ある夏の日

水流那

第1話

人々は見る。

蒸し暑い紅の夏空を。

全てを覆いし鬱屈な曇天を。


夏空は、

僕の心を高揚させ、そして蝕む。

かつては燃えた瞳で、今は冷めた瞳で睨みつける。


僕は感じる。

威嚇するような咆哮を。

突き刺すような視線を。


夏の空よ、

いつでも僕に挑むがよい、

シャツの襟を立てそっと身構える。


冬はいつでも傍らに在り、

常に我々は冬の奴隷。

その冷血の凄みたるや。


僕はその鬱屈さに抗えず、

わが身の境遇を呪う。



現実は実に容赦なく、

僕の胸の真ん中に、

鋭い灼熱の刃を突き立てる。


火傷を負った僕は、

痛み苦しみ、

病を抱え込み、

堅固に心を閉ざす。

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ある夏の日 水流那 @suina

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