第4話

初めに集められたのは体育館だった。

私達の中学校よりも古くて少し大きな体育館だった。

受験場所を確認してから入ってくださいと、高校の先生達が呼び掛けている。私はそれを横目にお疲れ様ですと、心の中で敬礼をしながら受験場所を確認する。私たちは1年2組の教室で試験を受けるようだ。

確認を終えると、受験番号の何番から何番と書かれた札の前に並ぶ。

私は後ろの方か。大体このくらいの人数だろうと検討をつけて座った。

「冷たっ!」

体育館の床は冷たくて、制服越しにもわかるくらいヒヤリとする。

思ったよりも大きな声が出てしまったが、周りはガヤガヤと騒いでおり目立つ心配もない。

「しかし、多いなぁ...」

ぼそりと呟いた声は周りの声にかき消される。人が多いところは苦手なのに。だから、受験なんて、高校なんて嫌なんだ。ぶつくさと心の中だけで文句を言う。私の中学校は全校の人数が60人にも満たない位少ない。私たち3年生はたったの15人だ。そんな学校でも、人見知りな私は入学式の時、行きたくないと言った覚えがある。ここよりマシだぞと、過去の私に言ってやりたい。駄々をこねるな、小学校の頃よりも人数は少ないんだぞ、と。

そんな事を考えているとぞろぞろと人が集まってくる。思った以上に人数が多く、もう少し後ろに座るべきかなと思う。

「あの、番号、何番ですか?」

周りをうろうろしていた女の子が私に問いかけてきた。緊張しているのか随分早口だ。

「20番です」

あ、じゃあ私前だ、と女の子は呟いてそそくさとその場を離れた。私は、やっぱりもう少し後ろに下がろうと荷物をもって後ろの方に移動した。



そろそろかな。集合時間まであと、10分というところだ。じっと待っているのは苦にならないが如何せん暇で仕方がない。単語でも確認すればよかったのかも。

ボーっとしていると、先生方が集まっているのが見えた。あ、そろそろだ。

「えー、受験生の皆さんお早うございます。」

おはようございます。と、私達も挨拶をする。

「受験場所の確認をしていない人は体育館前に掲示しているので確認して下さい」

え~?そんなのあった?と言いながら何人かの生徒は早足で体育館の外に出ていく。

暫くして全員が揃っているか確認も終わったようで説明が始まった。


長いので抜粋。


要するに、

カンニングはするな、終わったら帰って良し

でしょ、了解。

さっさと終われ。

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あたたかい春の日に @Free120506rabbit

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