容姿による人物描写
真っ赤なドレスの女がカウンター席の端に腰掛ける。高いスツールに上がる時、タイトなスカートの裾から程よく丸みを帯びた膝が覗いた。カウンターに片肘をつき、緋色にラインストーンを施した人差し指の爪をつるりとした唇に添える。まろやかな肩の、陶器めいた肌が店内の青みがかったライトに浮かぶ。透き通る肌に対して髪は闇のように黒い。その容姿はさながら、さくらんぼの擬人化のようだ。紅い果皮、乳白色のみずみずしい果肉。黒髪はその鮮やかさを引き立てる。
マスターがマティーニグラスを差し出す。燃え立つようなルビー色の液体が揺れる。良く冷やされたグラスは早くも室内の湿気に曇り始める。柔らかそうな指で脚をつまみあげる。くい、と一息に飲み干す彼女を隣の男が呆然と見ていた。彼女もそれに気づき、笑みを向ける。完璧な、左右対称の微笑だった。
「アルコールは入っていないわ。これから歌うんだもの」
彼女は軽やかに席を立ち、足の甲が前にせり出すほど高いピンヒールを鳴らして店の奥のステージへ歩いていった。
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