第2話 会話に新たなる戦士が((
2,会話に新たなる戦士が((
『モノと苦痛』
ヒューランが扉を閉めると同時に捨てていった地図を元に森の奥へと足を進める。俺の家の方向に近く帰りも楽というラッキー運。
「子供の頃から運だけ、運だけはいいんだよね」
ヒューランと話し込んでいたせいか魔法使いが発見される付近に来た頃には空が青紫色に染まっていく。
このあたりは足場が悪く、暗くなるといつ危険なことに巻き込まれるかわからないため誰も近づかない。
「こんな場所にほんとにいるのかな」
青紫色に染まった空。
「……あっ」
ぬるっとドロ水が溜まっていた所に運悪く足を進めてしまった。
「運だけとかいった俺が馬鹿だった……」
そのまま坂道をごろごろと転がっていった。('ω')三( ε:)三(
痛い。
激痛とまでは言わない。が、全身に走る痛みが体を動かすことを許さない。
まずはここがどこなのか知りたい。
「アイシクル……は今日は来ない……か」
今日は一緒に着いてこないと言ったのだから呼んでも来ない事は明確。自分自身で起き上がり情報を得る事しかできないのだ。
どんなにひ弱な俺でも痛みに抗うことは出来る。
「いった……」
身体についた葉や土を叩いて、木の棒を支えにして立ち上がる。
さて、と転げ落ちた場所を見上げる。
急斜面のさかで今の体じゃとても登ることが出来ないと考えられる。
そして今は足場が悪い。
「……進むか」
「遅いなぁ…もう晩御飯出来てるのに〜っ!!」
自身の背には高すぎるその椅子にちょこんと座りバタバタと足を前後に動かすその姿は誰もが不思議に笑を零してしまうようだ。
もう日が暮れて、食卓には色とりどりの料理が並べられている。
これまでで一番の出来。だから食べてもらいたいのだ、早く。そう、早く。
だが、冷めてしまっては美味しさも保たない。
「どうしたのかな?」
きょとんと能天気に問いかけても応えは帰ってこない。
陽気な彼女の顔もだんだん暗くなっていく。
「ねぇ、大丈夫なの?」
風が強く吹き木々が揺れ、雫が1つ落ちた。
(……(;˘ω˘)スッ…スヤァ…(間)中の人の心ですもう大変)
「……?」
冷たく痛い風が吹く、そのとき、何か悲しい声が聞こえた。
(誰か……いる?)
早足で気配を感じる方向へと向かった。
美しい。
その涙に何も言えなかった。
魅了された。
あぁ、優しい
「……っ!」
視線に感じた『モノ』が俺に気づき肩をびくつかせる。
「ひゃっ…………あ、あのっ…」
涙を流したその姿に見とれてしまった俺は突然の声に我に返る。
「あっ……はい」
そして数分の沈黙が続く。
ただただ気まづいそれだけであった。
やがて大きく息を吸った口で言葉を発す。
「貴方は……なんで私を……」
見つけたのか?見ているのか?
まぁ何にしろ頼まれたことを実行しに来ただけ、と言うのが正解なのだろうか。
俺はその『モノ』にここに来るまでの経緯を話した。
「じゃあ……怪我してるんじゃ……」
俺が怪我していることを聞いた『モノ』が恐る恐る聞くとそう言えばと記憶の中から蘇る。
「あ……そうだった。」
なぜ人間は……
頭で情報が理解出来た時に身体と反応を起こして痛みを引き出すのだろうか。
「いった……っ!」
突如足から崩れ落ちる。
ひゃあっ!と『モノ』が駆け寄り大丈夫ですかと声をかける。
「少し我慢していてください!」
そうすると『モノ』は何かを唱えた。
そこまでの痛みじゃなかったはず。
なのにここまで痛いのは、ここまでに来る間この痛みを持続したまま歩いていたからだろう。怪我の事など忘れて歩いていた。だからだろう。
俺はそこで途切れた。
『貴方という大切な人』
『ねぇ、私まだまだだけど……いつか、いつかは貴方を超えるから。その時は……』
懐かしい記憶が蘇る。
あぁ、貴方は今どうしているのでしょうか。
「んっ……」
そんな声とモゾモゾと動く音に目が覚める。
「あ、やっと起きた」
『モノ』いや、者の雰囲気は俺が目覚める前とはコロッと変わり、重く背負っていた何かを捨てたように軽くなっていた。
「あれ?」
「あれ?じゃないですよ、とりあえず家に案内してください」
何が何だかわからない。だけど、結果的に良い方向へ向かっているのならやっぱり俺はラッキーなんだなと思う。多分。
空は明るくなり日が登り始めていた。
「もう日の出!?」
目を丸くして驚く俺に、そんな驚くことでもないでしょう。と淡々と者は告げた。
「あれから寝ちゃってて、なんど起こそうとしても全くだし。」
者はさっさと行きますよと茂みをかき分けて進んでいく。
「あ、そう言えば」
「ん?」
「貴方の名は?」
くるりとこちらに振り向くと髪がなびいて、幻想的な雰囲気をつくりだす
「聞いちゃダメな質問でもないでしょう?どうしました?」
「あっ、うん。ごめんごめん。俺の名前はファーメント。なんとでも呼んで」
ふぅんと者が物珍しげに俺を見る。
そんなに珍しい名前じゃないでしょう……
「私の名前はサーラ。なんとでもどうぞ」
サーラ。あなたの名前の方が珍しくないですか?
