第4章 (1)~(7)首都シャノン編

 あらすじ紹介なのに、第3章まではあまりにもクドクドとした各話ごとのあらすじ紹介でしたので、第4章からは少し構成を変えてご紹介します。


 第4章に入りましたが、この章はいわゆる”旅立ち前のいざこざ”メインの章ですね。

 その”旅立ち前のいざこざ”で、主人公なのに影が薄く、性格(魂)の性質そのものは人畜無害であるはずの”レイナ”に危機が迫ること数回、ニューフェイスの善玉魔導士2人の合流、そしていよいよ第3章までは声だけの出演であった”あの魔導士”が登場します。


 第4章における以下のエピソードを「首都シャノン編」といたします。


ー1ー 道は開かれた(1)

ー2ー 道は開かれた(2)

ー3ー 道は開かれた(3)

ー4ー 未来から投げつけられた幾つもの欠片(1)

ー5ー 未来から投げつけられた幾つもの欠片(2)

ー6ー 過去より絡み合う糸(1)

ー7ー 過去より絡み合う糸(2)



 第3章の終わりで、アポストルからの使い・ゲイブからの新たなる啓示を受けたルークたち「希望の光を運ぶ者たち」7人とレイナ、そしてジェニー。

 彼ら9人は、ジョセフ王子に仕える魔導士カール&ダリオとともに、馬車に揺られ、首都シャノンを目指していた。

※この時点において、新たなる啓示内容はまだ作中にて開示されていない。


 途中で馬車が止まったため、下車した一同であるが、そこは200年ほど前に首都シャノンの外れに造られた要塞であった。

 城からの迎えを待つ間、レイナ、そしてルークたちは、各々の外見の個性と美点を生かした、新衣装に着替える。それなりの場所に行くには、それなりの服装をしなければならないということもあるし、物語も新たなるステージへと突入したための衣装チェンジでもあるのか?


 時を同じくして――

 夕陽が沈み始めた首都シャノンの城内にある墓地にて、ジョセフは墓前のアンバーに語りかけていた。彼女の清廉な魂もその清らかな肉体も、風へと運ばれ、もうここにいないことを彼はきちんと理解していたにも関わらず……

 ジョセフの前に、アンバーの父であるアーロンが現れる。アンバーが殺されて以来、臥せっていたアーロンの体調を気遣うジョセフ。

 レイナたちが城の門をくぐったという知らせが入る。その時、”マリア王女”に、唯一の肉親であった愛娘アンバーを殺されたアーロンの顔が憎しみで歪んだのをジョセフは見た。


 広大な首都シャノンの城の荘厳さにビビる一同。

 そのうえ、これから控えているジョセフ王子との謁見に、とりわけレイナ、ルーク、ダニエル、ジェニーの緊張の糸はプルプルと震えまくっていた。だが、全員とも何とか持ちこたえることができ、ジョセフ王子の前で粗相をする者はいなかった。


 少年ゲイブからの3回目の啓示――闇に包まれ、国もろとも行方不明となっているユーフェミア国の民を救うという使命――についての本題に入ろうとした時……

 悪しき魔導士フランシスと、面白がりの少年魔導士ネイサンが突如、靄とともに姿を現した。現したというか、魔術を使っての明らかな不法侵入だ。


 フランシスは、いつものごとく懇切丁寧に優雅な物言いではあるも……

 奴とは対照的にネイサンは、ルーク、ディラン、トレヴァー、アダム、カール、ダリオを、そしてあろうことか、ジョセフ王子までもを”口で”挑発した。恐いもの知らずにも程がある。


 そのうえ、なんとあろうことか、神人の船にて”第3回目の啓示”を覗き見をしていたフランシスとともに、レイナやルークたちは、啓示内容を振り返るかたちとなってしまう。


 詳しい啓示内容については、本編「人生は彼女の物語のなかに」の第4章終了記念特別付録をご覧ください。


第4章終了記念特別付録

★超絶美少年・ゲイブが持ってきたアポストルからの3回目の啓示と更なる謎

https://kakuyomu.jp/works/1177354054880687347/episodes/1177354054883095797



 道は開かれた。

 彼らが行くべき地と果たすべき使命は、ここに来て、やっと明らかとなった。

 暗黒に包まれしユーフェミア国の民たちを救うという使命。そのユーフェミア国の民のなかには、手紙をゲイブに託した者の愛しい者も含まれている。

 そして、またしても断言されし勝利。だが、この啓示を持ってきたゲイブは”今までのゲイブ”とは明らかに違っていたと……


 啓示内容の振り返りが終わったフランシスは、対峙する者たちからの冷たい視線と態度を受けて、少し意地悪をしてみたくなったらしかった。

 ”未来を見た者”から伝えられた3つのことをルークたちへと伝える。

 いつぞやの影生者の兄妹がエマヌエーレ国にいること、「凍った騎士」はフレディと彼の仲間6人だけではないこと、そして……

 今から5年後、”あなたたち希望の光を運ぶ者たち7名の中のうちの3名がこの世界で生を紡ぐ姿が見えない”と――


 このフランシスの意地悪――嫌な置き土産については、本編「人生は彼女の物語のなかに」の第4章終了記念特別付録をご覧ください。


第4章終了記念特別付録

★城内に不法侵入した魔導士フランシスが残した嫌な置き土産

https://kakuyomu.jp/works/1177354054880687347/episodes/1177354054883094651



 伝えるだけ伝えたフランシスとネイサンは、誰の肉体も傷つけることはなく、すんなりと帰っていたた。

 フランシスの嫌な置き土産のなかで、とりわけ深い爪痕を各々の”心に”残したのは、3つ目に該当する、仲間もしくは自分の「死」を予言するものであった。未来から投げつけられた幾つもの欠片が彼らの心に深く刺さっていた。



