お題遊び

「赤い風船」「見えない主従関係」「政権エクスカリバー(誤字ではない)」

 赤い風船を口で膨らませながら、猫耳メイド服の黒髪の乙女はダークスーツの青年を見やる。彼女が膝を立てて座るのは議長席、議場は次々に放り投げられる風船でまだらに赤く染まっている。


「よくたどり着いたわね。さっさとそのつるぎを持って行きなさい」


 青年は背後に横たえたをちらとうかがう。議員先生こと彼はトラップにやられて意識不明である。彼女の言う通り、議長席の目の前には派手な洋剣が無造作に転がっている。


「あなたが魔王ですか」

「違うわよ。あたしは政権エクスカリバーの擬人化ヒューマノイド。先時代のをクールだと言って特盛にしたセンセイがたの悲しき遺産よ」

「ずいぶん恨みが深いようだ」

「この風船はね、今まで流れた血なの。議事堂をダンジョンにするとか、正気の沙汰じゃないわ」


 彼女はため息をつく。


「いつから政権は奪い合うものになったのかしら。こんな形代まで作って。人間どうしで集まったり離反したり、年功序列やら主従やらで遊んでて、良き政治のことなんて誰も考えやしなかった。彼らはみんな権力にひざまずく奴隷だったわ」


 青年は彼女の独白をじっと聴いていた。


「あなたはどうするの? 剣を取れば、他者には見えない鎖で権力に縛られるわ。逃げたいならお逃げなさい。自由を勝ち取るラスト・チャンスは今よ」

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