みんなは応援コメントって返信してる?
ちびまるフォイ
それは応援コメントですか?いいえ、ケフィアです。
まさかの応援コメントに俺は脱いでいたパンツをずりあげた。
>なかなか面白かった。
たった1行。
なのにどうしてここまで俺の心を震わせるのか。
俺はいますぐこれを書いた人に抱き付いてほおずりして、
泣き叫びながら感謝の言葉を伝えたい。
というかもう
「結婚したい」
感謝が空回り過ぎて市役所までワープしそうだ。
「さて、どう返信したものか……」
というかそもそも返信するものなのだろうか?
応援コメントってみんな返信しているのか。
俺だけコメントしたら
"うわ、こいつ評価に飢えてんなwwwww"
とならないか。
スリザリン出身は体裁をやたら気にするのだ。
試しにほかの小説で応援コメントを覗いてみるも、
そのほとんどがとくに返信されていなかった。
「むぅ……これはこれでかっこいいな……ストイックで」
ちょっとあこがれる。
でも、ここで俺があえて応援コメントをすることで
「この作者ほかの人とは違う!抱いて!」となりそうだ。
――人と違うことをしたい。あわよくば異端児と言われたい。
そんな風に思っている時点で「どこにでもいる普通の人」に分類されるのはわかっているが、
それでも他の人がやってなさそうなことをやって
すっかりケツの穴にでも引っ込んだ俺の個性というやつを発揮したい。
そこで、コメントすることにしたが2パターンの文面で悩む。
「キャラでいくか、普通に感謝を伝えるか……」
"ちびまるフォイ"とかいうダンブルドア校長に著作権侵害でパトローナムされそうなアカウント名なので、
一応なりきりっぽく返信したほうがコメ主としては嬉しいのだろうか。
いや、待て待て。
コメ主はあくまでも小説にたいしてのコメントをしたのであって、
俺個人に"面白い返しをしろ"と期待はしてないんじゃないか。
むしろ、変にキャラで答えたら「お、おう…」とならないか?
>なかなか面白かった。
>ありがとうございます。これからも頑張っていきます。
…くらいのシンプルな方がいいのではないか。
「んぬあぁぁぁぁぁ!! 悩む!!! どうすればいいんだ!!」
肝心なことをGoogle先生はなにも教えてくれない。
俺のGoogle検索はエッチな単語しか予測検索しか出してこないスケベ男爵だ。
「いやだめだ。こういうときに自分を見失っちゃいけない。
大事なのは自分がどうなりたいかだ」
俺は自分の部屋の壁に貼られている"めざせラノベ作家!"の文字を見つめた。
なお、賃貸アパートなので画びょうの穴でお金取られるのは明らかだ。
そう、俺はカクヨムを礎にして最近よくあるWeb出身の小説家としてデビューするのだ。
そして、信者どもに祭り上げられながらアニメ化なんかしたりして
印税で使い切れないほどのお金を手に入れて悠々自適なニート生活を営む。
そんなつつましやかな夢を実現するための一歩なのだ。
「となると、やるべき方針は定まるな」
コメントは2パターンのどちらでもない。
大事なのは俺の小説をもっと読んでもらって、もっと評価してもらうことだ。
応援コメントをよせるくらいなんだから少なくとも好意的な評価を引き出しやすい
そうして人気作となったものを出版社の目に留まるかもしれない。
やるべき返信はこれしかない。
・自分の作品に誘導する
・短い内容で俺の返信負担を減らす
・先が気になるように興味を引く文章
そして、俺は返信をつづった。
>つづきはWEBで!
運営「"不当な評価を要望する内容"、などと判断した投稿は、削除、またはアカウントの利用停止とする場合があります」
運営はそっと俺の肩に手を置いて――。
みんなは応援コメントって返信してる? ちびまるフォイ @firestorage
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます