第3話

 けんは、そのとしなつこりました。

 そのも、てっぺいくんとさきちゃんは、さくらしたで、二人ふたりなかさくらはなしかけていました。

 もちろん、りょうすけくんもとおくから、すこしうらやましそうなかおで、さくらまもっています。

 おじいさんは、はたけたがやしていました。

 やがて、おひるになりました。

 おじいさんは、こしげていたぬぐいでおでこのあせぬぐって、そらげました。

 あおそらです。

 しろくて、おおきなにゅうどうぐもかんでいます。

 そして、おおきなプロペラのおとひびかせて、アメリカぐんこうが、んでいました。

 とおくから、あわてたようにサイレンがしました。

 『くうしゅうけいほう』です。

 いまごろになって、したのです。

 でも、おじいさんはあわてません。

 あのこうが、このむらねらっていないのをっているからです。

 こうは、プロペラのおとのこして、やまこうにえてきました。

 「くうしゅうけいほうが、っているよ」

 「はやぼうくうごうはいらなきゃ」

 てっぺいくんとさきちゃんが、はしってらせにてくれたのです。

 おじいさんは、「あはは」ってわらいながら、二人ふたりあたまおおきなせて、くしゃくしゃとなでてくれました。

 「だいじょうしんぱいないよ。アメリカぐんは、やまこうにっちゃったから」

 「ほんとう?」

 「ほんとうだとも」

 それをいて、二人ふたりともあんしんしたのか、にっこりわらうと、くちそろえてこういました。

 「おじいちゃん。おなかいた」

 と。

 おじいさんは、もういちこえしてわらいました。

 「よし、じゃあ、おうちかえろう」

 「うん」

 二人ふたりどもは、げんよくへんをしました。


 さて、おひるぎて、おじいさんがそろそろはたけごともどろうかとおもったときです。

 いちだいのジープが、おじいさんのいえまえまりました。

 さんにんへいたいさんのった、ほんぐんのジープです。

 へいたいさんは、ジープをりると、さくらしたにやってて、コンコンとたたいてみたり、うえほうげたりしていましたが、やがて『うん』なんてうなずきあうと、一人ひとりがジープに、もう一人ひとりへいたいさんがおじいさんのところにあるいてきました。

