第2話
「あー今日配らないといけないプリント職員室に忘れてきちゃったー。誰か取りに行ってくれないかしら?」
高橋先生が、これでもかというくらいあざとい表情で言う。
すると生徒たちが
「先生の好感度を上げるチャンスだ!」
と言わんばかりに、一斉に手を挙げる。
俺はというと、職員室に行く途中に「2年6組」を通らないといけなかったので手を挙げなかった。
いや、わざわざ1階にある職員室にプリントを取りに行くのが面倒くさかったのかもしれないが。
などと考えていたら
「あら、みんな優しいのね。先生うれしい♡。じゃあ委員長だし三島さんに行ってもらおうかしら!」
「えー俺も行きたかった」
みたいな声が聞こえるが、三島の声が押し返す。
「分かりました。」
すこし高めの、しかし落ち着いた声で返事をする。
綺麗な声だな。
と思いつつ視線を先生に戻す。
「でも、ちょっとプリント多いのよね~。水上君も一緒に行ってくれないかしら?」
「え、俺ですか!?分かりましたー。」
少しびっくりしたが、不思議と断れなかった。
なんだこの先生、可愛いだけじゃないな。
「じゃあお願いね!プリントは私の机の上にあるから」
三島が返事をしてそさくさと教室を出る。
俺も三島に負けじと早足で教室を出て職員室に向かう。
教室のドアを音が立たないように静かに閉めると、先に5m程先に歩いていた三島に追いつく。
我がクラスは2階にあるので1階はすぐそこだ。
ホームルームは15分あるので余裕をもって持っていけると考えられる。
「ここの廊下、ちょっと古い感じだけど私は好きね。65年も使っていれば古くなりそうなのによく手入れがされているわ」
淡々と三島が話しかけてくる。
特にクラスで目立っているわけではないが、いざ近くで話してみると結構可愛い。
身長は160cmくらいか。
しっかり手入れのされた黒髪を腰まで伸ばしている。
いわゆる、黒髪ロングというやつ。
前髪は眉まで伸ばしており少し左になびかせている。
顔も整っており、もし化粧をばっちりしていれば、アイドルやモデルをやっていそうだ。
「そうだな、所々手入れを抜いているところも俺は好きだな!」
少し年季の入った教室のナンバープレートーを見ながら冗談っぽく言うと、三島が笑みを返す。
「ふふふ、そうね。あと、校庭にある花も好きだわ。たくさん種類があって見ていて飽きないの。特に、ジャスミンの花が好きでね・・・」
そういえばそんな花があったっけ。
くらいにしか覚えていが、三島の話を聞いているうちにだんだんと興味が湧いてきた。
「いろんな花を知ってるんだな。俺もちょっと勉強してみようか」
「うん!花良いよ~」
世間話をそこそこに、2年4組、5組の教室を通り過ぎた。
次は2年6組の教室だ。
これまで必死に考えていなかったがいざ教室を見ると緊張してしまう。
もしドア越しに彼女と目があったらどうしよう、虫けらを見るような目で見られたらどうしよう。
などと考えながら早足で歩く。
「水上君?」
少し早足になったのを三島が心配して声を掛けてくれたが、それにまったく気づかないくらい、頭の中がパニック状態になっている。
早足を加速させ、6組の教室を通り過ぎる。
「はあ、はあ・・・」
たった数秒だったが、数時間のように感じた。
「大丈夫水上君?すごい汗かいてるよ?」
三島が心配して声を掛けてくれる。
今度はしっかり聞き取ることができた。
大丈夫だよ、ありがとうと言いかけたところで6組のドアが勢いよく開く。
「ガラガラ、バーン!」
教室の中から、教師の驚愕した声と、生徒の困惑した声が聞こえてくる。
ドアから飛び出してきた少女は、ものすごい勢いで俺の前に立つ。
「翔!!」
久びりに見たその顔に驚愕を隠せない俺。
「
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