操り人形
闇魔法使いが放った質問の答えとして、リリーは聖闇魔法を放つ。
<<聖獣よ 闇獣よ 双壁をなし 万物を滅せ>>ーー
放たれた聖闇の光が、死体をことごとく消滅吹き飛ばしアシュに向かって襲いかかる。
「だおおおおあああっ!」
叫び声をあげながら、かろうじて避けることはできたが。
「……はぁ、はぁ。どういうつもりだね、リリー=シュバルツ君」
「ははははは、無駄ですよ! いや、わかっているんでしょう。彼女にもはや意思など存在しないことに」
デルタは大声で笑う。アシュに対して、リリーの存在がどれほどのウエイトを占めているか知っていながら。敢えて彼の感情を逆撫でするように。
「……リリー君。君には失望した。いや、失望通り越して、絶望をしたね。おめおめと隙を見せて、敵に捕まって、なすすべもなく操られるとは」
「彼女の感情を逆撫でして解除しようと? 無駄ですよ。あらかじめ、耳を聞こえなくしてある。それに……」
デルタの声と呼応し、リリーは魔法をかけ始める。
<<光闇よ 聖魔よ 果てなき夜がないように 永遠の昼がないように 我に進む道を示せ>>ーー
「……バカな」
思わずアシュはつぶやいた。
リリーが詠唱したのは、相反する属性を一つにすることで、絶対的な不可侵領域を作り出す魔法。それは、かつてヘーゼン=ハイムのみが使ったと言われる聖と闇で作られた絶対障壁。どんな魔法をも通さないと言われる最強の魔法壁である。
しかし。
デルタとリリーの周りには、確実にヘーゼン=ハイムと同様のそれが張られる。湧き起こる震えが、止まらない。未だ、15歳の少女が、最強魔法使いヘーゼン=ハイムと同レベルの魔法を繰り出していることに。
「彼女はやはり異端児ですね。いや、化物と言ってもいい。近い将来、史上最高の魔法使いと呼ばれるでことになるでしょう」
「……理屈に合わないな。これは、魔薬だね」
冷静に。
鋭い瞳を持って、闇魔法使いは答える。
いかにリリーに才能があるからと言って、現時点では、聖闇魔法の攻防を一度にかけるという化け物じみた所業ができるほどの実力の持ち主ではない。以前、ヘーゼン=ハイムと善戦した時は、彼自身が手加減をして、彼女の実力を観察してる節があった。
「さすがはアシュ先生ですね。ご名答。彼女には、魔薬を飲んでもらいました。もちろん、僕にしか解除できない魔法をその中に仕込んでいます」
「……」
「もちろん、あなたが大人しく封じられてくれさえすれば、解くことも可能です。しかし、この薬は副作用がありましてね。長期で服用すると、精神に支障をきたす。彼女の精神力は人並み外れて強靭だったので、常人の2倍を注入している。もって、あと、5分と言うところでしょうか」
デルタは、皮肉めいた表情で笑った。
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