 いったい、どうしたのでしょうか。

 てっぺいくんとさきちゃんは、なんだかとってもこわくて、おじいさんのうしろにかくれて、じっとちかづいてくるへいたいさんをつめていました。

 ちかづいてきたわかへいたいさんは、おっかないくらいおおきなこえで、こういました。

 「おい、じいさん。あのさくらは、ってく。いいな」

 てっぺいくんとさきちゃんは、びっくりしました。

 わかへいたいさんの、おおきなこえのせいじゃありません。

 へいたいさんが、さくらってくとったからです。

 ジープのほうあるいてったへいたいさんは、ジープにんでいたおおきなおのって、さくらまえっています。

 「ダメェーッ!」

 さきちゃんが、わかへいたいさんにけないくらいのおおきなこえしていました。

 そうです。

 せっかく今日きょうまでいっしょけんめいかんびょうしてきたさくらです。

 いくらへいたいさんでも、そんなことゆるされません。

 さきちゃんは、せいいっぱいこえげてさけびました。

 「そのさくらを、っちゃダメーッ!」

 さくらしたにいた二人ふたりへいたいさんが、さきちゃんのほうました。

 わかへいたいさんが、います。

 「なにってる。こんなれたさくらなんかいつまでもえていたって、なんのやくにもたないじゃないか。って、おくにのために使つかうんだ」

 「れてないもん!」

 てっぺいくんも、まんなくなって、さきちゃんよりもっとおおきなこえいました。

 「さくらは、ちょっとびょうてるだけだもん。らいねんには、はなかせてくれるやくそくなんだもん!」

 に、なみだをいっぱいためながらったのです。

 「やくそく? だれやくそくしたって? さくらとか?」

 てっぺいくんは、おおきく、ちからいっぱいうなずきました。

 それをて、おのったへいたいさんは、こえしてわらしました。

 わかへいたいさんは、おこりました。

 「ウソをつけ! さくらが、にんげんことはなすわけがない!」

 「ウソじゃないもん! ぼくさくらやくそくしたんだもん。ぜったいに、くんだもん!!」

 てっぺいくんは、これじょうないくらいおおきなおおきなこえしていました。

 さくらしたにいたもう一人ひとりの、きっとさんにんなかいちばんえらへいたいさんが、おのっているへいだいさんにめいれいをしました。

 「いいから、とっととこのってしまえ」

 おのったへいたいさんは、「はい」とへんをして、っていたおのおもいきりげました。

 「きっちゃダメーッ!」

 さきちゃんのめいとほとんどどうに、おのったへいたいさんにだれかがぶつかってきました。

 「ああっ、あぶない」

 へいたいさんは、おのっことしそうになって、よろよろとなりました。

 いったいだれが、こんなことをしたのでしょうか。

 いちばんえらへいたいさんは、おのったへいたいさんにぶつかってきたおとこにらみつけました。

 こわへいたいさんににらみつけられて、いっしゅん「おっかないよぅ」というかおをしたおとこですが、すぐにそのへいたいさんよりも、もっとおっかないかおをしてせます。

 なんてりなんでしょう。

 そう、そのおとこは、りょうすけくんです。

 おひるごはんをべて、さくらもどったら、へいたいさんがさくらろうとしていたので、いそいでたいたりしたのです。

 「ぼくたちのさくらだぞ。なにするんだ!」

 りょうすけくんは、ものすごいおっかないかおをして、へいたいさんをにらみつけます。

 「なんだと!?」

 りょうすけくんにばされたへいたいさんは、カンカンにおこっていて、いまにもりょうすけくんをなぐりそうです。

 わかへいたいさんにてっぺいくんとさきちゃん。

 おのったへいたいさんにはりょうすけくん。

 それぞれが、それぞれにおっかないかおをして、にらっています。

 おじいさんは、いちばんえらへいたいさんのところあるいてき、こういました。

