HIFI!!

安雄ヌス

第1話

俺は小5から前の記憶が全くない。


さらに、親がいない。


その理由についても分からなかった。




カズこと楠木十騎は困惑していた。何故、俺には親がいないかについてだ。


殺されたのか?はたまた失踪したのか?


なんだよ俺達兄妹を放ってノコノコお散歩ですか?


自分の妄想だけでは無理があるんだよ。


今は分からないことだな。


クッソ、考えただけでイライラしてきた。


気分転換にでもなるもの無いかな~。


あ、そうだ、こういう時は~っと、大の牛乳好きである十騎は冷蔵庫へ歩いて向かう途中、テーブル付近で横になっていた中2の妹である楠木 紫帆のスカートを誤って踏んでしまった。


足を開いて寝ていたのでスカートがピンと張っていた。そのため、踏んだことで少し脱げてしまった。

想定外の事態に思わず


「あ。」


と声をあげた。


よくよく俺も運のない男だ。


どうしようかな、これ。


そうだ戻してやろう。


無かったことにするんだ。


バレなければどうという事はない。


バレなければ。


とスカートに手を当てて引っ張ろうとして丁度めくったかのような反動をつけたと、同時に紫帆が目覚める、そして瞼がゆっくりと開く、さらにスカートと兄の手の状態に気が付く。


「キャッ…!」


と悶え、目をかなりちらつかせるという妹らしいどこか愛らしい戸惑いを見せた後に、


「お、お兄ちゃんって妹に手をかける程のプレイボーイだったの?(お兄ちゃんとヤるなんて…ポッ♥)」


と言い、身を少し捩らせ顔に手を当てた。


完全に勘違いされてるような気がする。


「え、あ、ちょ、違っ。」


俺の否定形の言葉は俺の想像の斜め上を行く紫帆の爆弾発言によって遮られた。


「そそ、そんな方法を使ってまで仲良くなろうとしたいの?」


と言い、妹自らスカートを直すと今度はソファーに寝っ転がった。


かなり顔を赤くしていた。


「ゑ?」


思わぬ形で話がまとまってしまった。


そうロリコンやシスコンと思われる方向だ。


それぐらい俺にでもわかる。


俺は冷蔵庫から牛乳を取りながら必死に別の事を考えた。


そして、別の事が思い付いたのは俺が椅子に座り、コップに牛乳を注いだ時だった。


え…と今日は、不知火高校の入学式の前日か。


そういや俺、高校受かってたんだな。


不知火ってかなり良いところだったなぁ。

(俺の事なのに…。)


彼は推薦を受け、見事に受かっていたのだ。なので彼は割かし頭がいい。


自画自賛はこれくらいにして、と


「暇だからちょっと散歩してくるわ。」


紫帆にそう言い、席を立つと、


「あぁ~待って~、私も行く~。」


と聞こえてきたので


「珍しいじゃん?わかった。待ってる。」


と答えた。


紫帆の準備ができるまでに少し時間ができたので椅子に座り直し、テレビを見ていると、不審爆発多発というニュースが流れていた。


また暗いニュースか。


(最近はなんか変な爆弾が広がってるらしいな。

ヤダヤダ。)


暫くテレビに見入っていると


「お兄ちゃ~ん準備できたよ~。」


と、部屋の奥から聞こえてきた。


先程までは見慣れた寝巻きだったが、今はノースリーブに小さな麦わら帽子だ。


驚くべきは、いつも見ているはずの俺が可愛いと思ったことだろう。


そんな魅力的な紫帆に見入る俺を見て、紫帆は


「えへへ、可愛いでしょ~。」


と言ってきたので、


「おう。すげぇ可愛いと思った。」


と、率直な感想を述べた。


なんか、こう、ロリコンにでもなった気分だ。

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