襲晴(2011年4月の詩)

声がして

振り返ると

見渡す限りの平原の

平原を埋め尽くす花々の

淡い紅色の

花弁をつたう雪解けの水の空を見上げるのど仏の

張り詰めた弛緩があこがれを映している

やっとこの極限までやってきたなぁ

ふっとまぶたが下ろされた

俺のではない声の主の少女たちの

水晶色した眼球がいま

しずかに夢を見始めている

秘めごとのように

渡り鳥のように

そして俺は投げ打つ!

鳥たちにむかって快晴の空を

虚無に親しい俺の心を

胸の内を

うちあけるおそらく

華々しい過去の

現在に残った泥沼だろう

だから極度に身体は緊張している

俺の身体を構成する全細胞がブラウン運動を始める

それは一刻ずつ加速している

ああ混乱した乱脈が俺の平原に竜巻を起こす!

かつてない神の鼻息だ

しかし少女は髪もなびかないワンピースも振れない

そしてゆっくりと水晶色の

目 を あ ら わ す

すると竜巻も花々も花々の淡い紅色も平原も

し!

――と鳴りやんだ

雪解けの水はもうすでに気化していた

ああ少女ももういない

俺がひとり佇っているきり

無限の快晴の空が八方から攻め入っている――

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