第6回『時計』/ 目覚ましが鳴らない

ぼくらは目覚まし時計を渡される。ぎゅっと抱え込んでトンネルが開く日をワクワク待つ。目覚ましは狂いやすくて、やけに早く起こされる奴もいるし、鳴る前に呼び戻される子もいる。そんな仲間を横目にぼくは抱えた目覚ましがちゃんと鳴るのを待つ。待つ。待つ。

待って、なんだか遅くない? ぼくはいつでも大丈夫、まだかな、まだ鳴らない?



ぼくは一生この暗いところに閉じ込められるの?



怖い想像に震えて、つい壁を蹴った。出して、ここから出して! 目覚まし! ちゃんと鳴って! トンネルを開けて!

ふと、壁が光った。すうっと広がって掬い出される。初めての空気を吸い込んで叫んだ。

『ママ!パパ!』

ぼくだよ!



……違った、このひとはお医者さん。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

300字SSポストカードラリー in Text-Revolutions まるた曜子 @musiko

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