堕天彼女と付き合って3年目、正義の味方を目指していた僕ですが、彼女と一緒に神を滅ぼす計画を立てます。

ベームズ

☆神☆絶対殺す計画

「ねぇ、仕事と私、どっちが大事?」


どこか、不安を感じさせる口調で問いかけてくる彼女。


「……またそれか? そりゃ、どっちも大事だ。」

「そう……」


そんな会話を、ここ数日毎日している。


彼女の名前はルシフェル、



誰もがその名を一度は聞いたことがあるであろう、天界の超有名人、


そして現在、人間の僕と付き合っている、天使な彼女である。


僕とルシフェルが出会ったのは、今からちょうど3年前、


まだ僕が”正義の味方”を夢見てがむしゃらに体を鍛えまくっていた時のこと……


僕は現在、正義のヒーローとして、街の平和を守るため、その養成学校『ヒーロー学校』に通っている。


ヒーローを目指す者はみな、この学校を卒業してヒーローギルドに就職、正義のヒーローになるのだ。


僕もまた、ヒーローを夢見て入学した。


彼女と出会ったのは、その入学直後。


彼女は神を滅ぼそうと"ある恐ろしい計画"を実行しようとしていた。


それを聞きつけた僕は、彼女を止めるべく、彼女の家に押し入ったのだ。


だが失敗した。


彼女のことを見た瞬間、僕の心は彼女に一目惚れしてしまったのだ。


彼女はどんな理由であれ、倒さなければならない"悪"


と、本気の拳を打つ僕。


でも、彼女はそんな僕に一切武器を向けてこなかった。


だから僕も拳を下ろした。



それから話をした。



彼女は、僕には別に敵意を示していなかったので、無理に成敗する理由もなく、計画の実行も僕と付き合っている間はやめてくれるそうで、そのまま付き合うことになった。





それから3年、現在。





僕はヒーローギルドへの就職をするにあたり、をある事実を知らされた。


その事実とは、ヒーローを夢見てきた僕にとってとても受け入れがたいものだった。



自分の信じてきた正義を信じられなくなってしまった僕は、自分の信じてきたものに裏切られ、世の中に絶望してヤケになっていた。


彼女は、そんな僕のことを馬鹿にせず、励ましてくれた。


そこで、当時の彼女の気持ちがようやく理解できた気がした。




その後、多分お互いに同じことを考えていたのだと思う。


僕達は何を言うでもなく、自然と僕と彼女の出会うきっかけになった"あの計画"を実行しようということになった。



「それはまぁ、分かってるんだけど?」


言いにくそうに、目を泳がせながら言葉を続けるルシフェル。


「……やっぱり? 彼女としては? あなたの愛を感じたいというか? 何か形として表してほしいっていうか?」


チラッチラッと、僕の方を物欲しげな目で見てくるルシフェル。


「……何か欲しいものでもあるのか?あんまり高いものは買えないけど、それなりには用意が……」



何かの記念にプレゼントが欲しいのかと思った僕。


「違う‼︎」


だが、急に声を荒げる彼女。


「えっ?」


思わず手を止めて彼女の方へ視線を向けてしまう。


「違うの……その……形と言ったけど、それは……物じゃなくて、気持ち……みたいな?」


挙動不審。


「意味わからん、はっきり言ってくれ」


この上ない難問に思わずついにギブアップ。


「え〜……じゃ、じゃあ……その……す……好き……って、言って、欲しいな〜……なんて?」


キャッキャッ‼︎


と、顔を真っ赤にして一人で悶えるルシフェル。


「……ハズい、無理だ」


なんだかこっちまで顔が真っ赤になってしまう。


「ああああああああ〜〜ん‼︎‼︎‼︎ 人が死ぬほど恥ずかしい思いしてやっと言ったのに即却下とか‼︎ 最低‼︎ ケチ‼︎ このう○こ野郎‼︎」


「最後のはただの悪口だな‼︎……わかった‼︎言うから‼︎だから暴れるな‼︎障子が破れる‼︎」


ちゃぶ台をひっくり返して暴れるルシフェルを止めるのは大変だ。


……結局言わされた。





……しかし、


「本当に"こんなもの"で『神を絶対滅ぼせる』のか?」


とてもそんなことができるとは思えない"それ"をいじりながら問いかける。


「大丈夫。"あいつら"は所詮実体のないただの精神体のようなもの。"実体のある私達"なら一発で霧散させられる。問題はあいつらの実体がないが故のデタラメな動き。それをなんとかするのが"これ"」



そう言ってルシフェルが手に取ったのは軍用ライト――超強力LEDライト――だ。



「あいつらには質量ってものがないから中に浮くし、体を光の粒子に変換できるから光の速さで動き回ることだってできる。でも、人が作り出したこの光、LEDは奴らには干渉できない。これで奴らを照らせば奴らの光を無効化できる。それどころか、人間でいう体の細胞に異物が混ざるようなものだから致命的なダメージを与えられるわ!!」


ふふん!!


と、自慢げに鼻を鳴らして自慢してくるルシフェル。


「まじか……」


思わず言葉に詰まる。



まさか神がLEDライトで照らすだけで倒せるなんて……。



「……それで、神とはどうやってまみえるんだ?居場所も行き方も分からないぞ?」


そもそも神なんて、今まで出会ったことなんてないし、会おうと思って会えるかすはわからない。



「大丈夫。"パパ"なら電話一本で呼び出せるから」


と言ってルシフェルが掲げたスマホに表示された『☠️☆神☆パパ☠️』




「マジか〜……」


色々ツッコミどころが多すぎて思考が停止する。


「あとはこれで思いっきり照らせば、あのばかを思いっきり苦しみもがかせることができるわ‼︎」


つまり、


電話でルシフェルのパパを呼び出して、手持ちのLEDライトでルシフェルのパパを照らせば任務完了らしい。


……意味わからん。




「それでさ、これが無事に終わったらさ……」


急に深刻そうな話をし始めたルシフェル。


「な、なんだ?」


話の展開についていけない僕は、半分話が入ってこないまま、雑に返事する。


「その……結婚……とかしてくれないかな?」


一語一句、聞き逃すことはなかった。


「……うん、いいよ」


その上での返事。



「やった……」


静かに喜ぶルシフェル。



こうして、


彼女と付き合って3年目。


彼女のパパに挨拶して、許しをもらって結婚することになった。







なお、


ルシフェルを堕天させた張本人、ガブリエルは僕の後輩だということが発覚。


したが、ルシフェル自身はなぜか気にした様子はない。


それどころか、一緒に住むことになった。


『ちょっと二人で話してくる……』


と言って出て行った後、ガブリエルは泣いて走り去っていったしどうしたものかと思ったが、



次の日にはガブリエルが一緒に住むことになったと荷物を持ってうちにやってきて、ルシフェルは上機嫌になったし、仲直りできたのだと良しとした。


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堕天彼女と付き合って3年目、正義の味方を目指していた僕ですが、彼女と一緒に神を滅ぼす計画を立てます。 ベームズ @kanntory

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