第2話 ロングツーリング
1.高校3年生
俺の高校生活は充実していた。
授業に関しては体育以外はほぼ苦労しなかったし、友達も人生で一番増えた。
クラスでは同年齢のやつらがほとんどだったけど俺はSRのお姉さんはじめ年上の社会人経験のある人達から可愛がられた。
耳が穴だらけのヤンキー風お兄さんは授業中ほぼ寝て過ごしたかと思うと、体育のバスケットボールの時は一人だけラグビーをしてるんじゃないかってぐらい張り切っていた。そのお兄さんも何かと声をかけてくれた。
同年齢のやつらは変わったのが多くて面白かった。
二次元のキャラクターにしか興味を示さないやつがいたり、いつもちんちんを弄っているやつで時々鋭い一言を放って周りを驚かせたりするのもいた。
カンモクって名前の病気で他人と全く話が出来ないやつとも、言葉は交わせるわけではないけど妙に気が合って仲良くなったり、わけのわからないタイミングでいきなり泣き始める女の子が泣きだすと俺が呼ばれた。
テストが近づくとそのヤンキーお兄さんやSRのお姉さんなど何人かはどこが出るか聞きに来るのが常だった。
「お前の教えかたはセンセーより分かりやすいからな」
とおだててヤマを張る箇所を聞き出すのだった。
最初は俺を教授とか言っていたけど、ある時お姉さんが
「お前何でこんなに頭イイのにこんなガッコにいんの?」
って聞いてきたから、正直に第一志望の入試の時ウンコ漏らしてダメダメだったから落ちたって答えた。
お姉さんは大ウケしてその日からゲーリーってアダ名をつけられ卒業まで由来を知らない人からもそう呼ばれた。
あの女許さん!
でも一番話したのもお姉さんだった。
もちろん話題の中心はバイクの事。
「あたしの免許は大型で、ゲーリーとはレベルが違うんだよ!」
っていつもいつも偉そうに自慢していた。
「どうしてもSR500に乗りたかったから頑張ったんだぜ~」
って耳タコだったよ。
お姉さんからは何度かツーリングに誘われたけど、塾やバイトもあって時間も合わなかったから、ついに機会がなかった。
そして話している内に恐ろしい事実も知れた。
会った時は24~5歳だと勝手に思っていたけどなんと21歳だった。おまけに旦那さんがいるけど、その旦那さんには奥さんと子供もいるという複雑怪奇な関係らしくかなり引いた。
色々あるらしいが別に俺がどうこう出来るわけじゃないし、変わらずトモダチだった。
高校3年になった春。遅まきながら進路のことも色々具体的に考え始めた。
先生になろうかなと漠然と考えるようになっていた。
両親は普通の会社員で特別家の仕事を継ぐとかなかったからどうしてもここに行けっていうのもない。
ただ母は出来るだけ良い大学に行った方が後々有利だとか言ってたけどね。
近い所に国立大学で教育学部が有名な所があったから一応そこにしようかなと担任に伝えると賛成してくれた。
夏休み前にお姉さんが元気なかったり学校を休んだりする事が増えた。
大きな声で「おいゲーリー!!」って呼びつけられることも無くなった。
バイク遊びは相変わらず俺の一番の楽しみで、春からキャンプツーリングにも挑戦していた。とは言っても近場で1泊だけの軽いやつだけどね。
バイト先でもホールだけでなく厨房の仕事もお願いしてやらせてもらえるようになった。両親は共働きだったからわりと自分で料理を作ったりも好きだったし母からも教わっていたんだ。
厨房での調理ははじめは勝手がわからず戸惑っていたけど、馴れてくると皆からびっくりされた。
なんか意外な才能があったみたいで、和食の方もだんだん任せてもらえるほどに上達したんだよ。
そんなこともあってキャンプツーリングでも料理をしたりテント設営したりも楽しかった。
星空の下でゆっくりした時間を過ごすのが何よりの贅沢なんだね 。
バイクってこんな素敵な事まで味わわせてくれるんだなって心から思ったよ。
夏休みまで数日になったある日お姉さんが何日かぶりに学校に来た。
「お、ゲーリー久しぶり。なんか色々あってな。最近バイク乗ってるか?」
と明るいいつもの調子で話しかけてきたんだ。
「忙しくて2週間に一回乗れれば良い方ですよ」
といいつつここ最近はまっているキャンプツーの話をした。
お姉さんは興味津々で話を聞いていたけど、とりあえずどんなものが必要なのか尋ねられたから、時期や距離や日数で全く違うけど今ならこれこれこんな感じとメモに書いて教えてあげた。
「ところでゲーリーは料理とか大丈夫なのか?」
と疑うので
「何をおっしゃるお姉さま。こう見えてバイト先ではお客様にお料理をお出ししてますよ」
と思いっきり自慢した。
「ふーんすげえな」
とだけ言うとお姉さんはさっさとどっかに行ってしまった。
ふふふ、初めてお姉さんよりバイク関係で先んじられたことにちょっと優越感を持てたのでした。
終業式の日
「おいゲーリー夏休みは暇か?」
唐突にお姉さんが聞いてきた。
「えっ、夏休みは塾の夏期講習やバイトでもシフトたくさん入れてお金を貯めて・・・」
と予定がぎっしりな事、お金を貯めたらお盆明けにでもどこかに2~3泊のキャンツー行こうと思ってはいることなどを説明した。
「金はあたしが持つから来週からキャンプツーリング付き合え!」
そんな無茶苦茶なことを言い始めた。
「無理ですよそんなこと。来週ってちょうど夏の集中講義が入っているんだから
バイトもそこだけは無理言って休ませてもらっているぐらいなんですよ」
そう言って撥ね退けた。
お姉さんはじっと俺を見つめて
「そうかそうか、誰のおかげで今こうして楽しいバイクライフを送れているんだ?きっかけは何だったかな~?」
そんなことを言う。
「確かにお姉さんには感謝していますよ。こんなに楽しい世界を教えてくれたんだから」
「でも絶対無理です。お金だって支払い済みですし…」
「ゲーリーが仮にその集中ナンチャラを受けないと絶対大学には行けないのか?そんなにバカなのか?」
お姉さんも食い下がる。
「そんなことはないけど、、学校の授業だけじゃやっぱり足りないんですよ。それに仮にも男女ですし二人っきりはまずいんじゃないですか?」
それを聞いたお姉さんはいつもの豪快なガハハ笑いをして
「安心しな、ガキは襲わねえよ」
「それよりもこんなに頼んでも断るとかお前も薄情なやつだな」
「キャンプ初心者のか弱い女の子を可哀想に思っていたわる気持ちはないのか?」
「足りないのはな、学校の勉強じゃなくて、お前の優しさだ!!」
「そんなに勉強が大事ならもうお前とは友達をやめる」
「明日から泣いて暗い夏休みをおくるのかぁ、、、毎晩どこからか泣き声だけの電話がかかってくるかもな」
もう勝てる気がしなかった。
「わかりました。でもちょっと時間を下さい」
「集中講義さえなんとかすればバイト先に迷惑をかけずに日程を組めると思います」
「どこいらあたりを考えているんですか?」
俺は1泊でせいぜい関東~東北だろうと思っていた。
「4泊5日、北海道!」
「無理です。トモダチやめます。ご機嫌ようさようなら」
そう言って帰ろうとした時にお姉さんが目に薄っすらと涙を溜めて俺の両腕を掴んできた。
「お願い、もう今後二度と無理なことは言わない」
「10年近く北海道には帰ってないし、今後も行くことは無いと思うけど、1度だけ実家の近くの道をバイクで走ってみたいんだ」
「あと学校も辞める事になったから一緒に行ってくれないとゲーリーに会えるのも今日が最後なんだよ」
2.北海道ツーリング 一日目
俺は初めて親に大きな嘘を付いた。
学校のバイク仲間達とちょっとその辺までキャンプに行ってくる。毎日電話するし無理しないから大丈夫って言った。
母はかなりしつこく誰と行くのかどこに行くのかいつ戻るのか塾はどうするのかと聞いてきたが適当にごまかしてしまった。
待ち合わせは近くの大洗フェリー埠頭にした。
お姉さんはバイクで青森まで行くとか言っていたけど、それだと厳しいからフェリーで苫小牧まで行くことだけは譲らなかった。
夕方待ち合わせ場所に着くと既にお姉さんはバイクに荷物を満載して待っていた。
「初キャンツーだからあれもこれも無いと不安なのはわかるけどちょっと多すぎないかなぁ?」
そう言ったら
「女の子は色々荷物が多いんだよ!」
と睨まれた。
フェリーは雑魚寝じゃなく仕切りとか女性専用のスペースもある所にした。
だけどお姉さんがちょっと付き合えよとビールを持ってラウンジに行った。
「ゲーリーも飲むか?」
って勧められたけどコーラにした。
せっかく寝るスペースがあるのにずっと話していた。
地元の中学を出て高校に入ってすぐに悪いことを覚えて退学になったこと。
親とけんかして家出して札幌そして東京に行ったこと。
歳をごまかして夜の仕事をしていたこと。
いろんな男に騙されて次々ひどい目にあったこと。
最初の男がバイクに乗っていてそいつと別れてもバイクには乗りたくて免許を取ったこと。
今は、愛人契約みたいな形で今住んでいるマンションや月々のお金をもらって生活していること。
旦那がいない昼間は暇だから高校に入りなおして勉強しようと思ったこと。
