はな

 ……あっついなあ。

 5月になると日が沈んでも暑さは変わらない。いっそ冬になってよ、なんていつもなら文句を言ってるんだろうけど、今はそれどころじゃない。


 あの子マジなんなの。イライラが収まらないんだけど。太ももを強く殴ってみた。痛い。さらにイライラしてきた。電車の中でやっている面白いCMだってバカバカしく感じてイライラする。もう忘れよ。忘れろ、自分。あーもう。逆に思い出してきた。


 言いたいことは言えるような部活にしたい


 メモにはそう書いてあった。だったらそういえばいいのに。でも里穂はそれさえ言うことができず倒れた。なんでだろう。私、そんなに怖いかな。私何にもしてないんだけど。あっ!メモを書いたの私だと思ってたりして。それは冤罪、ほんとに。あのメモ作って入れたの未来だから。その案には確かに賛成してたけど。私だっていじめたいとかそういうこと願望はないし、いじめているつもりはない。いい部活にしたいだけなんだよ。そもそも里穂が学年リーダーなのもたまたま一番早く入部しただけだし、学年リーダーの仕事っていっても連絡係みたいなものだから誰がやったっていいものだし。里穂はリーダーには向いてない。そしてそれは、彼女に言ったって直るものじゃない。仕方ないと思う。だって性格なんだもん。


 同輩の喧嘩にはあんまり関わらないようにしてる


 って里穂は言ったよね。でも同学年をまとめられないようじゃ部長なんて無理。でもそれはみんなが思ってること。


 やばっ‼︎電車乗り過ごした。

 どうせなら急行が止まる駅まで行って、急行で帰るか。

 ってえ、この電車次で終点だって⁉︎

 ほんとに今日ツイてない。


 完全にキレモードでLINEを見る。あっ‼︎ママから通知が来てる。ママは急用の時しかLINEしない。なんかあったっけ?急いでこちゃを開く。


 パパが会いたいって言ってる。LINEしてあげて。


 ったくそんなんだったら私に直接LINEすればいいのに。1年以上会ってない娘にLINEするのは気がひけるのかもしれない。まあ仕方ないと思うことにした。

 


私は「隠し子」なのだ。

 


17年前、いや、正確には18年前の方が近いのかもしれない。パパはママに恋をした。結婚して4人もの子供がいるにも関わらず。そしてママは妊娠した。ママが産みたいって言ったから産むことになった……のだろう。だから私はパパのことをあんまり知らない。


 どうしたの?


 LINEしたら、待ってましたとばかりにすぐ既読がついた。そして、返信は30秒しないうちに来た。


 はなちゃん元気?

 もう高2かな?前に会ったのが高校受験が終わったときだからもうだいぶ前だよね。

 話したいことを全部送ってもキリがないので、単刀直入に言います。

 はなちゃんの兄弟に会ってみないかな。

 はなちゃんよりみんなずっと年上だけど、優しくていい子達だからきっと仲良くできると思います。

 今度の日曜日にしようと思うんだけどどうかな?


 ……いやいやいや、ちょっと待って。まだ状況を読み込めてないんですけど。

 ってか普通に考えて今度の日曜日って、今日木曜日ですけど。急すぎでしょ。

 どうしよう。既読つけちゃったし。

 とりあえず、時間稼がなきゃ。


 とりあえず今学校帰りだから帰ったらちゃんと返信するね。


 よし、時間は稼いだ。まずママにLINEだな。パパとのLINEのスクショをママとのこちゃに送る。すぐに既読がつく。みんななんでこんな既読はやいの?ほんと暇かよ。とか言ってる間に返信が来るとか速すぎ。


 はなの人生なんだから自分で決めていいんじゃない。


 うわー。いつもは過保護なくせにずるいわー。てかほんとどうしよう。ほんとに物事って立て続けに起こるよね。めっちゃ消化不良。ってかでも向こうでは会う設定になってるんだよね。ってことは行った方が……いや、でもなーー。


私には親しい親戚とかもいないし、友達に相談するのもあれだし、こりゃ困った。


とりあえず気休めにツイッターを開く。DMで通知が来ている。パパからだ‼︎嫌な予感しかしない。とりあえずの現実逃避。友達のあげたツイートをリツイートしたりしてみる。え?宿題がおわらん?こっちは宿題どころじゃないんだよ。


あっ次降りなきゃ。今度こそ乗り過ごしたらいけない。

最寄駅に着いた。私は混乱してるのに風景はいつもと変わらない。当たり前か。ってかなんでこんなところで私感動してるんだろ。やっぱ病んでるのかな。まっいいや。


すっかり真っ暗になった住宅街を歩く。最近の都会は星が見えないというけど、街灯くらいしかないこの道は星がよく見える。ママからは危ないからこの道を帰りに通るのをやめなさいって言われるけど、やめられない。

私は昔からこの道が好きだ。星を見てるとなんか幸せな感じがする。その星からパワーをもらえる気がする。

こんなことを考えてる間にあっという間に家に着いた。

バイバイって星に心の中で言ってから家に入る。


「ただいまー」

「おかえり」

ご飯まだだから先お風呂入っちゃいな、、なんて言いながらママは私のこととも見ずにじゃがいもを剥いている。入ってきたのが私じゃなくて強盗でも知らんぞ、、まったく。

でも私は決めていた。まだお風呂には入らない。いや、入れない。パパに会うか決めないと。パパからきたさっきあえて見なかったDMを見なければ、、ほんっと最悪なんだけど。さっきママが返事を催促しなかったのも、私と目を合わせなかったのも配慮だったんだなって今気づく。やだなあと思いつつもしょうがないからDMを開く。


どうも、パパだよ

はなの兄弟の紹介をしておくね

海斗…29歳

星奈…25歳

大地…24歳

美空…23歳

会える日を楽しみにしているよ。


もうすでに会う前提じゃんか。まったく。

まあでもあってもいいかな なんて思えてきた。相手はみんな大人だから取り乱す人はいないだろうし、パパにあいたくないわけではまったくなかった。星も綺麗だし、いいや。


パパにいいよって返信した。


今日は我が家のWi-Fiの調子がいい。速すぎて返信星まで行きそうだなって思った。まあ行くわけないんだけどね。でも、そんな話も一回くらいあったらすてきだなって素直に思った。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

リアルJK rainyfriend @rainyfriend

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