第2話
話を聞き終えた頃には、オレの肩はかなり酷い事になっていた。どう酷いのかって、まず腕が動かせない。そして、服の上からでもわかるくらい腫れている。ここまで容赦なくやるとは思わなかったし、それでも寝てしまう自分が信じられなかった。
「さて、歴史はこんなものだが何か質問はあるかな?」
ギルさんがニコリと笑いオレを見た。正直内容を聞いても、そうなのかと思うだけで疑問が出てくるほどの理解ができていないのだが。
ギルさんから聞いた内容はこうだった。
――……昔、オレのような人間がいた頃。
いくつもの国があり、貿易や留学など国同士の交流の多かった。国と国の間の森や谷には貿易や移動用に公道があり、野生動物の対策を共に行う協力体制が必然とできていた。それが変わったのが、150年ほど前の事。野生動物の凶暴化に始まり、特殊能力を扱う人間が突然現れるようになった事で各国の力関係が変化してしまった。
その能力を「魔力」と名付け、各国で調査が始まったのだが、国によって魔力の発現者――……後の魔法使いの数にばらつきがあった事で、初めは共有されていた調査結果が少しずつ秘匿され始め、魔法使いの多い国が悪用し始めた。魔法使いを使って他国と戦争を始めたのだ。結果、魔力を持たない国や人間は排除され、魔力を持つ者のみが生き残り、その影響で国境の外は砂漠化が始まってしまった。
という内容だった。……まあ、その間に色々雑談が入って眠くなったのだが。
「そうなんですね、って感じで特に質問はないっすね」
「君は随分正直だね」
まあいいけど、と言いながら、ギルさんはお茶を入れてくれた。
「――……で、オレは何でまた呼ばれたんですか?」
お茶を一口飲み、本題の疑問をぶつけた。お茶は普通の緑茶の味と匂いだった。……色が紫じゃなければさらにうれしかった。
「悠也君には、この世界から魔力を無くす手伝いをしてほしいんだ」
……は?
さようなら、オレの日常 虹室 桜智 @Fkymg7103
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