第93話 オルゴール

部活のあとグランドから見たカシオペア

窓を開けたとき一面に広がるれんげ畑

そんな他愛ない景色の欠片が

ふとした瞬間よみがえり

臆病な私の背中を押すから

今日もまたきっと立っていられる


数々の場面が紡ぐメロディーは

記憶が奏でるオルゴール

心の中で一番弱い部分に触れ

くるくるくるくる回り出す

まるで柔らかいブランケットで

冷えた体を包み込むように


そのオルゴールを抱き締めて

そっと覗いた夜空から

満月にほんの少し足りない月が

投げかけてる淡い光が優しくて


いい夢を見られる予感に

微笑みながら眠ろう

オルゴールの音色が

夜に溶けてしまわないうちに


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