俺と出会えて、バイクのことを話したり勉強を教えてもらえたことがすごく楽しかったこと。
でもこのあいだそれが奥さんにばれて別れさせられて、マンションから出て働かなきゃなんないし、夜の仕事はもうイヤだから学校を辞めて働こうとしていること。
お姉さんは静かに夜の海を見つめながらずっと話していた。
俺は何も喋らなかったけど、俺に話しているっていうより自分の人生を反芻しているようにも見えた。
右舷の方から海と空の境目が明るくなってきた時
「さあ寝るべ、今日の昼過ぎには苫小牧に着くからいっぱい走るぞ~」
そう言って俺の肩をどついて部屋に戻った。
目が覚めるともうお昼近かった。
フェリーのお風呂に入ってサッパリしてラウンジで本を読んでいた。
お姉さんからツーリング中は勉強禁止を強く言い渡されていてしょうがないから溜まっていた読みかけの文庫本を数冊だけ持ってきていたんだ。
「おーいゲーリーここにいたか」
同じくお風呂上がりと思われるお姉さんがとてもライダーとは思えない格好で現れた。
ショーパンにヘソ出しチューブトップ。
こっちが恥ずかしくなる。
「ゲーリー飯食おうぜ」
レストランでしっかり食べたけど、お姉さんがビールを注文したから絶対ダメですとキャンセルした。
「あのう、お姉さん。大きな声でゲーリーって言うのはやめてもらえませんか」
「外国の人っぽくない僕がそう呼ばれたら変に注目されますから」
文句を言うと
「誰も注目なんてしてないよ。みんなあたしの色気のほうに集中してるからな」
とガハハ笑いをした。
心の中で(黙ってればそれなりの美人なのに、喋ったり大笑いしたら色気なんてないよ)と思った。
初日はあまり欲張らず100キロ以内に抑えて支笏湖~札幌を経て海辺でキャンプする計画。
初めて走る北海道は最高だった。
道が平坦で俺の苦手な下り急カーブも無くて、沢山のライダーからピースサインをされたりこっちも負けずに手を振ったり。
お姉さんもなんか大声で歌いながら走っていたみたい。
インカム準備しなくて良かった。
お姉さんは北海道に来たら夜はやっぱりジンギスカンでしょう!とたっぷりのお肉とその数倍の量のビールを買っていた。
観光したり食材を仕入れたり、あてもないテント設営場所探ししていたら予想以上に時間がかかって薄暗くなってきてしまった。
やっとテントを張れそうなところを見つけて、荷物をほどいた。
「僕が食事の準備をしている間、お姉さんは自分のテントを張ったり寝る準備をしておいてください」
「僕のはワンタッチだからあっという間に出来るやつだけど、一人でテント張れますよね?」
そう聞いたらとんでもない返事が帰ってきた。
「テントなんて持ってきてないよ」
「・・・・・どういうことですか?」
「ゲーリーに言われたものは一応みんな買ったんだけどさ、バイクに全部は積めないだろ」
「だからあたしも一緒のテントに寝れば問題ないかなと思って…」
「ウチで組み立てる練習しとけって言われたからやってみたんだよ。けど、あれムリ。ワケわかんない」
「それに見たら2~3人用って書いてあって結構広いじゃん。荷物入れても十分二人で寝れるって」
「お姉さんって言っちゃ悪いですけど、ホントバカじゃないですか?」
「俺のテントはワンタッチ式の一人用!」
「二人では絶対寝られません」
「まさか、、、シュラフやマットは持ってきました、よね?」
恐る恐る聞いてみた
「シュラフも一回試してみたらあんなもん暑くて逆に寝られないだろう」
「北海道も夏は暑いんだ要らないかなと思って置いてきた」
「あ、でもマットは持ってきたぞ」
と威張っている。
「安いのでも良いから今すぐどっかのホームセンターに行って買ってきて下さい!」
と半切れで言った。
「えーやだよ、今から札幌の方向に戻って何か買い物したら真っ暗になるじゃん。明日考えるから今日だけ許して」
もう俺はテントはお姉さんに明け渡して自分は外でシュラフで寝ることにして諦めた 。
「それじゃあその大量の荷物は一体何を持ってきたんですか?」
「えっ?そんなもん5日分の着替えと、水着と化粧道具、あと言われたカッパと、折り畳み椅子とテーブルと食器やコップ、ビールを冷やすクーラーバックとワインと焼酎と、温泉セットのタオルとバスタオルやシャンプーコンディショナーボディーソープやらなんか」
「枕とパジャマも入れたはずだな。あとはお前には用のないものだ」
「ほとんど半分以上いらないんですけど! 」
