深海紳士録 ⑥未来のクリスマスには400℃
深海の生物を紹介している当シリーズ。
前回、前々回は身近に存在する深海生物にスポットを当てました。
第6回目は再び海に潜り、なかなかお目に掛かれない生き物たちを紹介します。
『
多くの生き物にとって、
水が約100度で沸騰するのは、小学生でも知っている話です。
しかし本編でも説明した通り、水の
熱水に含まれる金属は、
チムニーを形成した
異様な光景は、テレビやネットに取り上げられることも少なくありません。深海に興味のある方なら、一度は海底の煙突を見たことがあるのではないでしょうか。
我々の身近にある熱湯は、無色透明です。
しかし海底の煙突が噴き出す熱水は、一色ではありません。
熱水の色には、幾つかパターンがあります。
鍵となるのは、熱水の成分です。
一方、白い熱水を生み出しているのは、
熱水にはまた、金や銀、レアメタルと言った有用な資源も溶け込んでいます。
近年では新たな「鉱山」として注目を集めており、各国が研究を進めています。海底産の指輪がブームになる日も、遠くないかも知れません。未来のヤフオク(クリスマス後)には、400℃のアクセサリーが大量に出品されることでしょう。
一部の深海生物にとっても、
確かに
しかし人間にとって有害な物質だからと言って、全ての生物が苦手にしているわけではありません。現に以前(当シリーズの第3回)紹介したヒラノマクラは、
第3回目はこちらです↓
(https://kakuyomu.jp/works/1177354054882713822/episodes/1177354054882959440)
代表例が、沖縄に棲むヘイトウシンカイヒバリガイです。
彼等はイガイ
ヒラノマクラ同様、彼等もエラに細菌を飼っています。
この細菌は
彼等はまた熱水中のメタンを
細菌を飼っているのは、ヘイトウシンカイヒバリガイだけではありません。
他のシンカイヒバリガイ
とは言え、細菌の顔ぶれは様々です。ヘイトウシンカイヒバリガイは2種類の細菌を共生させていますが、どちらか片方しか飼っていない種も存在します。
一方、彼等とは違う方法で
ゴエモンコシオリエビは
ゴエモンコシオリ「エビ」な彼等ですが、姿形はカニに瓜二つです。また立派なハサミを持ち、上手に使いこなしています。
実のところ、彼等はエビのような尻尾を持っています。しかし折り畳み、腹の下に隠しているため、ほとんどの人は気付きません。
厳密に言うと、彼等はヤドカリの仲間です。確かに貝殻こそ背負っていませんが、大きなハサミはヤドカリに似ているかも知れません。
浅瀬に棲むヤドカリは、ちょこまか動き回る生物です。
ところが、ゴエモンコシオリエビはほとんど動きません。潜水艇が近付いても、逃げることはないと言います。
彼等は深海生物の中でも、知名度の高い存在です。
熱水の周辺に密集する様子は、チムニーと共によく取り上げられます。一方で彼等がチムニーに
端的に言えば、彼等が集まっているのはエサを食べるためです。彼等のエサになるのは糸状のバクテリアで、熱水中のメタンや
本編でも解説した通り、彼等は腹に毛を
そして
ゴエモンコシオリエビが熱水に近付くのは、バクテリアに栄養を与えるためです。つまり、彼等は自分の身体を使い、エサを養殖しています。
収穫の際には、毛を
クシの役目を果たすのは、口元にある小さな
興味がある方は、YouTubeで「ゴエモンコシオリエビ」と検索してみて下さい。およそ8分間に渡り、彼等の食事風景を楽しむことが出来ます。
長くなったので、今回はここまで。
最終回となる次回は、更に
参考資料:特別展「深海 ―挑戦の歩みと驚異の生きものたち―
公式図録
国立科学博物館 海洋研究開発機構
東京大学執筆
読売新聞社 NHK NHKプロモーション発行
深海魚 摩訶ふしぎ図鑑
北村雄一著 (株)保育社刊
深海生物の謎
彼らはいかにして闇の世界で生きることを決めたのか
北村雄一著 (株)ソフトバンククリエイティブ刊
深海、もうひとつの宇宙
しんかい6500が見た生命誕生の現場
北里洋著 (株)岩波書店刊
地球ドラマチック 「海のタイムトラベル ~生命の誕生~」
2015年7月16日放送 放送局:NHKEテレ
JAMSTEC 海洋研究開発機構
http://www.jamstec.go.jp/j/
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