幕間

 呪いは、流行り病のように人知れず、野火のように瞬く間に広がっていった。

 何事もなく暮らしていた人々が、あるとき突然にバンシーの如き叫び声をあげたかと思うと、ばたりと倒れて、そのまま冷たくなる。

 助け起こそうとする者も倒れ、通りも、広場も、死体であふれかえった。

 動かない死体には虫がたかり、獣が群がり、肉の腐った匂いが立ちこめる通りを歩くだけで吐く者が出る。

 呪いの引き起こす陰惨な光景が街のあちこちで見られるようになり、恐怖に駆られた民は城に迫り救いを求めたが、王はぴたりと城門を閉ざし、民の誰ひとりとして内へと入れようとしなかった。

 長く繁栄を続けていた王国の衰退──いや。崩壊が始まった。




 歴史書から『観た』光景に、〈彼女〉はオッドアイを細め、おぞましさにぶるりと身体を震わせた。

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