「キャンプをなんだと思ってんですか、全く・・・」
なんか怒る気も失せてしまったから夕食の準備に取りかかった。
お姉さんはこと料理に関して全く役に立たないことが判明した。逆に危険なのでなるべく刃物からは遠ざけたい。
水を汲みに行かせて焚き火の管理だけやらせた 。
焼きたて熱々のジンギスカンはむちゃくちゃ旨かった。
一緒に焼いて食べた玉ねぎとか地元のスーパーで買った野菜なんかを適当にサラダにしたり、コンソメでごくさっぱりと味付けしたスープなんかも本当に美味しくて大満足。
お姉さんは旨い旨いと飲みっぷりも絶好調。
俺も今日だけは勧められるままにビールやワインを飲んだ。普段あまり飲んだことなかったからすぐに酔ってきた。
お姉さんは夕べとは別人かと思うほど明るく上機嫌だった。
話題はこれからの仕事のことや夢やらを楽しそうに語っていた。
お姉さんのツーリングの基本は温泉ツーだと前から聞いていたけど、好きで通っていたのが幸いして来週から住み込みで温泉で働くことになったそうだ 。
すごく張り切っていた。
俺にもツーリングで来いと言ってくれた。
でもその夜一番熱心に聞いてきたのは俺の事だった。
普段あまり自分の事を話さないからか、どこに住んでいるとか中学まではどんなだったとか好きな女の子のタイプとか根掘り葉掘り聞きたがった。
運動はあまり得意じゃないけど泳ぐのだけは好き。
ベビースイミングからスイミングスクールに通っていて、中学では県大会の決勝に残るぐらいまでは行ったこと。
女の子とは一度も付き合うとかはなかったこと。
酔っていたのか俺も調子よく色々喋った。
好きな女の子のタイプは、去年の出来事は内緒にしつつあの子のイメージででっち上げた。
スポーツをしていて健康的で
ハキハキした明るい口調で話して
でもちょっとハニカミ屋なところもあって
ショートカットで目が大きくて
可愛らしく笑うの子が良いな
と、お姉さんとは真逆なイメージをぶつけた。
何を勘違いしたのかお姉さんは
「そうか、あたしがショートカットにしたら惚れられていたなこりゃ」
と宣った・・・アホか 。
無駄な荷物と怒ったけど、クーラーバッグのお陰でビールもワインも冷えていて美味しかった。
俺の言い付けを無視して虫除けスプレーも持ってこなかったから、ほとんど俺のを使われたけど、そんなことも許せるほど楽しく美味しい夕食だったな。
お姉さんは饒舌に語り、たっぷり飲んで食べて、結構べろべろ状態になって…日付も変わった頃俺は片付け始めた。
テントはお姉さんに貸してあげると言ったら、多少遠慮するかなと思ったけど
「おう、サンキュー」
とふらふらしながら片付けを全て放棄してテントに潜り込んだ。
この女はどこまで自由なんだよ~。
すぐに
「おいゲーリー暗くってよく見えないじゃないかー!」
と叫ぶ。
「ランタンか懐中電灯ぐらいは持ってこなかったんですか?」
と片付けながら言うと
「そんなものは無い」
と予想通りの返事が帰ってきたので
「寝るだけなんで暗くてもいいでしょ」
と取り合わないことにしたけど
「こんなきついジーンズ穿いてたりブラしたままじゃ安眠なんて出来ないだろ!着替えたり色々やりたいんだよ」
ローマの休日か!!怒りを抑えつつLEDランタンを無言で放り投げてやった。
中でごそごそ動いていたがそんなに広いスペースなわけじゃ無いから苦戦していた。
(中の方が明るいから着替えているのが丸見えだよバーカ)とにやにやしながら片付けて俺はちょうど林の方から上ってきた朧に輝く傘を伴った半月を見上げながらシュラフにもぐり込んだ。
寝入って間もない頃突然ひどい雨が降ってきて顔をたたいた。
ヤバい!大急ぎで大きなビニール袋に濡れるとまずいものを押し込んだり荷物を少し高いところに運んだりしていた。
(おかしいな天気予報ではそんなに降水確率高くなかったけど、、仕方ないからカッパで寝るか)
そう思っていたらお姉さんがテントから顔を出した。
「すごい雨だなテントって雨音が響くんだなびっくりしたよ」
「ゲーリーも外では寝られないだろ。一緒に入れよ。遠慮すんな」
「二人は無理ですって、僕はカッパ着て何とかして寝るから大丈夫ですよ」
と断るが何とかなる気がしなかった。
「二人入っても大丈夫だって。ほらこんな無駄なやり取りしているうちにもテントにも雨が入ってきてますます濡れるだろ早くしろよ。」
思いきってテントに入った。
思っていた通りギュウギュウだった。
二人でぐるぐる動きながら収まりの良い姿勢を探した。
