第3話
「
俺の前に立っているのは、数日前まで付き合っていた姫路沙希ひめじさきだ。
会いたかったような、会いたくなかったような、自分でもよくわからない。
ひとつわかるのは、目の前の沙希が非常に緊迫した表情を浮かべていることだ。
「翔!ちょっと来なさい!!」
そういうと沙希は俺の腕をつかんで階段を猛ダッシュ。
授業をどうするつもりなのか、何が何だかわからないといった表情を浮かべる三島にどう説明しようかを考えながら、必死の形相で階段を上る。
腕を振り払おうと思ったが、このスピードでそうすると、こけて顔面を強打するだろう。
「おい、沙希!どうしたんだ!?何をしているんだ!?」
息を切らしながら沙希に尋ねるが答えがない。
教師が追いかけてくるかと思い後ろを振り向くが誰もいなかった。
階段を3階分くらい上がっただろうか、沙希が立ち止る。
目の前には立ち入り禁止の文字。
この学校は生徒が屋上には入れないようになっている。
とういことは、ここは5階か。
普段運動していないのでもうバテバテだが、チャンスだと思い沙希に問いかける。
「もうこの先はいけない、目的を教えてもらおうか・・・」
謎の悪役臭を漂わせながら、沙希にせまる。
「屋上に行くわよ、着いてきなさい」
すると、立ち入り禁止のビニールを潜り抜け屋上へと向かう。
正直ここで引き返しても良かったが、沙希が何を考えているかをどうしても知りたかった。
あの日、何故俺は振られたのか、それを知るまでは帰ることはできない。
「分かった」
そういうと俺も沙希の後ろをついていく。
当然だが、屋上に入ったことはないのでここに来るのは初めてだ。
階段を少し上がると、屋上へのドアが見える。
「ここね」
沙希はそういうと、自分の右ポケットから鍵を出す。
何故立ち入り禁止である屋上のカギを持っているのか大いに謎であったが、こいつなら持ってそうだな、とうことで納得してしまった。
「ガチャ、ガチャ」
沙希が手慣れたような手つきでドアを開ける。
ズンズンと迷いなく歩き出す沙希。
俺も後を追って屋上に入る。
「おお、スゲー。こんな景色見たことないよ・・・」
初めて見る屋上は、何ともいいがたい光景だった
いつも通っている田んぼばかりの通学路が、上から見ると当たり1面がきれいな緑に変わっていた。
「どう?驚いたでしょう。私も一番最初に見たときは言葉を失ったわ。この町がこんなに綺麗なんて」
なんとなく気づいていたが、やはりこいつ屋上に来るのは初めてではないらしい。
「ああ、驚いたよ。感動した。ただ、これを見せるためだけに授業を放棄して俺をここに連れてきたのか?」
さっそく本題に入る。
今頃、2年3組と6組は大騒ぎしているだろう。
しかしあの日俺を振った理由、それを聞くまでは帰るわけにはいかない。
「もちろん違うわよ・・・あなたには大事な話があるの」
ここから、俺がなぜ振られたのかが語られる。
俺は覚悟を決めた。
ガチな恋愛してみませんか。 きりりん @kiri-1997
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