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それから、いつものようにくだらない話をたくさんして、スイッチが切れたようにいびきをかき始めた寿一を置き、自室に戻って私も眠りました。(起きたときにうるさいくらい文句を言われましたが、同じベッドで眠るのは気が引けたのです)
そして寿一はあっという間に庭を綺麗にしてくれて、ガーデニングショップでも重たい土を運び、私と緑さんが植える花に悩んでいるときは、風見鶏や猫避けで遊んでいました。 私たちがなかなか決められないでいると、目の前にあった苗をさっさとレジに持って行ってしまって。 でもそれは、偶然にも私が買って枯らしたピンクの花の苗で。
「ビンカ、だって。」
緑さんもその花を気に入って、家の周りはビンカの花をいっぱい植えました。 そして、祖父の部屋から見える位置には、菖蒲の花を。
「やっと外観に見合う家になったね。」
いつまでも偉そうで図々しい寿一を、緑さんはとても気に入って、夏休みが終わってからも頻りに「今日は寿一くん、来ないのですか?」と聞いてくるほどでした。
祖父は、騒がしい存在に気づいているはずなのに、初日以来なにも聞いてこず、私もあえて自分からはなにも言いませんでした。
「庭にたくさんの花が咲きましたよ、松葉さん。」
「だからですか、最近とても良い香りが部屋に届くのです。」
「菖蒲にも見てもらいたいですね。」
「えぇ、本当に。」
私は相も変わらずに嘘を吐いたまま。
「菖蒲さんに、会いたいです。」
ただただ罪を重ね続けました。
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