昭和11年(1936年)2月、満州国に異変あり。
まず新京(長春)方面からの通信が途絶えた。
次いで、同方面から「死霊列車」が到来した。
死霊列車からは「死体兵」が湧いて出た。
史実の20世紀前半によく似た、魔法や呪術が存在する世界。
とはいえ、陰陽師や密教僧などから成る「呪法兵」部隊は、
日露戦争後、火砲の発達した昭和10年代には時代遅れである。
そんな中に現れ、関東軍を翻弄したのがゾンビの大軍だった。
満州の怪事は日本本国は勿論、国連においても重大視され、
各陣営の思惑を巻き込みながら異様な事態を呈していく。
ゾンビと戦うべく日本本国から満州へ送り込まれたのは、
すでに引退した老陰陽師、小柄で古風な石光三郎「特佐」。
一方、現地に住まう中国人も事態を見過ごしなどしない。
秘密組織に属する巨漢の武侠、洪復龍が共同戦線を張る。
石光と洪の年齢差凸凹コンビが、渋くて微笑ましくて格好いい。
脇を固める登場人物は架空の人も史実の人もキャラが立っていて、
中国の説話・伝説を踏まえて語られるゾンビの首魁がまた強烈。
火砲、列車、戦車から五行説による異能バトルまで、展開が巧い。
私は20世紀史は詳しくないけれど思いっきり楽しかったので、
満鉄とか関東軍とか好きな人にはめちゃくちゃ楽しいと思われる。
陰陽師好きな人、武侠好きな人、ゾンビ好きな人にもオススメ。
元気で格好いいおじいちゃんが好きな人にも、全力でオススメ。
数十年前まで各国の軍に「呪法兵」が組織されていた、少し異なる歴史の昭和11年。
満州鉄道を走る死霊列車が関東軍に襲いかかり、次々駅を陥落させていく。
陸軍本部は、退役した呪法兵・石光三郎を、満州へと送る。
死霊を操る、恐るべき何者かを食い止めるため。
帝国軍人である石光と、中国人の洪復龍は共闘するが。
日本軍に協力するのではない、中国人にとっても脅威であるからだ。
内心わだかまりがないわけがないのです。口論もします。
しかし、お互いの実力は、認め合って。
満鉄調査部とか、色の名前の付いた中国の秘密結社とか大好物です。
日本が国際連盟脱退した状況下でも、外交官は出来る範囲で努力中。
当時の満州関係の有名人物が次々出てくるのも楽しい。
長春の牢屋で某人物が出てきた際は「おおっ!」と思いました。
ぜひみなさん、読んでみてください。