廃路

わたしはわだち

灰の降る

廃路を去った

まぼろしの

幌馬車の

わたしはわだち

あわだつ罪襲う

夜も遅い廃路の街灯

その痕跡としてだけただ

縦に割け目をもつ棒っきれが一本

路傍に刺さっている

廃柱明かせよ物言わず

夜の空降る

螺鈿の粉体の

積りを見よ

わたしはわだち

千々石ちぢわに消えた幌馬車の

わたしはわだち

灰の降る

夜の舟が聞こえてくる

もう誰も通行の用を棄てた廃路の耳で

しんしんと深まるばかりで

明けることのない夜にひと条

廃路が頬を伝うように延びている

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