戦車
「で、なんの勝負をするのかね? 僕は割合
性悪魔法使いが余裕の表情で問いかけると、優等生美少女も自信あり気に一歩踏み出す。
「さすがに決闘するわけにはいきませんからね。一つ、魔法使いの技能の高さを証明する手段があるんじゃありませんか? アシュ=ダール先生」
「クク……
アシュは得意げにホワイトボードに説明を書き始める。
*
通常、魔法を外部に放つには最低限2つの手順が必要である
①
②
一般的に
一方、
古来より
①美しさ
②スピード
どの
タロットには大アルカナ(22枚)と小アルカナ(56枚)が存在し種類は以下の通りである。
①大アルカナ
0 愚者 1 魔術師 2 女教皇 3 女帝 4 皇帝 5 教皇 6 恋人 7 戦車 8 力 9 隠者 10 運命の輪 11 正義 12 吊るされた男 13 死神 14 節制 15 悪魔 16 塔 17 星 18 月 19 太陽 20 審判 21 世界
②小アルカナ
「
一般的なルールでは、まずは大アルカナを引き、小アルカナを引く。その組み合わせは1232通りあり、全ての
5回の
昨今、スピードを競うことが大陸でメジャー化されているのは、公然とした事実である。ルールが明確であることに加え、一般的に『美しさ』より『スピード』の方がより実用的だとされている。
*
「さあ、勝負を始めよう……どのようにして勝敗を決めようか?」
「もちろん、スピードです」
リリーは明かしていないが、
「はぁ……競技として確立したことで、技術の一般化には成功したようだが、いつしか本来の目的が置いてきぼりになっているようで、僕は少し寂しいね」
「アシュ先生は御託と言い訳が上手なんですね」
リリーが満面の笑みで答える。
「まあ、いいだろう……いや、しかし、これでは公平じゃないな」
アシュがボソッとつぶやく。
「はぁ!? まだ、なにか言い訳があるんですか」
「いや、あまりにも僕に有利過ぎると思ってね」
「……え」
闇魔法使いは人差し指を彼女の前に掲げた。
「1回でいい。5回中1回でも、僕に勝てれば、この勝負は君の勝利でいい」
「……あなたは、どこまで人を」
リリーは肩を震わせながら、翠玉色の瞳で睨みつける。
「まあ、もらっておきたまえ。ハンデは損するものではないだろう? 審判はライオール、いいかな」
「もちろんです」
好々爺は朗らかに頷き、教室の端にあるタロットをきる。
「先行は僕からでいいかい?」
「……お好きに」
リリーは内心またかと思った。この魔法使いはどれだけ
「じゃあ、そろそろ始めようか」
アシュは静かにタロットの前に立ち、人差し指を前に掲げる。
「では……」
ライオールが無作為に2枚、タロットをめくる。
愚者×聖杯(ⅩⅢ)
声とともに、その指先が動く。
・・・
永劫に感じたその一瞬、
リリーは勝負を忘れた。
そのあまりの精緻さに。
その異常なまでの精巧さに。
「綺麗……」
気づけばその言葉を口にしていた。
「……3秒です」
数秒経って、あまりの静寂の中、ライオールの言葉が教室中に響き渡った。
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