エピローグ、恐らく平穏は訪れない。
俺の話を最後まで聞いた愛上君はしばし呆然としていた。
それもそのはずだ、いきなりこんな暗い話を聞いたら言葉を失ってしまうのが当然と言えるだろう。
「この話を俺は誰にも話した事がない、そんな大事な事を愛上君に話した」
不器用な俺に出来ることはこれしか無い。渡瀬の本のワンシーンには主人公とクラスメートが過去の話を暴露すると言うシーンがあった。
まぁ、だからなんだと言うのだが、
「これは俺なりの信頼の証だ、俺は愛上君と仲良くなりたいんだ」
「あ、赤城君……」
引かれてしまっただろうか、愛上君は拳をギリりと握りしめて下を見つめていた。
そして、
「ぼ、僕も赤城君に秘密を話すよ!」
「い、いや、別にこれは暴露大会では……」
「そ、そうじゃないと気が済まない、僕は……」
愛上君は何かを決意した顔で、真っ直ぐ俺に向かってこう言った。
「僕は……、バイセクシャル何だ!!」
「……」
ながーい沈黙が愛上家のリビングに訪れた。
「……はい?」
「だ、だから僕は、そのぉ……男でも女でもどっちでもいける感じの人で……」
いや待て、何故そうなる、てか俺の昔話を聞いた後によくそんなカミングアウト出来たな。
素直に尊敬出来る。
「り、リアリー?」
驚愕のあまり俺はカタコトの英語で返す。
「ば、バイです」
「そ、そうか……」
なんだこの空気、お互いいたたまれないぞ、と言うか凄く死にたくなって来た。
何だろこれ、
××××××××××
週が明けて月曜日の放課後、誰もいない教室に五人の変人共。
一人目、俺、オタク。
二人目、渡瀬片瀬、ラノベ作家。
三人目、相崎リツカ、ヤンデレメイド(仮)
四人目、相崎マドカ、ツンデレメイド(仮)
五人目、愛上尾垣、―――――
――――バイセクシャル。
紙に記されたそんな名簿見たいな物を見つめて渡瀬が一言。
「これは面白いラノベが書けそうだわ!!!!」
確かに面白そうなのは認めるが、ただ一つ言わせてもらおう。
この中で一番マシなのオタクじゃね?
第一部完
この中で一番マシなのオタクじゃね? 田城潤 @ainex
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