結局俺がお姉さんの持ってきた枕に頭を乗せて、お姉さんが俺の腕を枕にして同じ方向を向くとしっくり収まった。
しかしこの女は警戒心というものは無いんだろうか。
すぐに寝息をたてて熟睡してしまった。
俺はこんなシチュエーションは当然初めてで、簡単には眠れなかった。
俺の意に反して形状が変化した部分もあり、ばれないように腰を引いていたけど、心臓の音が聞こえるんじゃないかと心配なほどドキドキしていた。
2時間ほども眠れなく、やっと明け方近くになって眠りに落ちた。
3.北海道ツーリング 二日目
朝は猛烈な暑さで目をさました。
すでに日は登りテントの中は蒸し風呂状態だった。
テントから這い出すと、お姉さんはテーブルに鏡や化粧道具やらを並べて、タバコを吸いながらお化粧していた。
ビキニの上に薄手のパーカーを羽織って、ショーパンとビーチサンダルというまたもやキャンプツーリング中とは思えない格好だった。
「おっゲーリーやっと起きたか」
「ちょっとぬるいけど飲むか?」
そう言ってミネラルウォーターを投げてよこした。
飲んだ次の日は水が美味しいと父が言っていたけどその気分がやっとわかった。
「よくあんなに暑いのに寝てられんな。あたしはもう上の公衆トイレの所で髪を洗ったりしてきたから、ゲーリーも顔を洗ってきな」
厚手のふわふわのタオルと洗顔フォームを貸してくれた。
「もう6時だぜ、今日は300キロ走るんだろ。楽しみだな」
「顔を洗ったら早く朝飯作ってくれよな」
全く屈託の無い表情で言われると、そんな理不尽な言葉にもなんか怒りもわいてこなかった。
その日は快晴だった。
朝は飯盒でご飯を炊き、オムレツと昨日残った野菜なんかを入れて味噌汁を作った。
その間にお姉さんは濡れたタオルとか俺のシュラフやなんかを、ロープを張って干してくれた。
酒を飲んで大笑いしてる時よりもちょっとだけキレイに見えた。
今日の計画は今回のツーリングでメインとも言うべきオロロンライン制覇!一気に最北端の宗谷岬まで行くつもり。
お姉さんに実家に寄らなくて良いのか尋ねても
「札幌の近くでもう過ぎたしもともと寄るつもりもない」
とあっさりしたものだった。
それより北海道に住んでいた頃も北の方にはほとんど行ったことが無かったからこれからの行程が楽しみだとウキウキしていた。
午前中から暑かった。
どこまでも続く道も感動した。
お姉さんは油断するとすぐに100キロ近くスピードを出すから、俺はわざとゆっくり走った。お姉さんが離れたのに気付いて止まって待っててくれる。
二人でルールを決めた。
対向車もあまり来ないから二人で並んで走る。車が来たら1列になってすれ違ったり追い越してもらうことにしたんだ。
日差しは強くて暑いのに、やっぱり北国の海沿いだからか走っているととても快適。で、ずっと走っていたくなった。
留萌まで途中何度か水分補給と称しお姉さんのタバコタイムをとりながら走って昼食休憩にした。
ホームセンター(ホーマック)を見つけて、テントを買わせたりガソリンも入れた。
唐揚げが沢山入ったお弁当(特盛ザンギ弁当)を仕入れて近くの海水浴場で食べて休んでいたけど、お姉さんが突然
「うー、我慢できない!」
と叫んでTシャツやジーンズを脱ぎ捨てて海に入っていった。
何で下にビキニを着こんでるんだ??
「ギャー冷たい~!気持ちいい~!」
「ゲーリーも来い~っ!!」
と呼ばれたけど当然水着なんて持ってきていないから拒否った。
「バカだな、男なんだからパンツで充分だろう。早く来い」
拒否しつつ本当に気持ちよさそうだから、俺も上だけ裸になってジーンズのまま飛び込んだ。
本当に冷たい!よくこんな冷水で泳げるよ
慣れてきたら少しは平気になったけど、やっぱり長くは入っていられないな。
お姉さんは俺が本当に水泳をやっていたかどうか確かめてやる!とか何とか言って4種目全部泳がせられた。
ジーンズのままってのはきつかったが、久しぶりに思いっきり泳いだ。
海は気持ち良いな。
ズボンやタオルや水着を干している間は、タープだけ張って二人で昼寝した。
この旅の中で一番気持ちよく眠れたかも。
オロロンラインは現実世界とは思えない絶景だった。
ホントに北海道は広い。
日が落ちる前に宗谷岬に着いた。
こんなに素晴らしい経験ができるバイクって良いな。
俺は焚き火が大好きだった。
炎を見ていると、時間を忘れて穏やかな気持ちになれる。
小学生の頃に祖父から焚き火の仕方を教わっていた。
「一番良いのは『いっちょくべ』なんだぞ」
って言われた。
