第7話 勲章
中間テストが終わった日、私は薫に遊ぶ約束をして、家に呼んだ。何故なら、『答え合わせ』をしたいから。数日悩んで、分かったとしても、合っているかどうか、本当に分からない。テストの回答が合ってるかどうか不安になるように。だから、このモヤモヤの塊を答え合わせとして、聞きたいのだ。
それにしても、薫は、L●NEでもやっぱり、ツンデレである。
『ねぇ、中間テスト終わったら、放課後に遊ばない? 』
『急にどうした』
ほら、薫は冷たい。
『遊ぼうよ!うちの家来ていいからさ』
しばらく返信が来ない。
『麦チョコあるから!』
『行く』
麦チョコで振り向く可愛さがたまらない。
そういう訳で、今、私の部屋にいる。
薫は麦チョコをパクパクと食べている。小動物みたいでかわいい。私は、変態なのか。
「あのさ」
「何?」麦チョコを食べるのを邪魔されて嫌な顔をしている。
「分かったよ。側面があるって話」
「それはよかった」
すると、また薫は麦チョコを食べ始める。
「おいおい、それだけかよっ!」とノリっこみをした。
キョトンとする薫に「答え合わせしないの?」と言った。
「……答え合わせ。分かった。何で分かったか聞かせて」と薫は言った。
私は、聖奈のこと、元同じメンバーだった子達のことを話した。それに加えて、自分の意見を述べた。
『真実はいつも一つ』と言うけど、一つの事実を色んな角度で見るべきだ。例えば、立場を逆にして、脳内でシュミレーションをすると、『あのとき、辛かっただろうな』、『傍から見たら、礼儀がなってないんじゃないか?』など、見えて、更に考えさせられる。傍観者(意見を述べる者)にとっては、重要である。そうすることで、相手の痛みや悲しみ、礼儀、当事者が感じたこと、性格などが見えてくる。
そのような内容を精一杯言葉にした。
「……なるほどね。そんなことがあったのか……。お疲れ様だよ、あの子達」と感想を言った。
「え、合ってる……?」と、恐る恐る聞いた。正直、感想より合ってるかどうかが知りたい。
「うん、合ってる。私が言いたいこと、ちゃんと伝わってる」
「良かった……合ってた……」やっと緊張が解れ、ホッとした。
「そこまで不安だったの?」と薫が不思議そうに聞いた。
「うん。だって、あのとき、薫がガチな目で意味深なことを言うから、気になって仕方ないし、間違ってたらどうなるか分からなかったから……」
「私、そこまで酷い人じゃないんですけど?」
「それは分かってるよ。まぁ、合ってたから良かったよ」
私は続けて言った。
「ねぇ、何でこのことを教えたかったの?」
薫はしばらくの沈黙の後にゆっくりと口を開いた。
「……一年生のとき、聖奈にターゲットにされて、一人ぼっちになったときに気づいたの。千鶴が言ってたこととほぼ同じことを聞いて、分かったの。それを分かってから……なんて言うのかな、無性に聖奈に腹が立ってきて……。文化祭の出し物を決めるときも、自己中心的だし、予算オーバーしそうなことばかり提案するから、強めに駄目だって言ったの。そうしたら、何故かターゲットにされてて……。ただ、私は意見をしただけなのに、何で、無視されたのか分からなくて……」
言葉が次第にもごもごしてきたのは、恐らく、泣きそうになっているからだろう。
「うん」だから私は、それを肯きながら背中を摩って聞く。
「……何で、何でって思うと悔しくて……、理由を探しても、強く言ったところみたいに私が悪いところもあったと思うけど、無視されるほどじゃないと思うし……だから、聞こうと思ったけど、そのときは既に、除け者みたいに扱われて、聞けなくて、もっと腹立たしくなったの。それに、千鶴は悪くないのに、冷たくしたし……」
そう言い終えると、下を向いて溢れる涙を両手で拭っていた。
「大丈夫。私は平気だよ。冷たくされても、こうやって、ちゃんと打ち明けてくれるんだから。嬉しいよ。それに、薫はよく耐えた。頑張った。泣いていいよ」
あのとき、ちゃんと話を聞いてあげるべきだったな、と後悔しながら、薫の背中をゆっくりと摩った。
薫の涙は、まるで勲章のようだった。
こうやって、聞いてあげて、背中を摩るだけで、当事者は楽になる。もし、辛くなったときは、自分を客観的に見て、行動を見直して欲しい。そして、それを肯定と否定をしっかり言ってくれる人を友達と読んでいいと思う。辛くなったときは、このように沢山聞いてほしい。自分が傷を知り、他人の痛みが分かる。そうやって人は、優しくなれるのだ。
傍観者は、そう学んだ。
傍観者 倫華 @Tomo_1025
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