 日が変わり、城内で剣の稽古をするルーク、ディラン、トレヴァー、フレディ、ヴィンセント。そして、城の一室にて、これからの旅に備えるレイナ、アダム、ダニエル、ジェニー。

 「肉体派」と「頭脳派」に分かれ、旅立ちの審議が下るまでの間、付け焼き刃ではあるも、旅立ちに備えたトレーニングならび知識などできうる限りの時間をとっている彼らである。

 自分たちの揺るがぬ思い(自分の人生の手綱はフランシスの言葉に惑わされずに自分で握っていく)を再確認し、そしてゲイブから伝えられた啓示の疑問点を考察する。だが、その考察において導き出されつつある答えにおいても、現時点ではっきりとした確証がないものであった。


 ついに国王ルーカス・エドワルドからの宣旨が「希望の光を運ぶ者たち」に下された。ルークたちは国王だけでなく、アドリアナ王国の次期国王となるであろうジョセフからも激励の意を授けられる。

 この場においては完全なる脇役であるも、このアドリアナ王国の歴史の1ページに残るであろうこのシーンを見ているレイナの瞳は潤み出していた。それとともに、国王が”この超問題児娘・マリア”より完全に匙を投げ、目を逸らし続けること(嫌な言い方をすれば同じ自分の子供であるジョセフに押し付ける結果となった)を選択したのだということを感じ取る。


 59年前、闇へと消えたユーフェミア国の救出に、アドリアナ王国が船とそして幾人かの平民を派遣するらしいという噂はアドリアナ王国の貴族階級にまず広がっていく。それは、アリスの城にあるダニエルの実家にも届いた。

 ダニエルの弟・サイモンがヴィンセントをヤリチン呼ばわりし、母・エヴァにたしなめられる。ダニエルの父・ヘンリーは妻(ダニエルの母)・エヴァの美しい横顔を見ながら、ダニエルがまだ、同じ城で暮らしていたある夜のことを思い出していた。エヴァは一見冷たい感じで性格もきつそうに見え、というか実際にきついが自分にも他人にも厳しい女性であるのだ。



 宣旨から数日後、レイナはカール、ダリオとともに城の廊下を歩いていた。

 突如、レイナは魔導士の黒衣を着た老人――”憎悪の炎が瞳に宿っている老人”に、掴みかかられそうになり――

 レイナは、カールとダリオに間一髪助けられる。

 掴みかかってきた老人は、アンバーの父・アーロンであった。

 カールとダリオに押さえられたアーロンは、押さえきれることできない哀しみの涙を静かに流す。

 その場を離れたレイナも、倒れ込むように冷たく固い床に膝を突き、ボロボロとこぼれ落ちる涙をぬぐい、”贖罪の思い”で嗚咽した。 


 城を発つ前夜――

「希望の光を運ぶ者たち」のうちの1人、フレディは生者でも死者でもなくなっている自分の肉体(刃物で傷つけることはできるが、その傷がすぐにふさがってしまう)に気づいていた。

 この首都シャノンで、夜の街並みを見下ろすのは”これで最後になるのかもしれない”と予感していたフレディのところに、ルーク、ディラン、トレヴァーがやってくる。

 近いうちに海へと繰り出す彼らの話のなか、今現在、最も海で恐れれれている海賊団である「ペイン海賊団」がトレヴァーの口から出る。

※ちなみに、この「ペイン海賊団」の主たる構成員たちは、ルークとディランの元・同僚たちであり、第5章において再会することとなるのだ。


 ちょうど同時刻、神人の船にて……

 ヘレン、ネイサン、ローズマリーの3人は、テーブルを囲み、食事をしていた。ネイサンは料理上手であるローズマリーに、無理やり野菜炒めを食べさせられる。

 フランシスが戻ってくる。

 何やら企んでいるらしいフランシス。希望の光を運ぶ者たちが出港する前に、一悶着を起こす気で、”マリア王女に恨みを持つ男”と話をつけてきたらしい。

 そのうえ、ついに自分たちの一味であるサミュエル・メイナード・ヘルキャットが”希望の光を運ぶ者たち”(サミュエルの一番の狙いであり、一番しかない狙いはアダム)の元へと襲撃をかける……

 奴は以下のように言う。


「マリア王女に恨みを持つ男――彼の名はティモシー・ロバート・ワイズというのですが、ティモシーには今回のメインディッシュは彼自身のマリア王女への復讐、いや処刑であり、サミュエルたちはその手伝いをすることとなっております。オーガストには、今回のメインディッシュは希望の光を運ぶ者たちへの襲撃であると伝え、ティモシーがマリア王女の息の根を止めようとしていることは伝えていない……そして、サミュエルは、ぶつかり合う2つの風が引き起こす嵐がどのように模様を変えるのか、ゆっくりと見物しながらタウンゼントとの再会を果たすといった具合でございます」と――

 愛と憎しみという相反するものを胸に抱いた若い男2人が衝突しあうのを眺めながら、サミュエルがアダムと再会を果たすという悪趣味な計画である。


 もちろんティモシ―が恨みを持っているのは、今のマリア王女――つまりはレイナではなく、悪魔のごとき魂の”本来のマリア王女”であるのは言うまでもない。

 けれども、フランシスはティモシ―に「マリア王女の中の人は今は別人」という事実を伝えていないようで……といっても、後々(頭に完全に血がのぼっている)ティモシ―はその事実に聞く耳を貸さない人物であることも判明はするも……



 全くの無実である”レイナ”が惨たらしい目に遭わされるであろう不吉さを残したまま、第4章 首都シャノン編は終了。

 そして、第4章 サミュエル・メイナード・ヘルキャット編へと続く……

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