『いっちょくべ』ってのは、薪の方向を揃えて燃やすことで薪を効率的に安定して燃やす事ができるんだ。
焚き付けの紙も何もいらない、ナイフさえあれば枝を細かく裂いてすぐに火が着けられる。これも祖父に教わった。
小学生の時の飯盒炊飯では先生よりもうまく火を起こせた。
焚き火に向かってお姉さんと並んでずっとそんな昔話をしたり、お姉さんの武勇伝も面白く聞いた。(エロ過ぎてかなり引くwww)
テントはお姉さん一人ではやっぱり無理で、手伝ってあげたというより俺がほとんどやった。
沢山走って、泳いで、夕べの寝不足もあったから少し疲れたし早めに寝ることにした。
近くに明かりもないしまだ月も昇ってないから満天の星だった。
カシオペア座も天の川の中に入ってしまって、よくわからないほど星の密度が凄まじかった。
俺はテントに入るのが惜しくなって、外で空を見上げながら寝ていた。
お姉さんが自分のテントから顔だけ出して、何してんのって聞いたから、今日は星を見ながら寝ることにしたって答えた。
良いね~あたしも!って言って自分のマットとシュラフを持ってきて、並べて横になった。
「ランタンも全部消してみて、すごいから」
そう言って全部消させた。
生まれて初めて星の明かりしかない中で横たわっていた。
目が慣れてくると想像を絶する星々が肉眼ではっきり見える。流れ星も時々見えるんだよ。
「すごいな~こんなに星って有るんだな、怖いぐらいだな」
お姉さんは手を繋ごうって言って自分の手を差し出してきた。
星の明かりだけで白いキレイな手が見えた。
俺も手をのばしたらお姉さんが、おやすみと言って静かにキスをしてきた。
焚き火の匂いと、なんか甘い匂いとワインの香りとが混じっていたけど、良いにおいだった。
手を繋いだまま眠ったんだ。
4.北海道ツーリング 三日目
朝、お姉さんは突然
「ゲーリー、荷物を積む前にタンデムしようぜ」
「お前まだシングルの走りを知らないだろう。乗せてやる」
そう言って二人乗りを誘ってきた。
ちょっと心配だったけど、素直にお姉さんのSR500のタンデムシートに跨った。
北海道の朝の静謐な空気の中を、静かに単気筒エンジン特有の音を響かせて数キロメートルだったけど走った。
すごい、俺のゼルビスと全然違う。単純計算をすると俺のバイクの1気筒あたりの4倍の大きさのピストンがシリンダーの中を一回一回の爆発がはっきり分かりそうな感じで動いている。こういう感じのバイクもあるんだな。
お姉さんの細い腰に両腕を回しながら、コーナーの度に一緒に体を傾けて走るのは気持ちよかった。二人ともノーヘルで長い髪が俺の鼻をくすぐっていい匂いがした。
この日は旭川まで頑張った。
海辺の道とはまるで違う雰囲気で楽しかった。
こんなに色彩鮮やかな景色の中を走れて幸せ。
お姉さんが小学生以来と言う動物園で、ギャーギャー言いながら見て回った。
なんかいつの間にかいつも手をつないで歩くのが普通になっていた。
空模様が少し怪しくなってきたし、北海道最後の泊まりだから今日は少し贅沢をしよう!ってことで旭川の温泉に泊まることにしたんだ。
古いいかにも昭和って感じの温泉(?)だった。
露天風呂に入って手足を伸ばし体の芯からほぐれて、心づくしの美味しい食事をいただいた。
ビールを沢山飲んだお姉さんは、なんか戻るのがイヤだ~って泣き上戸になったり、いつもにも増して大笑いしたり大変だった。
俺も後片付けの心配がないから少し飲みすぎて酔っぱらった。
二人ともかなり酔っぱらって、ひとつの布団の中で向かい合って横になって話をした。
昨日から今日にかけてずっと手をつないでいた気安さからか、俺も触れていたくなったんだ。
お姉さんは浴衣の下はパンツだけだったんで、はだけた胸元が丸見えだった。しまいには帯の結び目が気になる!とか叫んで帯をほどいてしまった。
俺は少し躊躇もしたけど、お姉さんの腰に手を回しながら眠ったよ。
5.北海道ツーリング 四日目
朝、目覚めるとお姉さんは俺の胸元に顔を寄せて、静かな寝息をたてて眠っていた。
髪をすき上げて見たら迂闊にも長い睫毛がとても可愛く見えてしまった。
俺は、ゆっくりお姉さんの胸やお腹を指の背でなぜてみた。
すごく滑らかで柔らくて、女性の肌ってこんなにも男とは違うんだなぁ、なんて変な所で感動しながら肌の感触を確かめていたら、ふいに寝返りを打って上を向いた。
小ぶりだけどきれいな乳房が呼吸に合わせて上下にゆったりと揺れていた。
