幕間
自らを呼ぶ鈴の音を聞いて、ハナコはぱたぱたと廊下を進む。
辿りついた部屋の扉を開ける。扉の隙間から、セバスティアンがそろりと出てきた。
「どうだ。落ち着いたか?」
「はい。もう大丈夫ですよ。それぞれの部屋に帰しました」
「これで元通りになってくれればいいんだが……」
「それは無理でしょう。男の方々って、懲りるということを知りませんから。マユミはあれで頭の良い子ですから、二度とタクヤに振り向くことはないでしょうね」
残念そうに執事猫はうな垂れた。
「タクヤにもう少しでもシェヴァール様の誠実さがあれば良かったのですが」
「買いかぶりすぎだよ。なあ……ハナコ、その仰々しい呼び方を改める気はないのか?」
自分を見上げてくるシャム猫の視線を受け止めながら、ハナコはかぶりを振った。
この関係を崩す気はなかった。自分はもう歳を取りすぎている。
そんな冒険ができるとするならば──
それはきっとあの少女のような心の若い者だけだろう。
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