サイコロを振って人生を決めるようになりました!

ちびまるフォイ

俺だったら1の目ばっかり出すわ。

「突然ですが、世界のみなさんにお知らせがございます。

 この世界の不平等さをなくすために、パッチ1.0.0をリリースしました」


パッチは自動的に全世界で対応されて、もう昔には戻れなくなった。

すべての人間の掌にサイコロが埋め込まれた。


「いったいなんなんだこれ……」


手のひらに描かれたサイコロに触れると実体化して自動的に転がった。

出た目は「1」。


目が出ると、実体化したサイコロは再び手の中へ戻る。


「なになに……1の目は……金の日?」


パッチ更新内容を確認して、それぞれの目の役割を確認する。

1の目を出した今日は金回りが好調になるらしい。


半信半疑だったが、その日は会社で臨時ボーナスが伝えられたので

この人生サイコロの力が本物だとわかった。


「世界の不平等をなくすために、みんな自分の人生をサイコロに託して

 その日の運命を自分で決められるようになったのか。

 ほかにはどんな目があるんだろう」



1:お金の日

2:友達の日

3:仕事の日

4:知名度の日

5:アイデアの日

6:恋愛の日


※サイコロを振らなかった場合は、自動的にプレーンな日となります。



「れ、恋愛……!!」


仕事もあるし、独身だから財産もムダにある俺。

この中で出す目は「6」。それしかない。


翌日、日付が変わると同時にさいころを振った。


「うおおお!! 出てこい!! 6の目ぇぇぇ!!!」



4。



「ちくしょおおお!」


その日はたまたま自分の仕事が人づてに伝わって、テレビ出演が決まった。

またお金が増えた。それよりも欲しいのは愛だ。



翌日、今度は必死に念じてサイコロを振った。




2。



「なんでだぁぁぁ!!!」


その日は偶然に友達と遭遇して友情が深まるとともに、

ほかの友達も紹介されてさらに友達の輪が広がり金回りがよくなった。いらねぇ。


翌日も、翌々日もサイコロは6の目を出さなかった。


「ちくしょう! いつになったら恋愛できるんだ!!」


サイコロの目さえ出ればこれまでの人生をガン無視して運命が発生する。

ニートだろうが仕事の目を出せば成功するし

アイデアの目を出せば世界初の発想だってできる。


なのに、いつになったら6の目が出てくるんだ。


「確率1/6がこんなにも遠く感じるなんて……」


同じ目が何度も出るので6回ふれば必ず1回は当たるわけじゃない。

6の目を出す方法は必死に祈るだけなのか。



「……そうだ!! パッチだ! パッチを調整しよう!!」



きっと全世界の人はなんでサイコロを振らなきゃならないんだと、

自分の人生を運まかせにすることにストレスを感じてるはず。


俺がパッチを作ってサイコロの目を自分の好きな目が出せるようにすれば

みんな自分の思った通りの人生を歩んでいけるはず。


「うおおお!! やってやるぜぇぇぇ!!!」


6の目が出ない代わりに、3の目(仕事)や1の目(お金)がやたら出るので

資金面や仕事で困ることは1日もなかった。


ついにパッチ2.0.0が世界にリリースされた。


「やったぞ!! これで自分の人生がみんな思い通りになる!!」


今度はサイコロなんて振らずに目を自分で決められる。

俺はもちろん6「恋愛」を毎日選び続けた。


6の運命を選び続けることで、これまでなかった異性との交流が進む。


気になる人ができて。

デートを重ねて。

しだいに心がひかれあって。



「……僕と、結婚してください!!」


「私でよかったら」



6の目を出し続けたかいがあった。

なにもかも事足りていた俺の人生についに「愛」が満たされた。



「君とは運命の赤い6の糸で結ばれることができた。

 君のようなきれいな人と結婚できて僕は幸せ者だ。

 僕のどういうところにひかれたんだい?」



「わからないわ」


「え? どうして結婚したの?」



彼女もとい妻はそっと俺に掌を見せてくれた。



「ずっと1の目を選び続けたら、あなたとの結婚になったから結婚しただけよ」

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