ちょっといたずらをしたくなって、乳首を指先でつついてみたけど反応なし。それならと弾いたり摘まんだりしていたら、定期的だった呼吸がわずかに乱れてきて、眉間に力が入ってきたように見えた。
これ以上はまずいぞ。そう思って手のひら全体で包み込んで、じっとしていた。
呼吸も安定してきたのを見て、静かに柔らかなお腹を伝ってパンツの中に手を差し入れた。
シャリシャリした丘を越えて、未知の部分に触れた。
しっとり冷んやり柔らかい感じがしたけど、構造が複雑すぎて触っただけじゃその形と言うか全体像を想像できないんだ。
ゴニョゴニョと探ったり動かしているうちに、明らかにお姉さんの息づかいが荒くなってきて口を開けて呼吸し始め時々ピクッと体が動き、夢を見ながらうなされているみたいな感じの声を漏らすようになった。次第にねっとりとしたものが指に絡みつく感覚も加わった。
ほどなくお姉さんは大きな呼吸をしてゆっくり目覚めた。状況をよく理解しないままでいたが、すぐに
「あ、ゲーリー、バカ、なにやって・・・、んっ、やめ・・」
そう言いながら俺の手を引き抜こうとした。でも構わず動かしていると手のひら全体にヌラヌラしたものが広がってきて、そのうち中指がヌルッとお姉さんの中に入ってしまった。
お姉さんは、あっ!と小さく鋭く叫んだ後は、両手を俺の首に回して強くしがみついてきた。ちょうど目の前につんとした乳首があったから口に含んでみたら、自分から俺が咥えやすいように乳房全体をこっちに向けてきた。
お姉さんの中を指でかき回しながら乳首を吸ったり舌先で転がしていたんだけど
「噛んで…」
そう聞こえたような気がして甘噛みしたら
「もっと強くてもいい」
そう言うのでなんか怖かったけどちょっとだけ強めに噛んだら、小さな声で気持ちいいって言ってくれたような気がする。
俺が手と指と舌を動かすたびに体がビクッビクッと反応して、辛そうに声を押し殺すのがたまらなく可愛い。
だんだん俺の手を動かすリズムに合わせて自分から腰を上下させて押し付けるようになってきたから、俺の手はもうどろどろだった。
パンツを下ろそうとしたら、お姉さんは拒まずに俺が脱がせやすいようにお尻を浮かせてくれた。
俺のをやみくもに押しつけてみたけど、よくわからずにいたらお姉さんが手を添えて導いてくれた。
根元まで一気に深々と沈めるとお姉さんはビックリするぐらい大きな長い声でその悦びを表現した。
俺もこんなにも大きな快感は初めてで、ゆっくり何度か往復しただけで出そうになった。我慢しなきゃとは心では分かっているんだけど、俺の体の中から溢れ出てくる大波を止められない。
お姉さんの中の一番奥深くで果ててしまった。抜こうとしたらお姉さんが耳元で
「そのままにしてて」
そう言いながら俺の体を優しく抱きしめた。
俺も勢いが失われつつあるものが抜けないように、ぐっともう一段深く差し入れて抱きしめ返した。
つながったままどれくらいたったろう、二人とも一言も話さず抱き合っていたんだけど、お姉さんはゆっくりと腕をほどき、おとといのおやすみのキスとは全く違う、たっぷりとしたキスをしてくれた。
お互いの舌をただ絡ませるってことがこんなにもお姉さんをいとおしく感じられることなんだなと驚いたし、その上エロチックな気分をも高めてくれる。
俺のは再びみりみりと復活してきてお姉さんの中を押し広げ始めた。お姉さんは今度は俺を下に寝かせて、自分がバイクに乗るように膝をついて跨がってくれた。
「あんまりこっち見んな!恥ずいだろ!!」
口では偉そうに命令するし、自分が上になって主導権を取ったつもりなんだろうけど、俺のを掴んで自分でその上に腰を落としてゆっくりと動き始めた。
お姉さんの腰遣いが次第にしゃくりあげるような波打つような感じになって来て、さっきみたいに声を我慢することもやめて、大きな声を出しながら激しく前後に腰を振り出して没頭していた。
指を絡ませて繋いでいた両手にぐっと力が込められてきた。
俺も今まで感じたことの無いような強烈な快感に襲われて自分の腰を突き上げて、恥骨どうしをぶつけたりこすりつけるように応えた。
お姉さんは
「あ、あ、やめろ、そんな、いっちゃう」
と俺の動きを牽制しようとするが、俺が止まるわけがない。さらに激しく突き上げてやると、
あーーーって叫んで反り返った。
俺もまたたくさん出してしまった。
お姉さんは俺の上に倒れ込み、時々ピクピク痙攣する。
「大丈夫?」
と背中に手をやるとビクンと体を震わせ
「触んなっ!」
「絶対あたしに触れるな。ほっとけ」
って叱られた。なぜ???
