Girl meets Death

ささこ

第1話 Giri meets Death

 私、佐藤さくらはどこにでもいるふつうの、いや、ふつうよりはちょっとツイてない高校生二年生だ。別に家庭環境に問題があるワケではない。どこにでもいそうではあるが、確かな愛情のある母親。決して良い父親とは言えない変人ではあるが、濃やかな気配りができちょっとだけ良い稼ぎの父親。乱暴なところもあるが本当は優しい弟。そんな弟が拾ってきた猫。自分で言うのもなんだが恵まれた家庭環境だと思う。


 なぜ私がツイていないのか。その絶対的な原因は学校だ。わかりやすく言えばいじめられているのだ。


 今は五月。進級してから一ヶ月、ふつうの高校生なら新しい友達がぼちぼちできている頃だ。だがそんなことは私には無縁らしい。席に着いて無言で授業の準備をしている私に投げかけられるのは友達からの何気無いけどあたたかい言葉などではなく、消しゴムのカスとか、鼻をかんだ後のティッシュとかそんなものばかりだ。

 そんなつらい時間を何とかやり過ごしようやく帰路に着く。満身創痍の私はいつも公園に寄る。いつ来ても人気がなくてどことなく寂れた公園は私に似ているような気がする。そんな寂しい公園で私はベンチに座ってだだ深呼吸をする。胸の内のもやもやを掃き出すように。

 でも、その日は私がいつも座っているベンチに先客がいた。吸血鬼のような銀髪に蒼く澄んだ瞳、そして漆黒のインバネスを纏い足を組んでベンチに腰掛ける長身痩躯の男の姿は中世の貴族を彷彿とさせた。

 その男に、私はつい声をかけてしまった。こういう瞬間を指して魔が差したというのだろうか。普段人がいない公園にいる彼のことが気になってしまったのだ

「あ、あの……」

「ん、なんだい?」

 ここで私はちょっと困った。話しかけたはいいものの、何を話すかまるで考えていなかったのだ。

「えっと……最近この辺に越してきたんですか?」

「う〜ん、別に引っ越してきたわけではないよ。」

「じゃあ、なぜここに?」

「佐藤さくらさん、君を変えに来たんだよ。」

「え?なにを言ってるんですか?意味がわかりません。」

「だ、か、ら、君を変えるんだよ。」

「……別に変わる必要なんてないです。現状に満足してますから。ってかなんで私の名前知ってるんですか!」

「嘘だね現状に満足してる人間はどんなに疲れていてもそんな濁った目はしていない。学校でいじめられてるんでしょ、君。死神にはなんでもお見通しだからね。」

 彼は誇らしげに言う。

「は?死神?なにいってるんですか!」

「ほんとなんだけどなー。じゃ、証拠を見せてあげるよ。」

 彼は言い、近くにあった色鮮やかな椿の花を持ってきた。

「じゃ、ちゃんと見ててね。いくよ〜」

 彼がそう言い終わると同時に椿の花はみるみる枯れていき、カラカラに干からびてしまった。これがほんの数秒前まで色鮮やかなあの椿だったとは信じられない。

「これで終わりじゃないからまだ見ててね。」

 すると今度は干からびた椿の花が徐々に色彩を取り戻し、すっかり元に戻ってしまった。

「こんな……ことが……」

「ふふふ、すごいでしょう?死神の能力ちからは生命を奪う力。ここまでは誰でも想像がつくだろうけどほんとうは生命を与えることもできる。まあ、色々とルールもあるんだけどね。」

「……あなたが死神だというのは信じましょう。正直まだ信じられない気持ちもありますけど。で、私を変えるってどういうことですか?」

「おっ、その気になってきた?その話をしたいところだけど、そろそろ門限の時間だろう?話は明日にしよう。」

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