 「たいちょうさん。とつぜんそのようなことをわれても、どもたちはなっとくしません」

 おじいさんにわれて、たいちょうさんは、おおきくうなずきました。

 「それは、もっともだ」

 そして、こうつづけました。

 「しかし、れているるのだし、おくにためになることだ…」

 「れてなんかいないもん!」

 てっぺいくんは、たいちょうさんにかっておおきなこえいます。

 「またウソをつく」

 わかへいたいさんが、てっぺいくんのあたまうえからります。

 「ウソじゃないもん」

 こんさきちゃんが、わかへいたいさんにかえしました。

 おじいさんは、おだやかに、そしてゆっくりとした調ちょうたいちょうさんにおおねがいしました。

 「どもたちのとおり、このさくらしたわけではありません。どもたちのためにも、ればらないでいただきたいのですが」

 「じいさん。しかしなぁ」

 わかへいたいさんが、おじいさんにちかづいてきます。

 それといっしょてっぺいくんとさきちゃんもさくらしたにやってました。

 「これはおくにためなんだぞ。こんなチビどもとだいにっぽんていこくと、いったいどっちが…」

 そこまでったわかへいたいさんをたいちょうさんが、めました。

 「わかった」

 「たいちょう

 おのったへいたいさんが、なにいたそうなかおで、たいちょうさんをます。

 てっぺいくんたちさんにんは、とたんにうれしそうなかおになりましたが、

 「ただし」

 と、たいちょうさんが、くわえます。

 「明日あしたわれわれがもういちここにるまでにていればのはなしだ。いいな」

 たいちょうさんは、ほか二人ふたりへいたいさんといっしょにジープにって、どこかへはしってしまいました。

 あとには、さくらしたしんぱいそうにおじいさんをつめるてっぺいくん、さきちゃん、りょうすけくんがのこりました。

 「おじいちゃん」

 「ん?」

 「っぱ、てくるかな?」

 てっぺいくんは、とってとってもしんぱいしんぱいで、いまにもしそうなかおをして、おじいさんをげています。

 おじいさんは、にっこりとさんにんほほみかけると、たったひとこと、こういました。

 「だいじょうだよ」


 さぁ、ほんとうだいじょうなのでしょうか。

 てっぺいくんもさきちゃんも、そしてりょうすけくんもしんぱいそうにさくらげました。

 さくらまもさんにんの、ちいさなちいさなおしゃさんは、おさまやまこうにえてこうとするゆうがたになってもしんぱいで、じっとさくらげていました。

 明日あしたへいたいさんがやってるまでに、ほんのちょっとでいいからっぱがないかなぁ、そうおもいながら。

 やくそくしたんだもんね、つぎはるには、いっぱいいっぱいはなかせてせてくれるって、そうおもいながら。

 おさまは、やまこうにしずんできます。

 明日あしたあさになるために。

 かわりにおつきさまが、さくらと、そのさんにんのおしゃさんをやさしくまもるようにらしてくれます。

 「もう、おやすみのかんだよ。さぁ、さくらわたしていてあげるから、ゆっくりしっかりおやすみよ」

 おつきさまは、そう、さんにんかたりかけているようです。

 でも、それでもさんにんは、さくらのそばをはなれようとはしません。

 それくらいしんぱいなんです。

 ひょっとして、今日きょうはずっとないでいるつもりなのでしょうか。

 なつむしたちが、なかがっしょうコンサートをひらいているなか、おじいさんが、さくらもとひざかかえてすわっているさんにんのところへやってました。

 「おじいちゃん」

 ねむたそうなトロンとしたでおじいさんをつけたてっぺいくんは、がってそういました。

 「さぁ、もうおやすみのかんだよ。さきちゃんもりょうすけくんも、今日きょうはもうおそいからまってきなさい。おうちには、おじいちゃんがれんらくしておいてあげたからね」