しばらくお姉さんの中も俺のをしごき出すように蠢いていた。
二人とも疲れ果てて汗だくで、色んなのが混ざってベトベトな体や下半身をそのままに、素っ裸で俺の肩と胸に頭を乗せていたお姉さんが笑いだした
「あたしは襲わないって約束したけど、ゲーリーに襲われてしまったかあ」
「イイ仕事した御褒美だ。目をつぶっとけ。絶対に目を開けんなよ」
俺が目を閉じたのを確認して、お姉さんは口に含んでくれた。
これはまたお姉さんの体の中にいる気持ち良さとも別の感覚で、敏感になっている状態だからキツイ。すぐにムクムクと力強さを取り戻すんだから、俺ってやっぱりドスケベなんだろうなと日頃の思いを再確認と言うか確信した。
我慢できずにお姉さんの口の中にそのまま出しちゃったら、全部飲み込んでその上丁寧に舐めとってくれたから、なんか物凄く感激した。
朝食を食べるはずだった旅館の食堂の時間も忘れて、楽しくいやらしくじゃれあっていた。
お姉さんの肌の色が上気してピンクに染まっていてきれいだ。裸のままでとりとめもない話をしながらも、ずっとお互いの体のどこかに触れていたりあちこちにキスするのもすごく嬉しかった。
お姉さんは子供が面白いおもちゃを見つけたように、ほとんど俺の特定の部分をもてあそんでいたんだけど・・・。
そのくせ俺には乳房や乳首にキスしたり触ったりするのは許すくせに、あそこを触り始めると、またしたくなっちゃうからダメ、とか可愛いことを言って拒否する。
そんなことを言っててもお互いの準備ができるとまたしちゃうんだけどね。
早朝から数時間ものあいだ、何度も何度も愛し合ったりキスしたりいちゃいちゃふざけあっていて、チェックアウトの時間もそろそろ迫ってきた頃
「さてひとっ風呂浴びて来ようぜ。やっぱり温泉は朝風呂こそが醍醐味だよな。ゲーリーも来いよ、家族風呂を借りて一緒に入ろ」
と言って素っ裸の上に浴衣だけ着て一人で先に行ってしまった。 慌てて追いかけるとお姉さんはフロントで家族風呂を借りる手続きをしていた。
少し雨が降っていたけど、一緒に露天風呂に浸かったり、向かい合って洗いっこもした。
部屋では恥ずかしいし汚ないからヤダって言われていたんだけど、お風呂で初めてお姉さんのにもキスしてあげることができた。
俺がどうしてもとお願いすると、湯船に腰掛けて恥ずかしそうに足を広げてくれた。たくさんキスしてあげたら二人とも盛り上がってしまい、お風呂場でもまたしちゃったwww
苫小牧までは小雨模様だったから、しっかりカッパを着こんで観光とかはせずに走った。
お姉さんは俺のとは違って、ネイキッドていうカウルのついていないタイプのバイクだから雨が全部体に叩きつけて来るから辛いだろうなと思った。
だから頻繁に休憩をとったけど、割りと平気みたいでカッパが蒸れるとかブーブー文句を言うぐらい。
朝を抜いた分、昼はラーメンを大盛りでペロッと平らげた。
夕方には雨も上がりフェリーにも余裕を持って間に合った。でも雨中のツーリングは思った以上に体力と神経を使い二人とも少し疲れていた。(たぶん雨のせいだけじゃない)
まだそれほどお腹もすいてないし先に冷えた体を温めるためにお風呂に入ることにした。
お風呂に入ってゆったりすると本当に生き返った感じ。
ラウンジに座っているとお姉さんもやって来た。
隣に座って
「楽しかったな、ホントにゲーリーには感謝しかないよ」
「無理させて悪かったけど、おかげで一生の思い出になったよ」
なんて、似合わない殊勝なことを言い始めたから照れくさかったけど
「僕こそ最高の経験をさせてもらえました」
「一人だったらこんな事は絶対やろうとは思わなかったし、何よりもお姉さんと過ごせて楽しかった」
と言った 。
いつの間にか二人で手をつないで(初めていわゆる恋人つなぎ)ラウンジのソファーで頭をくっ付けて眠ってしまっていた。
突然ゆり起こされたからビックリして、お姉さんのただならない慌てっぷりに、いったいどうしたんですか?と聞くと
「大変だゲーリーレストランが閉まる!」
「急がないと飯抜きだぞ」
ホントにこの人は食べることと飲むことに関してはエネルギッシュだ。
6.別れ
昼過ぎ定刻通りに大洗に着いた。
「じゃあなゲーリー、群馬なんて日帰りツーコースだから温泉に遊びに来いよ」
「楽しかったよ、ありがとー」
そう言って俺の唇に小さくキスすると、あっさり行ってしまった。
俺はエンジン音が聞こえなくなるまでずっと手を振っていた。
ちょっとだけ泣いた。
今、俺は札幌の大学の教育学部に在籍している。
北海道の大学に行きたいと両親に話した時は母が大反対だった。
そんな知り合いも誰もいない所に行くことは絶対許さない。近くにもいい大学があるし、東京の大学だって良いじゃないと慌てふためいて反対した。
ウチにはお金の余裕だってそれほどないし一人暮らしは心配だし、いざという時はすぐに行けないし等々なんとか思いとどまらせようとしていた。
俺はバイトして生活費は自分で何とかするから大丈夫だよと説得を続けた。
父はニヤッと笑って「いいんじゃない」と言った。
入学した大学にもバイクのサークルはあったけど、俺は塾の講師と和食レストランのバイトで忙しくて結局サークルには入らなかった。
北海道は広すぎて4年じゃ行きたいところを制覇できないと思う。大体にして日帰りが無理な所だらけ。
おまけに冬は寒くて長くて、1年の半分近くバイクに乗れない(これは辛い…)。その間は必死にバイトに励みお金を貯めて免許を取って、大型バイク買っちゃった。
お姉さんにはあれ以来会えていないけど、やっぱりバイクで走っているといつも思い出すな。
そうそう、彼女も出来たんだよ。
バイトの後輩でショートカットの目が大きいかわいい子だ。
何度かタンデムしたけど自分で運転しようとは思わないみたい。
タンデムするときは、最初から当然のように両腕を俺の体にしっかり回すように教えた。
もちろん安全のためだ(嘘)
おしまい
タンデム 美葉 @Bondsy
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