「さ、自己紹介したし早く行こう。案内してよね」
それだけを言うとさっさと歩いていくサーラに慌てて俺もついて行った。
なぁ、ずっとここにいるのもいいけどさ、いつかは出ていくだろ?
そう…かもしれない。だけど忘れないから。貴方のこと。
「!!」
勢いよく俺の腹にタックルが直撃した瞬間だった。
「うわっ!!痛い!」
「痛いじゃないよ!!ファーンが帰ってこないから心配したのに御免もないの!?」
俺が理由を言おうとしてもすぐに次の言葉が飛んでくる。
「昨日は料理が美味しくできたから褒めてもらおうとも思ってたし、色々したかった事あったのに!ものすごく心配したから!したからっ……!」
もうっと頬をぷく〜っと膨らませて涙目でこちらを睨むアイシクルの姿が何故か可愛くて微笑みこぼす。
「笑い事じゃない……」
「うん。ごめん…可愛くてつい」
アイシクルが急に顔を真っ赤にする。
「あの〜?」
声のする方に顔をやるとサーラがめんどくさそうに苦笑する。
「でれでれするのはいいんだけれど人がいることを忘れないで?存在感強いほうだと思うんだよ自分自身」
いまサーラがいることに気づいたのか目を丸くする。
まぁ、そうだよなぁ……
「ねぇ、この人……」
「うん。ちょっと訳ありでアイシクルと同じ感じで拾ってきた」
「ひ……拾ってきたぁっ!?てかっ、私は拾われたんじゃない!」
また違う意味で顔を赤くするアイシクルにハイハイと適当に返事を返してサーラに言葉をかける。
「とりあえずなんか食べる?」
「当たり前。ここに来てから何も口にしてないもので。」
「サーラいつからここにいるの?」
「3週間?」
「死なね?」
「水は飲んでた」
そう言って俺とサーラは、この早朝の寒さから逃れようとさっさと家に入っていくのだった。
「……なによ、あの人」
『開花する美しい赤の色』
朝食を用意するアイシクルがサーラを風呂にと指示してまもなく。
「とりあえず……あの、サーラちゃんはどこから来たの?3週間も食事をとっていないなんて以上よね……」
3人分の皿のうち1皿は異様に食材が多く盛られている。
「まぁ、仕方ないんじゃないか?どこから来たのかもわからないからね」
「え、サーラちゃんって1体何者……?」
「知らないけど、知り合いの情報によるとこの世界に呼び出された魔法使いらしいぞ。魔法使いは言い過ぎだと思うけど」
「ふうん……不思議だね。なんか嫌だなぁ」
アイシクルはなんだか暗い顔をするが、すぐにいつものように笑う。
「ま、仕方ないか!拾っちゃったんだしね!」
「うん。まぁ少しの間だと思うけど、しっかり見たげて」
「あのー!着替えってどこにあるんですかぁ!!」
大きく……いや、家周辺に響くような煩い声が聞こえるとともに、豪快に扉が開きサーラが登場する。
うん。なんだこのお決まり……
とはいえ、タオルで身体はしっかりと隠されている。が、目の行き場がないのでサーラが視界に入らないように避難。
「あ、えっと着替えは……」
忘れてたのかよ。と、突っ込みたいがそこは置いといて、もういつどちらが持っていたなどと記憶にないような古く大きなTシャツ。
「とりあえずそれで」
パパッとサーラにTシャツを手渡すとすぐに脱衣場へと押し込んだ。
「……うん。驚いた」
「私も」
その後サーラが脱衣場から出てくるまで沈黙が続いた。
「……?どうかしたー?」
「いや、何でもないよ」
苦笑しながらサーラを席に座らせて朝食をとる。
チラリと視線を向けるとサーラは丁寧にナイフ等の食器の使い方を知っており、淡々と食事をする。
……マナーに関しては人並なのか。
視線を送るとサーラがこちらを見て視線が合う。
不思議そうに首を傾げるサーラを無視して、また1口。
美味しいと思った。それが料理の感想。
いつもと変わらぬ味。いつも同じように、ずっと繰り返す思い。
でも、何だか違った。
「さ、とりあえず行くぞ」
「ん〜?何処に?」
「いやサーラがどこから来たのか知りたいから」
え〜!!と心底嫌そうに言うサーラに苦笑しながらも、腕をつかみズルズルと引張ていく。
