雨が嫌い
悠夕
第1話
雨は嫌いだった。
雨を甘い匂いやらいい風に表現する人もいるけれど、私は違う。
梅雨のこの季節────じめっとした温度の中。蒸し暑く、汗で貼りつくシャツ。
何より、遺伝で授かった偏頭痛がいけなかった。私の体質で、嫌いなところのひとつなわけで。
むわっとした空気。エアコンの効いた部屋から出た瞬間のソレ。
頭痛も相まって、ずっと水の中に潜っているようだった。
嫌い、嫌い、嫌い、嫌い、嫌い、嫌い、嫌い、嫌い、痛い。
痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、痛い、嫌い、苦しい。
ひたすらもがいてる気がして嫌だ。頭をかち割るような頭痛が嫌だ。雨の匂いが、嫌だ。偏頭痛が嫌だ。偏頭痛を遺伝で寄越した、母親が嫌だ。
「なんで、死んじゃったの……母さん」
母の死を思い出す、この匂いが嫌だ。
思えば母親が死んだのも、こんな土砂降りな雨の日だった。
だから、雨は嫌いなんだ。
雨が嫌い 悠夕 @YH_0417
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