説得(2)
「そもそも、なぜこのタイミングで制服の変更なんですか? 普通、春とかでしょ」
リリーは机をバーンと叩いて正論をぶつける。
「思い立ったらラッキーデー……『バニラ=リンコー』」
だ、誰だよそれ、と生徒全員思う。
「言っておきますけど、ホグナー魔法学校の制服は創立当時から変わっていません。この制服に袖を通すこと。それは、大陸中の子供たちの憧れでもあります。それを、あなたの独断で決めてもいいと?」
「当たり前じゃないか。僕は理事長代行だよ? 理事長がいない今、最高権力者は誰だい? 君のような固い頭でもわかる簡単な問題だよ」
正論を暴論で制そうとするキチガイ魔法使い。
「……な、なんて最低な教師。常日頃から、最低だと思ってましたけど……最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低最低っ!」
「ふっ……世の中には理不尽なことがいくらでもある。僕は社会という荒波に巻き込まれる前に身をもって教えてあげているんだよ。悔しかったら……偉くなりなさい」
そう言ってアシュは爽やかな顔で、リリーの肩、ポン。
優等生美少女は即座にその手を、バシッ!
「なにを最もらしいことを! 騙されませんよ、ええ騙されませんとも」
「騙す? おかしなことを。いいかい? 僕に言わせれば理不尽なことを言っているのは君の方だ」
「な、な、なんですってぇ!」
「いいかい? 僕は頑張った。200年間も研究に従事し、富と名声を得て、大陸から『闇喰い』と恐れられるまでになった。誰もが恐れる大魔法使いさ」
……じ、自分で言うかな、とは生徒の総意である。
「だからなんだって言うんですか!?」
「わからないかい? 僕は血の滲む……いや、それすら生ぬるいような壮絶な想いをしてここまで来た。そして、友であるライオールが僕の実力を見込んで、僕を特別クラスへ招集した。僕の実力を見込んでだ」
「……」
「そして、彼はまたしても、僕の実力を見込んで、僕を理事長代行にした。僕が頼んだわけではなく、他ならぬ彼の頼みでだ。そして、理事長の権限には『制服の変更』が認められているではないか。僕は己の実力をもって理事長代行になり、その理事長の権力には『制服の変更』が可能だ。なにも理不尽なことはしていない」
「……」
「むしろ、理不尽なのは君たちの方さ。君たちは言わば、生徒たちの権力しか有していないにも関わらず、理事長代行に向かって愚かにも反抗しようとしている。お尻が半分でてる? いいじゃないかお尻くらい。プリッと出したまえ、プリッと」
「……」
「ふっ……論破」
「……あまりにも呆れすぎて、言葉が出ないだけです。そんなにも、生徒のお尻が見たいですか?」
「……いや、そう言う意見が多かったから、代弁しただけだよ」
これだけの熱弁を繰り広げておきながら、まだ中立の立場をとろうとするキチガイエロロリ変態理事長代行だった。
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