「待って、私も行く」
羽織を来て部屋から、早足でアイシクルが出てくる。
「家にいてもいいんだよ?」
「いや。行くの」
「……?わかった、行こうか」
いつにも増して頬の膨らみを大きくするアイシクルに首を傾げながらも家を出た。
「じゃ、ここからだな」
俺達が足を止めたのは、俺とサーラが出会った場所だった。
「へぇ、こんな森の深くで…なんで気づかなかったんだろう」
「それは多分私がこの世界の住人じゃないからじゃないかなぁ?」
「……え?それってどういう意味?」
それはぁ……と、戸惑うサーラに素早く声をかける。
「とりあえず、ここに来た時の頃から話してもらえる?そっちの方がわかりやすいかな」
「……!そうだね、じゃあ話すよ!!」
そうしてサーラが何者なのかがわかる瞬間が来たのであった。
「……もう、なんなの?」
その小さな呟きはサーラの楽しそうな声にかき消された。
時は随分と前になる。
私はあの地を捨てた。
家族も捨てた。
君も捨てた。
『僕の魔法と私の魔法と』
ねぇ……私は君が大好きなんだよ。
ランクは私の憧れやほしいものをすべて手にしていた。
ランク、君は素晴らしい魔法使いだよ。人望も厚いし、私とは間反対だよ。
私が住むこの世界は技術的な発展ではなく魔法的、非科学的な発展が進んでいた。そのため、今時魔法が使えない家系は珍しかった。
魔法というのは全国民が同じ魔術を使い生活するスタイルではなく、親の魔術の結合体を扱える。
例えると、父と母どちらも氷系の魔術を扱うのなら子供は氷系の強い部類の魔術を使う。いわゆる個性+個性の魔術。決してかけ算にはならない。なってはいけないのが魔術。
さて問題です。何故魔術はかけ算になってはならないのか、かけ算になったらどうなるのか。分かりますか?
ある所にお姫様がいました。
お姫様はみんなに内緒でいつもある男のコと話しています。
でもその男のコは毎日毎日食料を探しているような貧しい男のコ。
そんな事が知れれば男のコはこの世から消えてしまう。
だからお姫様は必死に男のコのことを隠し守ろうとしました。
だけどそう長くは続かない。
男のコは兵に捕えられて殺られてしまいそうになります。
首筋から一筋の血。
嫌ダヨ……嫌ダ……苦シイ怖イ怒リ悲シミ後悔など、沢山の負の思いがお姫様の中を駆け巡ります。
その瞬間、どこからとも言おうか、地面の下。地中の奥深くから耳を塞いでしまうほど大きな地響きがしました。
何事かと思う前に。
兵たちは命を落としていました。心臓を茨でつき抜かれていました。
その茨は次々と人々の生命を無にしていきます。
ここで一旦問題です。
この茨は何故、何処から、誰の力でやって来たのでしょうかね…?ふふっ♪
かけ算は危険。ダメだよ?近づいちゃ。
お姫様は王国から、この世界から逃げることを決意しました。
新しい自分、新しい名前でこれから生きていくのです。
心躍る。お姫様は魔術を使ってこの世をさりました。
おしまいおしまい。
「まぁ、こんな感じ!」
「普通にわからない…」
ファーメントが首をかしげてうーんうーんと唸る横で、アイシクルは何か……いや、全てをわかったように理解したように見える。
アイシクルはサーラに近づいて耳元で小さく話す。
「貴方って……そうなんだ?」
アイシクルの生暖かい息が耳に吹きかかり肩がビクッと強ばる。
「流石だねぇ……?」
この時、もう赤いヒガンバナが満開になっているのを理解していないのはファーメントだけだろう。空気が読めないと言う奴だ。
「なぁ、ところでこれを話してくれたけどさぁ、結局サーラは何者?」
アイシクルとファーメントの視線がこちらに集中する。
「それはねぇ……まぁ、なんだ。とある国で現役魔法使いやってたら大爆発に巻き込まれてここに来た超可愛い女の子だよっ!」
キランッとドヤ顔で2人に言い放つ。少しの間沈黙が続き、恥ずかしで自分でも分かるくらい頬が赤くなっていた。
「あ〜うん。どんまい」
「うわーん!そこはいつもみたいに突っ込んでよ!やめてー!!!」
君たち結局はなにも情報は得られないよ……なんてね!
