変化あり。めちゃくちゃあり。
あの告白(?)事件から一週間。
堀内さんの目は死んでいる。とてもじゃないが、女子中学生がしていていい目ではない。「この世の全てに絶望しました」と言わんばかりの顔は、呼吸をして教室の自分の席に座っているだけでも褒めたたえたくなる。そんな状態になったって、誰も笑い話になんて出来そうもない。誰がどう見たって、原田と堀内さんは「そう遠くない未来に付き合いだすであろう男女ランキング」1位だったのだ。原田は時々鋭いことを言うのに鈍感だから、堀内さんがリードすることでうまくいくだろうとかなんとか言われていた。つまり公認カップルだったわけだ。それが、いきなり他の女に「お前のこと好きかも」発言。そしてそれに至るまでの執着心むき出しの態度。いずれも、私よりも格段に付き合いの長い堀内さんが手に入れることのなかったものだ。
(って私が言うと自慢や嫌味に聞こえちゃうけど)
一週間。それは、長いような短いような、不思議な期間だった。堀内さんは休むことこそしなかったが、目に見えて調子が悪そうだった。原田は特に変化が無いように思えるが、周囲の人曰く、「人間みが増した」とのこと。あいつの不思議ちゃん具合はやはり共通認識だったようだ。
じゃあ私はというと、特に変化はない。いつも通り、少ない友達との輪を平和に、穏やかに保つだけ。そう思っていたのだが…
「で、緑ちゃんはいつ原田くんと出会ったの?」
は?
「それ私も思ってた!原田くんは緑ちゃんが積極的に関わりにいくようなタイプじゃないよねぇ」
いや、あのさ、
「緑ちゃんは原田くんのことどう思ってるの?」
こっちの話もろくに聞かず、乙女パワーと妄想をフルパワーに使って楽しそうに話しているが…待て待て。いつ私と原田がそんな乙女チックな関係になった?というか、好きだなんて言われてない。好き「かも」だからね?あれはきっと一時の気の迷いで、一月もすればあいつも目が覚めて「やっぱ気のせいだったわ」とケロッとしてるはずだから、妄想も大概にしたまえよ…。聞いてる?あ、これ聞いてないですねー。
諦念と呆れを込めた視線を送ってみるも、友人たちがそれに気付くことは無さそうだ。なんでこんなことになってしまったんだろう?私はただ、新しい楽しみを見つけたいだけだったのに。
挫折を知って、夢中になれるものを探す途中で少しだけ成長して。それだけのことが今の状況を作っていると言うのなら、私はどうすれば良かったのだろう。何が最善だったのかなんて、今もその時も分かりはしなかったのだ。
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