第129話 冬と春の間に

吹く風にわずかに混じる花の香が

知らぬ間に心に積もる寂しさを

ほんわり溶かしてくれるから

凍えてもまだ歩けるのです


待ち望む春はまだまだ遠いけど

かじかんだ指で感じる冬の日に

ほんの少し懐かしささえ抱くので

このままで、まだこのままでいたいのです


巡りゆく季節のただその中にいて

迷い、歩き、立ち止まっては振り返る

その時は決して無駄ではないからと

微笑んで冷たい風を吸い込んで


いつの日かこのささやかな日常を

忘れ去り流されるまま進んでも

刻まれる記憶はきっといつまでも

この胸と体を温めてくれるでしょう

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