情報が得られないという事が分かり少し周辺を探索することにした3人。その時俺は奇妙な棒を手にしたのだった。
「なぁ、これなに?」
それは簡単にデザインされた棒のてっぺんには天使の羽がついたルビーの宝石。そしてなにより……その棒から吹きだしがでて「テヘペロッ♪」と書いてある。
なんだこの可哀想な棒は……
「あ!やっと見つけたー!!」
そんな事を気にせず俺の手から棒を取り上げたのはサーラだった。
「いや、なにこれ」
「なにこれって見ればわかるでしょ?魔法のスティックだよ←」
……はひふへほ?
「え、サーラちゃんってそっち系なの?痛い系なの?うん」
「おま……サーラ流石にそれはないよ……」
そう、苦笑いもクソもない。アイシクルも俺もただただドン引きである。
やめてくれ……これ以上サーラに対しての好感度を下げたくないっ!!
「ほんとなんだってば!!そんなに信じれないの?私の言葉が?なんなら見せたげるよ!!」
「…え!?まてまて何する気!!」
サーラはそのヘンテコな魔法のスティックを力強く持つ。
「召喚されし光の戦士よわらわの名の元にいでの龍聖なる稲妻よ!!」
遅かったようです。アイシクル様……
ドオオォォォオオオンッと耳を塞ぐ程の大きな音と共に地面が揺れる。そう、自身も浮いた。
『あ〜神様女神様……助けてぇ…』
巨大な音が鳴り響く。その音の中心へと目を向けるとそこには、は?と拍子抜けな声を出してしまう。
可愛らしい小さなドラゴンがいたのだから。
「…ん?」
「ん?じゃないよ、可愛いでしょ!!」
なぜか得意げに応えるサーラにアイシクルが頭を抱えている。
…お察しします←
でだが……その後アイシクルがキレそのドラゴンを潰しにかかるという大変な出来事がありましたとさ…止める際に腹パンをくらいそこからの記憶が曖昧なので……
「ん〜……」
「あ、起きた。起きましたよついにこいつ起きましたよ」
「起きて聞く第1声がこいつとか悲しいわっ!!」
サーラが面白くなさそうに溜息を一つつきあたりを見渡す。
その対応はないだろ……と苦笑しながら俺も周りを見渡す。そういえば、俺はさっきまでどこにいたんだっけ?
うーんとさっきまでの行動を思い出してみる。
「あ、俺アイシクルを止めようとして……」
「腹パンされて一撃で気絶するとは……驚きだよもう。男とは思えないよねファーメントは」
…君達が異常なだけじゃないか?
「失礼な、俺は標準だから、普通にアイシクルとサーラが異常なだけだから、異様なオーラ漂わしてるから。うん。わかって?←」
「その気持ちはよくわかる、わかるぞ、だが……だが断る」
満面の笑みで返されてただただ笑うしかなかったのであった。
「てかさ、ここどこ?」
「……は?今さら何言ってるの聞くの遅くない?」
「色々聞くことがあったし、頭の中整理する順番があるんだよ……で?」
はぁ〜と面白くなさそうに死んだ魚の目をしてため息をつく。
態度ひどすぎいいいいい!!!!て叫んでもいいですか。
「ここは私がここに来た時に簡単に建てた家だよ」
「……建てた?いや普通に嘘つくなよどうせまたサーラの魔法でしょ?」
「は?建てたもんは建てたの!たとえそれが魔法だとしてもっ!!」
「いややっぱり魔法じゃん」
ぐぬぬ〜と唇を噛み締めるサーラ。もう何が気に食わないのか急に魔法のスティックを取り出して吹き出しの部分を俺の腹にくい込ませる。
んんんん???
「痛い痛い痛い痛い板ーいっ!!!やめろ!やめてくれテヘペロ♪に悪意をかんじるからやめてー!!!!吹き出しに悪意がああー!!」
助けて……アイシクル。いや、女神様←
急に勢いよく扉が開きそちらを向くとそこにはアイシクルがいた。
いやマジかよ俺の運。
「……ほんとにドラゴンとかの話じゃなく存在潰しちゃっても「駄目でしょ」
狂気に満ち溢れたその目に俺は全く映っていないようだ……すまないサーラ。頑張れよ。
と俺はアイシクルからサッと視線をはずした。
「サーラ……気をつけて。帰ってこいよ!!」
「は?え……どういう事!?」
ああぁぁぁぁあああっ!!!
アアアァァ( °∀°)ァァアアア
と煩い叫び声が聞こえたのはサーラの最後の言葉の30秒くらい経った頃だろうか…ああ、女神様やりすぎ…
頭を抱えて溜息をつく。顔を上げるが絶対にアイシクルを振り向く事が出来なかったとさ。
そして2度とサーラを見る者はいなかったという((違います次の話にも出てきますちゃんと出てきますよてかこのネタ2回目((ネタ切れ←2話目でええー!!←
俺の周りにはいつも煩くて可愛いのがいる。 @ahoppi3939jp
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