 「はい、てっぺいくんのおじいちゃん。ありがとう」

 さきちゃんは、もうねむたくなっておもたくなったまぶたのうえから、をクリクリとでこすりながらがりました。

 もしかしたら、はんぶんだけねむっていたのかもれません。

 「でも、ぼくしんぱいなんだ」

 りょうへいくんは、いまにもじてしまいそうなひっひらいていました。

 「へいたいさんがるまでに、っぱがているかどうか、しんぱいなんだ」

 「だいじょう明日あしたさんにんきるころには、ちゃあんとっぱををしているよ」

 「ほんとう?」

 「ほんとうだとも。だから、いまはぐっすりおやすみ。さんにんがおやすみしないんで、さくらしんぱいしているよ」

 おじいさんにわれて、さんにんはそろってさくらげました。

 そして、ひとりひとりさくらにおやすみのあいさつをしてからおうちにってきます。

 「おやすみ」

 「っぱしてね、やくそくだよ」

 「なにがあってもぼくぜったいまもるからね。おやすみ」

 さんにんがおうちにったのをかくにんしてから、ごんぺいおじいさんは、さくらげました。

 さくらうえには、おつきさまが、まもるようにっています。

 むしたちのがっしょうも、さくらおうえんしているようにこえます。

 「明日あしたもきっと、あつくなるなぁ」

 おじいさんは、そんなひとごとをつぶやいてから、ゆっくりおうちにかえってきました。


 あさになりました。

 と、ってもまだおさまは、かおしていません。

 でも、たしかにあさです。

 てっぺいくんは、だれよりも、おにわっているニワトリよりもはやめました。

 と、うよりもさくらしんぱいしんぱいで、けっきょくいっすいなかったのです。

 てっぺいくんが、ゆっくりしずかにおとんからすと、りょうすけくんもがってきました。

 「りょうすけくん」

 りょうすけくんは、ちょっとテレくさそうにはなあたまきました。

 「きみしんぱいねむれなかったの?」

 「うん」

 りょうすけくんは、おおきくうなずくとがり、ふくはじめました。

 てっぺいくんも、きからえます。

 「っぱ、ているかな?」

 二人ふたりは、しんぱいそうにおたがいのかおました。

 「だいじょうだよね。られたりしないよね。っぱ、ているよね」

 「こうか」

 「うん」

 二人ふたりは、まだぐっすりねむっているさきちゃんをこさないように、そっとおして、おにわきました。

 おさまが、やっとあたまはんぶんしています。

 いちばんどりが、ようやくボケたこえきました。

 二人ふたりは、かけっこでもするようにさきあらそって、さくらしたまでました。

 さぁ、っぱはているでしょうか。

 てっぺいくんは、パッとさくらにしがみつくと、よいしょよいしょとうえのぼってきます。

 りょうすけくんは、ちょっとうらやましそうなかおで、ていました。

 ほんとうりょうすけくんも、のぼってみたいのです。

 けれども、なんだかちょっぴりずかしいのでのぼれません。

 って「いっしょかんびょうなんかしない」なんてってしまったのをいま、とってもこうかいしていました。

 どうてっぺいくんが、とってもうらやましいとおもいました。

 「あった!」

 さくらうえほうから、とってもうれしそうなこえがしました。

 「りょうすけくん、てるよ。ホラ、はやのぼっておいでよ」

 え?

 りょうすけくんは、びっくりしました。

 「のぼっていいの?」

 「はやくおいでよ」

 「う、うん」

 りょうすけくんは、いそいでさくらのぼりはじめました。

 「ホラ、てごらん」

 てっぺいくんがゆびさきると、そこにはたしかにちいさなちいさなみどりていました。

 「やったね!」

 「うん」

 二人ふたりは、そこがうえだということもわすれて、がりそうになるくらいよろびました。

 りょうすけくんは、ようやくなおになるになりました。

 なおになって、っていたことをあやまになったのです。

 「このまえは、ごめんね」

 「なんのこと?」

 「このまえの…アッカンベーしたこと」

 てっぺいくんは、にっこりとわらいました。

 にっこりわらって、りょうすけくんにもういちこんはこういてきました。

 「ねぇりょうすけくん、ぼくたちといっしょに、さくらあそばない?」

 「いいの?」

 「たりまえじゃないか、だってぼくたち、ともだちだろう?」

 りょうすけくんは、とってもとってもうれしくなって、してしまいました。

 そして、

 「ぼくさきちゃんとてっぺいくんのおじいちゃんに、たってってくるよ」

 そうって、をおりてきました。

 てっぺいくんは、りょうすけくんがおうちにっていったのをおくってから、もういちちいさなちいさなながめました。

 は、かんぜんかおしたおさまひかりびて、かがやいてえました。

 これでられなくてもむ。

 そうおもったら、なんだかとってもねむたくなってきました。

 てっぺいくんは、おおきなあくびをひとつ、おさまむかかってすると、ゆっくりからおりました。

 さくらをおりると、おじいさんとさきちゃんとりょうすけくんが、やってきました。

 「たんだって?」

 「うん、そしたらなんだかねむたくなっちゃった」

 「そうかいそうかい。あんしんしたんだね。それじゃぁおやすみ。今日きょうは、てんのうへいのおことがあるらしいから、そのときまでにはこしてあげるから」

 「うん」

 「ぼくなんだかねむたくなってきたなぁ」

 りょうすけくんも、ふわぁとおおきくあくびをしました。

 「りょうすけくん、いっしょようよ」

 「うん」

 てっぺいくんとりょうすけくんは、なかくおうちにもどってきました。

 「てっぺいくん、りょうすけくんとなかくなったね」

 さきちゃんが、ちょっぴりうらやましそうにいました。

 くのにさそってもらえなかったので、ちょっぴりざんねんだったのです。

 「ねぇ、てんのうへいのおことって、なに?」

 たずねられたおじいさんは、いままでのがおをやめて、さくらげました。

 「さぁねぇ」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る