第28話 水無月はそれを見て
三分なんてあっと言う間だ。だって、もう二分ぐらいたったはず、多分私が先輩を、守備をできるのはこの一回きりだ。
「清水さんは名城先輩についてくれればすきに動いてくれて構いませんよ。」
「……うん、そうさせてもらうね。」
私が活躍するために残された時間は一分だけ、多分皐月ちゃんや水無月ちゃんは私に期待なんてしてないだろうな。
「……けど、私もいい加減吹っ切れよう。」
大鳥君のためとか、伏見君のせいとか、皐月ちゃん水無月ちゃんとかそう言い訳はもうやめよう。
私がこの先輩に勝ちたい理由は……私のエゴなんだって。
「なめられたもんだよな。お前なんかが俺のマークなんて。」
目の前でボヤいた名城先輩が睨んできた。
ああ、そうか、伏見君の気持ちが少しわかった気がする。確かにこの敵意と言うものは凄く、凄く怖い。
だけど、同時に思う。昔の私が他人に向けていた物は、きっとこの敵意何だって。
「先輩、背が高いだけで意気がると、負けたときに言い訳が出来なくなりますよ?」
私は口元が緩んでしまった。伏見君、少しだけ私に知からをちょうだいね。不愉快だけど。
「……ふっざけやがって!」
その瞬間名城先輩にボールが渡った。
「ぶち抜いてやるよ!」
「ええ、どうぞ?」
バスケにおいてボールを絶対止める方法なんてない。それはどの競技もそうだ。けど、それは何の条件もないときだ。もし、もしも条件がある時それは私にも勝ち目があるってこと!
ボールが地を叩きその速度が加速していく。それが一定の速度になると先輩は左から私を抜いていった。
「は!口ほどにもねぇな!」
「それだから、うちのバスケ部は県大会ベスト8止まりなのよ」
「本当に失礼ですけど、私のこと忘れてませんか?」
皐月ちゃんが名城先輩の前に割り込む。
以前の私ならここで皐月ちゃんに任せていた……けど、今は私はエゴイストになる。
先輩は皐月ちゃんに驚かされてきっと私のことなんて見てすらいない。だからこそ私にできることがある。
「どっち見てるんですか。」
後ろ向きで手を伸ばしてボールに触れ、飛ばす。ボールはそのまま皐月ちゃんがキャッチする。
「なっ!」
「え?」
ボールを取った皐月ちゃんが物凄く驚いていておもしろい顔をしている。
「やった!流石清水お姉ちゃん!」
「清水お姉ちゃん?」
「あ!す、すいません、つい。」
お姉ちゃん、お姉ちゃん、私がお姉ちゃん!
「いいじゃん!お姉ちゃんて呼んで!」
「許さん!お兄ちゃんは絶対許さんぞ!」
伏見君が物凄い形相でこちらを見てくる。
「お兄ちゃんは黙ってて!お姉ちゃん凄いね、まさかお姉ちゃんが取るとは思わなかったよ!」
ナチュラルに伏見君が無視られてる。可愛そうだな。
「それにしても本当に凄いですね。清水さんが後ろ向きで何か使用としていたのはわかりましたけど。」
「私もなんか急に集中して、後ろにいる先輩の位置までよくわかったんだよね?何でだろ?」
「何か、お姉ちゃんて天才肌?」
「わ、私は天才何かじゃないよ?凡人、平凡、常人、普通の人間だよ!」
私から見たら二人の方が異常だよ!?
「さ、さっさと次に移ろうか!後は攻めるだけだよ!」
「………ねぇ、皐月。あれやらない?」
「アレ?……ああ!やろ、やろ!」
あれって何だろう?二人とも笑ってるし、き、気になる!
「あ、あれって何?」
「見ればわかりますよ。それに……さっきの清水さんのプレイを見たら私と少しだけ張り切ってみようかと」
そう言い水無月ちゃんは自分の定位置に戻っていった。
ボッチの青春ストーカーラブコメはどう見ても間違いである。 フクロウ @DSJk213
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