アフターエピソード
皆さん、ごきげんよう。卯月です。つい先月、台湾から帰国した湯浅さんと一緒に暮らすようになった私ですが、その後の日々をお伝えしようと思います。
まずは二人で暮らすに辺り、必要なものを考えました。それは、お互いの部屋の鍵です。これは幸いにも、私に渡されていた湯浅さんの部屋の鍵は合鍵でした。そして、湯浅さんもこっそり私の部屋の合鍵を作っていました。犯罪くさい気がしますが、愛する人なのでそこは気にしないことにします。
次に、部屋の大きさです。元々一人暮らし用の部屋であるのにも関わらず、ウーサの小屋を置いているのでさらに狭くなっています。
そこで湯浅さんと話し合った結果、柵は外すことにしました。
つまり、日常的に放し飼い状態にするということです。確かに私が試験的に年末年始の大連休で放し飼いにしたときも、大きな被害は無かったので、二人で部屋を隅々までチェックして危険なものや齧られ防止を施していけば大丈夫だろうという結論になりました。
「本当は、私が放し飼い生活を楽しんでいたのが羨ましかったのではないかい」
殴られました。
それから、元々私の部屋にあった本棚や、クローゼットの中の衣装ケースは、必要最低限のものを残して湯浅さんの部屋に移動させました。本棚は単純に部屋を広げるという意味で、衣装ケースの方は空いたスペースに湯浅さんの布団を入れています。
私は湯浅さんと愛し合う場として、私の部屋ではウーサもいるし放し飼いをしていることにより少し衛生面的にも心配になるから、そのときだけ湯浅さんの部屋に行くのはどうかと提案しました。
「ムードを考えろよ」
殴られました。
うさぎを飼うにあたり避けては通れない問題。小屋やお手洗いの掃除です。ウーサは湯浅さんの躾が良かったのか、単に監視が厳しいだけなのか、お手洗いはある程度決まった場所でしてくれます。
興奮したときは例外なようですが。
それでも週に一回はちゃんと掃除してあげないと衛生的にも良くないのです。掃除当番は、週替わりになりました。
二人で一緒にやれば早く終わるのでは、と思われるかも知れないですが、掃除している間にもウーサは近づいてくるので、その度に掃除を中断して相手をしてしまうという抗えない誘惑があるので、掃除していない側がウーサの相手をすることで、短時間で掃除を終わらせることに繋がっています。
「ちょっとゴミ袋を広げて持って」
そんな感じでちょっとしたお手伝いはしていますけどね。
あ、わかります? 手伝うのはもちろん私だけですよ。
そういえば、湯浅さんと皆さんに伝えることがありました。
高鈴もうさぎを飼い始めたのです。
「あら、そうなの。じゃあ今度二人で見に行きましょうよ」
湯浅さんはそう言ったのち、
「でも、一番可愛いのはもちろん、わかっているよね」
と言って、私をちらっと見てきました。もちろんわかっていますよ。
私たちはお互いに顔を見合わせ、いっせーの!の掛け声一つ。
「ウーサ!」
「湯浅さん!」
はい、殴られました。
そんなこんなで二人の生活は始まりました。もちろん幸せです。
ですが、二人で暮らしていく中である疑問が生まれました。
『ウーサは、私と湯浅さん、どちらによく懐いているか』
元々は湯浅さんの飼っていたうさぎではありますが、私も半年近くは二人だけで暮らしてきた実績があります。
部屋の中での私と湯浅さんの定位置・過ごし方は大体決まっていて、私は部屋の中央にある机の横に座布団を何枚かひいて寝転びながら読書をしていて、湯浅さんはパソコン机の前の椅子に座りながらネットサーフィンを楽しんでいることが多いです。
そんな中、ウーサの定位置は定まっておらず、私の近くで寝転んだかと思えば、湯浅さんの座る椅子の足元でくつろぐこともあるのです。両方ともに共通しているのは、手を伸ばせば頭を撫でることが出来る位置ということ。それはつまり、その人からの愛情をウーサが求めていることに他なりません。
だからこっそりとウーサにオヤツを上げたり、ぬくぬくマットを自分の近い位置に置いてみたりと、せこく好感度をあげています。
「何ずるいことしてるの」
湯浅さんに見つかりました。殴られました。そして、その後にこう言われました。
「それなら、二人一緒の場所にいればいいだけでしょ」
ノートパソコンというちょっとした出費もありましたが、二人して机の横で寝転がるようになりました。
トコトコトコ。ゴロン。
そして、その横にウーサも寝転がります。
そんな光景を見ると、私はとても幸せな気持ちになります。湯浅さんもそう思ってくれているといいな。
「何見ているのよ」
殴られ、ませんでした。触れる唇。
「好きよ」
湯浅さんの言葉に、私も、と返事しようとしたそのとき、
「ウーサの次に」
と言われました。複雑です。が、私も似たようなものなので気にしないようにします。
そんなこんなで、私と湯浅さんとウーサは幸せに暮らしています。
「卯月君、早く行きましょう」
今日はこれから、最近出来た『ラヴィアンローズ』という、うさぎカフェに行ってきます。
それでは、またいつかどこかでお会い出来たなら、再度うさぎの魅力をお伝えしようと思います。それまで、ごきげんよう。
― おまけエピソード 終 ―
うさぎ家 よろしんく @yoro_synk
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