罪状
『死刑です』と自信をもって答えたミランダに対し。
ジスパは大きく頷き、ダンは小さくガッツーポーズ。ナルシーは「よしよし」とつぶやき、リリーは親指を上に立てて『グッジョブ』の合図を送った。唯一シスのみが『可哀想』とボソッとつぶやくのみで、基本的に彼らの回答は一致していた。
そんな中、ほのぼのとご機嫌なアシュは笑みを浮かべて彼らの前に立つ。
「フフ……こらこら。あんまり冗談が過ぎると、彼らも本気にしてしまうじゃないか。すまないね、うちの生徒たちが」
「えっ、じゃあアシュ先生は私たちの回答が違うと言うんですか?」
反応したのは、いつものごとくリリーだった。
「当たり前だよ。そんなの、まるで僕が彼らを貶めるために贈り物をしたみたいじゃないか」
「ち、違うんですか? アシュ先生はミランダが働くことになるギュスター共和国の汚物を浄化する目的で、暴露していったんじゃないんですか?」
「「「「「……」」」」」
さりげなく、当然のように汚物呼ばわりされた大臣たちは、もはや呆然状態でリリーとアシュのやり取りを見守る。『自分たちはあんな無垢な子に汚物と呼ばれる存在に成り下がったのか』と彼らは、これまでの日々が走馬灯のように流れていく。
「こらこら、失礼じゃないか。申し訳ないね、うちの生徒が」
ペコリ。
至極簡単な会釈。3センチ下げるか下げないくらいの微妙な会釈なんて、これから死刑台に赴く未来しか見えぬ彼らにとっては、なんの足しにもならなかった。
「えっ、だって……じゃあ、私たちが間違ってるって言うんですか?」
「当たり前だよ。そんな考えは、甚だ心外だよ。あくまで、この贈り物はこのギュスター共和国の繁栄を願い、彼らと仲良くしたいという僕の気持ちさ。それ以上でも、それ以下でもない」
「……ちょっと、みんな集合」
混乱したリリーは、生徒たちを集合させる。
「家族もってことかしら?」「いや、それはさすがに……」「でも、アシュ先生のことだから」「血族じゃない? 3親等までとか」「うわっ、ちょっとそれは可愛そうだな」「そうよね。これからは世間の迫害も受けるし。家族は奴隷堕ちくらいで」「うーん……そもそも、血族にも罪が及ぶって考え方自体が反対なんだけど」「でも、ギュスター共和国の考え方に沿えば」「この国は厳格で厳しいって評判でしょう?」「まあ、そうかな。でも、アシュ先生は仲良くしたいって」「嘘に決まってるでしょう。あんなの私たちに逆張りさせるためのフラグでしょ」「と言うことは……うん。それで行きましょう。ミランダ、頼んだ」「うん、わかった」
ミランダは、もう一歩前に出て答える。
「アシュ先生。申し訳ありませんでした。彼らが国家の代表ということを考慮してませんでした。主犯は死刑。3親等までは国民権剥奪。奴隷堕ちです。でも、私の気持ちとしては情状酌量で家族までが奴隷堕ちでいいと思います」
「「「「「……はっ、くっ……」」」」」
絶句。大臣たちは、もはや泡を吹かんばかりに絶句した。その家族、いや親類に及ぶのか。自分たちはそこまで悪いことをしたのか。いや、したのだろう。
彼らの目には、涙が浮かんでいた。すでに、50歳を超え、こんなにも自然に涙が出てくることが、まだあるなんて思わなかった。
「はぁ……それが君たちの最終回答かね?」
「「「「「はい!」」」」
「仕方がないね、君たちは。無罪に決まってるだろう」
アシュは頭を抱えて答えた。
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