって、食べ物と服が買えます。世界で誰も餓(う)えて死ぬべきではありません。今日が何の日か知っていますか?今日はホワイトデーです。日本ではホワイトデーに、男性がバレンタインデーのお返しに女性にプレゼントを返します。今のところ、日本にだけ、この日があります。今から、ホワイトデーは世界中で知られるようになります。今から、毎年ホワイトデーに世界中の人を幸せにしたいです。世界中の皆さんが私たちのお客様ですから。世界中の人が女性で、立花エレクトロ製品は男性です。一緒に新しい仕事を頑張りましょう。皆さん、聞いてくださってありがとうございました。」会議に出席している人は困惑(こんわく)している。皆さんはどういうことかと考えている。でもたくさんの人が拍手(はくしゅ)した。

会議の後、立花エレクトロ製品の株価(かぶか)はちょっとだけ下がった。しかし、その少し後、株価は前よりも上がった。世界で立花エレクトロ製品のイメージが一番良くなったから。そのイメージのおかげで、世界中の人々が立花エレクトロの製品を買っている。だから、会社の利益はさらに上がった。もちろん、これからもまだ欲と復讐はあるけど、真里菜と高広のおかげで世界は少し良くなった。

高広:「良かった、階段を一段のぼったね。今から、新しい時代が始まる。たぶん、ほかの会社も同じ道を行くだろう。」真里菜:「それはいいけど、人間はまだ欲をもってて残念ね。地球上に人間がいる限(かぎ)り、憎しみ、欲、復讐、辛さがある。でも、いつかそれぞれが自分を変えたら、世界が平和になる。皆幸せになる。そういう世界はいい世界だと思う。たぶん私はバカだけど、この未来を信じてる。」高広:「お姉さんはバカじゃない。私もその世界を信じている。私たちは初めの一歩を踏(ふ)みだしてよかった。」


地球は、すべての人の必要を充足(じゅうそく)せしめても、彼らの欲を満(み)たしきることはできない。

               

                 ガンディー


                               終わり

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ホワイトデー 寝無男 @JustAGermanGuy

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