俺の周りにはいつも煩くて可愛いのがいる。
@ahoppi3939jp
第1話 可愛いはどこいった
1,可愛いはどこいった。
『可愛いはここにありますよ』
「それじゃぁ行ってくるね。」
日が登り変わらず穏やかな日差しと爽やかな風。こんな日々がいつまでも続けばいいのに。なんて言葉はこの世にはいらないらしい。
パタパタと早足で倉庫から出てきたアイシクルは日差しに弱くこんなにも涼しい今日も額から汗を一筋。
「どこへ行くの……?私もついて行くからね!」
心配そうに、弱々しく俺に問いかける。だが結局はいつものように、一緒に行くと言い出すのだ。
「いや、今日は一人で行くよ。呼ばれる側だからね。」
呼ばれる側と聞くとアイシクルは動きを止めて首を傾げる。
「だれから?」
「旧友?いや、旧くもないけれど」
誰から?と言われてもなんと応えておけばいいのか。なんせ今回会いに行くやつは存在自体が都市伝説。
そんなヤツ。
「う〜ん…呼ばれているということは、私はあまりついて行かない方がいいかな……。わかった。でも気をつけてね!!」
しゅん……と眉を八の字、口をへの字にしてどこか寂しそうにする様子がついつい可愛くて頭を撫でる。
アイシクルは驚くように俺を見て、そして満面の笑みで笑った。
木製の椅子(これも俺の手作り)に皺ひとつ無くたたまれた白衣を纏い、家を出た。
空は雲一つない、なんの迷いもない青空。青々とした木々が風に揺らぎその風が自身の身体を周りを駆け抜ける。
振り向くとそこはいつもの家で、アイシクルは微笑みながら手を軽く振っていた。
俺はその動きが可愛くて可愛くて、愛らしいと思う。幼くとも小さくともあの可愛さは破られることはないだろう。
俺は軽く微笑み返して道無き道を歩き出した。
これが、
彼女の出会いの1歩。
「…えへへっ♪」
『テヘペロッ♪』
草が伸び地面が見えないほどの場所は俺に草は踏まれ、街への一本道ができていた。
道無き道なんて誰が言ったか←
ここにあるじゃないかと。
「そろそろかな……」
この森を抜けると、細い路地があり城下町へと繋がる。
詳しく話していなかったが、この城はこの森、いやこの森の守護神、訳あって俺が住まわせている「アイシクル・エッジ」によって守られ続けている王都だ。
用があるのはその狭い路地の角にあたる小さな家。
その小さな家には勿体ない位の広い庭を持ち、そこには玄関へと続くレンガの道とハーブ。決して古いわではなく窓にはグリーンカーテンがかかっている。
(そう言えば……)
ふと思い出す。
今日は何の要件で、どうしてここに来たのだろうか?
(ま、考えなくてもすぐわかるか)
アカシアでできた扉をトントンと叩く。
…返事がない、ただの屍のようd((
「おーい、いるよね?入るから。」
失礼と一言気にすることもなく土足で足を踏み入れる。
もう何回目か、この繰り返し。
いつもここに来ると必ずと言うほど主人が顔を出さない。
その代わりに動物が迎えたりすることもしばしば……
と、話していたところで早速。
すまん皆、俺は馬鹿だった……ここの主人がいかに出来損ないだったかを承知してなかった。
「…んあ?……あ、来てたのか」
痛た……と腰に手を当てながら身体を起こす【こいつ】の名は
「寝てねぇで起きろよもう昼だわ!!わかってる?『ヒューラン』」
「テヘペr((うわっ痛い!や、やめろおーーーーー!!!」
その後ヒューランを見たやつはいなかった(大嘘)
では、茶番から本編へ戻ろう。
『テヘペロッ♪2』
「あ〜うん。で、今日はなに?」
こぶができた頭を冷やしながらよっこらせとヒューランがその今にも壊れそうな椅子へと腰をおろす。
「いててて……そうそう。ちょっと奇妙な噂があって……」
「噂かぁ、そういうの好きだねここの人達」
まぁな、と言って最近城下町で見かけるパソコンのファイルを開く。
「見てみ」
パソコンの画面を除く。
『最近、奇妙な噂が耳に入るようになった。
三角帽を頭からかぶり、白の無地なワンピースを纏う。そして手には謎の棒を持っている。
簡単な説明だがこれが今その奇妙な噂で出てきている人物。
まるで子供たちが夢に見る魔法使いのよう…』
まだまだうんぬんと文字が並ぶが重要な部分だけを読み取る。
「んで、この魔法使いらしき人物が?」
「あ〜この魔法使いが本当にいるのか探してきてほしいんだ。」
いるわけないと言うも、ヒューランは強く言う。
「それが見たんだよな」
「ならそれでよくない?」
でもな〜……と、こんなことを続けていたらいつまで経っても解決しない。
「あ〜わかった。行ってくるよ。」
「あ、まじ?じゃあ宜しく頼むよ!!」
渡されたのはカメラ一つ。
このカメラにその魔法使いを写して欲しい。それだけ。
「ふぅん……わかった。じゃあ行ってくるよ。」
そう言ってさっさとヒューランの家から出ていく。
「と言っても……情報が全くないこの状況でどうやって探すんだ……」
家の扉の前で立ち止まり悩んでいると
「あ、まてまて」
勢いよく開いた扉に激突してそのまま地面にダイブ。
……
「おいちょっと」
「あ、ごめんそれより魔法使いは森にいるから、じゃあな宜しく〜」
俺が文句を言う前に扉を勢いよく閉めて鍵を閉めている。
立ち上がった時に強く吹いた風がなんだか背筋をゾッとさせた。
「大丈夫かな……」
もうすぐ彼女がやって来る。
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