カクヨム誰でも収益化にて『一部有料化』は絶対に実装しないだろうという根拠


 皆さんこんばんは、あさかんです。


 今年も4月に入り新年度を迎え、社会人として大きな変化があるとしたら今月からとうとう年間5日の有給取得義務化が始まったことでしょうか。


 社会人読者の皆さんもカクヨム編集部の皆さんも今まで有給を取れなかった人は『これで最低5日は取れるな!』と意気込んでおられるかもしれませんが、私の勤めているところでは人手不足により有給がとれそうな雰囲気はありません。


 有給取得が出来なかった場合に企業から国への罰金制度があるため、ひょっとしたら集計期間ギリギリのところで5日間休日出勤させた上で別の日に有給を取らせるという荒業を使う可能性はありますが、罰金制度も最初は注意だけで済むとかいう話もありますので、どこかの企業が『罰金払わされた!これなら有給取らせたら良かった!』とか言い出すまで無視を決め込む可能性大であります。


 っつーか、人手不足で有給取りたくても取れないんだから、罰金を国が貰うんじゃなくて一番の被害者である私にくれよ!って言いたいです。(←これが言いたかっただけ)



 すいません、話が逸れ過ぎましたが早速今回のテーマに移りたいと思います。


 カクヨムが発表した誰でも収益化の2本目の柱である『読者から作者へ直接金銭を渡す仕組み』について、お知らせでは『カクヨムで投稿している作品の一部有料化』という例をあげていますが、私はこの一部有料化は恐らく余程の事がないと実装しないと思います(以前のエピソードで述べている『おひねり』とは別の仕組み)。


 それは何故かと言いますと、カクヨムは他のWEB小説サイトと違いあくまでも出版社が立ち上げたサイトであり、カクヨム自体が直接利益を産み出すわけではなく、カクヨムを通じて新たな書籍化作品を発掘したり、書籍自体を買って貰う読者を得ることで企業に貢献しているからです。


 つまり、カクヨム誰でも収益化を実装したおかげで逆に書籍が売れなくなってしまった、若しくはWEB小説作品を書籍化できなくなってしまったら本末転倒なわけなのです。


 というのもカクヨムが発表した『誰でも収益化』を実装する理由として『今までは書籍化しか作者が利益を得られる要素が無かった』とありますように、趣味でやっていた作者が仕事としてそれを継続できる術は書籍化しかなかったため、出版社としてはどう転ぼうが今まではWIN―WINでしかありませんでした。


 しかし『作品の一部有料化』が実装されればどうでしょう?


 普通に考えると書籍化は宣伝効果が大きい為、現状は『作品の一部有料化』がそれ以上の利益を生み出すことは考えにくいですが、WEB小説の市場規模が今以上に増大し、書籍化しなくても有料作品が売れる時代がくれば、ひょっとしたら書籍化打診を断る作者も出てくるかもしれません。


 その理由は書籍化よりもWEB小説の有料作品の方が1読者に対して断然利益率が高いからです。


 書籍化作品が作者に入る印税は多くても1割が相場です。600円の文庫本なら1冊当たり60円が作者に入ります。


 それに比べ『作品の一部有料化』が実装されるとすれば、カクヨムは恐らくどんなに高くマージンを設定したとしても作者7:カクヨム3あたりか、カクヨムは定額の手数料のみで全額作者に入れる可能性もあります。


 つまり、文庫本一冊分の文字数をエピソードごとに分けて合計600円と設定すれば、どんなに少なく見積もっても作者には300円以上の利益が入るわけです。


 書籍印税では60円、有料作品では少なくとも300円以上と利益率に大きな差があるのは明白ですよね。その上有料作品は恐らく自分で金額を設定できるようになるので、人気があれば強気に倍額にしてみようかとチャレンジすることも可能でしょう。


 もちろんWEB小説の有料化は書籍化と違いイラストがつくわけでもなく、レーベルがゴリゴリ宣伝してくれるわけでもなく、何より書店に自分の作品が並ぶわけではないので現時点では書籍化の方がメリットが高いでしょう。


 しかしあくまでも現時点では、です。


 先も述べたように有料化作品が安定して読者に売れる時代が来ればその限りではないのです。


 ネットでは書籍化に際してレーベル編集部とのトラブルも少なくないようですし(カクヨムでも今爆発的に話題な『アニメ化を断った―――』というエッセイなど)、これまでは趣味作家→プロ作家への通過点として心身共に疲労しながらも書籍化した作者も、有料作品で既に利益が得られる体制が整っていたりすれば、編集部との多少のすれ違いなどで書籍化を途中で断ったりする人も増えてくるかもしれません。


 無論、有料作品もカクヨムには多少のマージンが入るので、普通に考えれば有料作品と書籍化を両立すればいいじゃないか?と思われる方も多いでしょう。


 しかし一番カクヨムやカドカワにとって苦痛を味わうのは有料作品としてカクヨムでヒットしておきながら、カドカワグループ以外のレーベルで書籍化されることでしょう。


 なので、これに関しては恐らく有料設定の時点でカドカワグループ以外のレーベルから出版するのは違反とする規約ができると思います。


 これまでの話を悪く言うと、一部有料化を実装するのはカクヨムからすれば今までカクヨムが保有する畑でせっせと農業を勤しんでいたユーザーが、良い作物が出来た時点でサクッと自立してしまうリスクが高いということなのです。


 シリーズ累計○百万本達成という未来の原石が埋まっているであろうカクヨム畑ですが、カドカワがそれらを掘り出す前に作者がそれを持ちだしてしまえば累計○百万本の書籍販売利益が無となるわけですので、そのリスクを冒してまで『一部有料化』を実装するのは考えにくいと言う結論に至りました。


 そこから、私はカクヨムが『一部有料化』を実施するための妥協案を考えてみました。


・有料化マージン比率をカクヨム運営側で自由に変更できる(有料作品が安定して売れる時代が来た場合、書籍化利益と同程度のマージンを得られるように)


・有料化作品に際しては他の出版社からの出版を認めない


・コンテスト応募中は有料化を一時解消しなくてはいけない


 まあ、このあたりでしょうか。


 これらの問題はあくまでも『自社レーベルを保有しているWEB小説サイト』に起こりうるリスクですので、自社レーベルを持たない小説家になろ●などでは企業へのメリットがはるかに大きい分、カクヨムよりも先んじて実装してしまう可能性もあります。


 その場合、カクヨムユーザーがそちらへ流れてしまわないようにカクヨムも同様以上の条件にて実装する可能性もありますね。


 

 まあ、結局のところ何が言いたいかと申しますと、出版企業としては出版を経由しない形で作品に安定した利益が出るようになってしまうと、その分本が売れなくなる可能性があるのでおまんま食い上げになるなあと思った次第でございます。


 もちろん、有料作品が売れてもカクヨム自体にはその分マージンが入って来ますので、それほど影響があるわけでもありませんが、出版物よりもWEB小説の有料化作品が売れてしまう時代が来てしまうと、ライトノベルレーベルをほぼ占有しているカドカワの強みが無くなってしまい、自社レーベルを持たないWEB小説サイト企業が有料作品の利益で小説業界に台頭する可能性も無きにしも非ずなのです。


 何れはほっといてもそうなるかもしれませんが、自社レーベルでやりくりしているカドカワが先頭に立ってその時代を作りにいくという可能性は低いのではないでしょうか。

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