第三章 「答え合わせ」 仁科 千鶴編
第6話 ○○○○○
薫を家に招待してから数日が経った。
その事をずっと考えていたけど、何が何やら分からず、答えに辿り着けない。
今は中間テスト期間だから、部活もお休み。だから、今は早めに一人で下校中。
「聖奈、英語教えてもらいに行くの。帰りは一緒に帰れないから!」とお嬢様は仰っておりました。だから、一人で帰っている。
「あ、千鶴ー!」誰かが私を呼ぶ。数人いる……?
ん、誰だ……?
私の低い視力じゃあの子達が誰だか分からない。走ってみる。
「千鶴、気づいてなかったでしょ?」
「うん、ごめんごめん」
この子達は聖奈の元の部活のメンバー。この子達も散々、聖奈に振り回されてきたの。お疲れ様としか言いようがない。
結局、この子達と一緒に帰ることになった。
ということは、聖奈お嬢様、いや、汚嬢様の悪口大会が開幕ってことですね!楽しみだね!
「ねぇ、千鶴。そっちの方の聖奈はどう?」
ほら、始まった。あーこれでストレス発散出来る。
「いや〜相変わらずお嬢様してるよ。」
ふふっ、やっと聖奈から解放された。ずっと引っ付いてるとストレス貯まるし、愚痴も吐ける。
「やっぱそうだよね〜 ホントお疲れ様だわ」
「そっちでは何かしらしたの?」
「えーと、まだ始めて間もなくて下手くそなのに、『私吹けるんだよ!スゴイでしょ!?』アピールとか、無駄に音楽知ったかぶりしたりとか。他にも(以下略)」
「わー相変わらずだね……」
「そっちはどんなお嬢様をしてたの?」
そのネタはまさかの裏話だった。
「うちら、毎日交代しながら、タオルを洗ったり、スポーツドリンクを作ったりするマネージャーっぽい仕事をしてるの。それを、聖奈は他の人に押し付けて全くやらないの」
「え?それ自主的にするヤツじゃないの?」
そのように聖奈から聞いた気がする。うん、忘れた。
「違うよ!あれをしないと、顧問に怒られるし、ほんっとうるさいの。だから、前に先輩に『ちゃんとしろ』って叱ってもらったの。反省したかと思ったら、『わざわざ私が気を遣ってやってあげたのに、アイツ何様?頭大丈夫?』って言ってたの!」
『うわあ、これは事案だぁ!!www さすが汚嬢様だ!!w 先輩相手に相変わらず強いw まさかの勘違いってやつ?うわ、おつーwww』と、無性にツイートしたくなった。流石に言えないけど。
「え、嘘!? それ私が聞いてた話と全然違うんだけど?! 」と返事をした。
「嘘でしょ?! え、聖奈、何て言ってたの?」
私は、聖奈から聞いたことを淡々と話した。
「はぁぁぁ?! 何様!? 勘違いしたの!? 何それ! 私達、何で今までやって来たのか分からないじゃん!うわぁ……腹立つわ……」
どうやら、聖奈の方が悪い様だ。
あ、そういうことか、と、ふと思った。
『物事には側面がある』
一つの出来事を、一人の視点で見るだけじゃ分からない。あらゆる角度から見て聞かなきゃ駄目なんだ。
だから、側面という表現をしたのか。分かりずらい。もっとはっきり言えばいいのに。
でも、傍観者の私にとって、これは大切なことだ。薫はこれを知って欲しかったのかな。
そう思うと、何だかとてもスッキリした。
愚痴も吐けたし、謎のメッセージの意味も分かったし、清々しい気分だ。
すると、後ろから足音が聞こえた。
後ろを見ると、聖奈がいた。話を聞いていたのか、涙目になって、鼻をすすっていた。あの子達が言ってたことと、聖奈から聞いたことの矛盾さを思い出すと、聖奈が滑稽で、可哀想に思えてきて、吹き出し、蔑視した。
「ざまあみろ」
それを言って、嘲笑した。今までしたことない顔の表情をした気がする。
そう言われるのが、自分のせいだと全く知らないんだな、コイツは。だから、悲劇のヒロインみたいにめそめそ泣けるんだ。なんだ、弱いんだ。強がってるように見せて、心は弱いんだ。今日のタイムラインが楽しみだな。
家に帰って、T●itterを開けると、予想した通り、聖奈は闇ツイートをしていた。
『あー嫌だ、嫌だ、嫌だ』
『これだからクズ達は嫌なんだよ』
『ねぇ、そんな大声出して近所迷惑になるって気づいてないでしょ? 馬鹿なの? 』
『あー明日学校行きたくない』
『学校行きたくないのも全部あのクズ達のせいにするから』
このツイートをよく、鍵無しのリアル垢でつぶやけるな。悲劇のヒロイン気取りは、もう少し、まともなツイートを出来るようにがんばろうって通知表に書いてあげるわ。
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