俺の世界の見方
学年主任はいつも煩い。制服を着崩すな、髪は短くさっぱり整えろ、廊下を走るな、挨拶は先生の前で止まってハキハキと大きな声で、とか。はっきり言って、そんなのいちいち守っていられない。なぜなら俺たちは絶賛思春期だから。好きなやつによく見られたいがために制服の一番かっこいい着こなしを研究し、ワックスで背伸びしてでも自分に一番似合う髪型と状態を保つ。走ってすれ違ったときにハンカチを落とさないだろうか、洗剤や制汗剤の匂いにときめいてはくれないだろうか、挨拶をしたら返してくれるだろうか、いきなり変に思われたりしないだろうか。中学生だって一人の人間だ。いろいろ考えもする。それを行動で示して主張しても、頭の固い大人はみんなどうにかして押さえつけようとする。何故か?何故だろう。とは言っても俺はまだどちらの立場にも立ったことがないから分からない。
退屈が嫌いだ。
いつ終わるかも知れない人生で、時間を無駄にしたくないから。自分のしたいように生きるには、教室から出なければならない。校舎から、学校から、両親の庇護下から。いつまでも俺たちは何かに囚われ続けて、いつからか囚われる側でなくなり、そうやって死んでいく。あまりにも息苦しく感じられて、だから、学校が嫌いだった。
友達は好きだけど、お互いを見えない鎖で縛り付け合うような関係は嫌いだったから、誰と一緒にいるでもない、中立の立場を守っていた。
俺はその日も学年主任に怒られていて、放課後職員室に来るように、と言われていた。無視して帰ろうとしていたら見つかり、隠れ場所を探していたのだ。適当に中庭を通って帰ろうとしたところを見つかってとりあえず校舎内に逃げ込み、人の寄り付かない図書室へと飛び込んだ。先生たちですら普段あまり来ない場所。それでも冷房の風は行き渡っていて、うっかりそこで寝落ちてしまったのだ。
だんだんと意識の底から自分が浮上してくるのを感じた。ぷかり、ぷかりと水面を揺蕩うような心地良さだったけど、BGMが最悪だった。へったくそな鼻歌で、しかも俺の嫌いな曲。ずっと側にいてとかそんな感じの、束縛したい的な定番ソングだったと思う。声を掛けたら、変なやつだった。でも、ぽかんとした間抜け面がちょっとだけ、近所の面白くて生意気なガキンチョに似ていた。それが面白くて、驚かせようとして、そしたらいつの間にか、知ろうとしていた。憂鬱な顔の原因、先生に借りた本の内容、今日の夕飯は何がいい、クラスでこんな笑い話があった、いろんな話題で時間を潰した。その間ずっと、学年主任は俺を見つけられずにいた。でも俺はあの人気のない図書室で、穏やかに過ぎる時間の良さを見つけたのだ。退屈は嫌いだ。でも、あいつと、緑と退屈だと言いながら過ごす時間は好きになれたんだ。
今日までの私とあいつ スライム @slime0906
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