第1話

あの日から数日がたった。

まだ彼女とは話せていない。


「あんた、まだ落ち込んでるの?元気出しなさいよ!!」

クラス中に響き渡る大きな声で恥ずかしいことを言ってくれる。


彼女の名前は不知火恵しらぬいめぐみ

幼いころからの腐れ縁で、現在俺のクラスメイトだ。


「もう、声が大きいぞ、他の奴らに聞こえるじゃないか」

恥ずかしくて、少し怒った口調になってしまう。

しかし、恵は気にした様子もなく話を続ける。


「はあ、あんたが振られたことみんな知ってるわよ、いい加減忘れて次の恋愛してみなよ!」

こいつなりに励ましてくれてるんだなと感じる。


ただ、当の恵はクラスメイトの男子の多くに好意の目を向けられていることを知らない。


誰にでもわけ隔てなく接するフランクな性格。小さな顔にぱっちりとした大きな目。制服の上からでもわかる大きな胸。

これほどまでのスペックを持つ女子を男どもが無視するはずがない。

高校に入ってからの告白された回数は2ケタを超えるらしい。


「もう、いいよ俺は、一生恋愛なんてしたくない」

慰めてほしいような感じで言ってみる。

「何馬鹿のこと言ってるのよ、、そういえばあれからあのことは話したの?」

ちょっと目を泳がせながら恵が聞いてくる。

「まだ話せてないよ。というか明らかにさけられてる感じがするんだ」

ここ数日のことを思い浮かべながら悲しくなる。


「まあ、別れてから数日は気まずいもんなんじゃない?そのうち話せるようになるわよ!」

また、恵が元気づけてくれているが、彼女のことを考えるとまったく話が入ってこない。


「おーい、授業始めるぞー席に就けー」

我が2年3組の女教師高橋和美たかはしかずみ先生が着席を促す。

推定175cmはあると思われる高身長。

それに似合わぬ中学生のような幼い童顔だが妙に色気を放っている。


2年生の初めにクラスメイトの発表と先生の発表が同時に行われるのだが、男子生徒は高橋先生に担任を持ってもらえるかが非常に重要。

クラスメイトより担任のほうが気になるのがうちの学校の特徴だ。

運よく高橋先生に担任をもってもらった我がクラスはほんとに幸運である。


「相変わらず綺麗よね先生、癒されるわー」

嬉しそうに話してくる恵。

男子にだけではなく女子にも人気なのが和美ちゃん。もとい高橋先生なのだ。


「おーい、恵イチャツイテないで早く席に就けよー」

高橋先生が少し茶化したように注意する。

「イチャツイテないもん!!」

なぜか恵が顔を真っ赤にしてこちらを睨んでいるが、大人しく席に座った。


委員長の三島明日香みしまあすかの号令によって朝のホームルームが始まる。

「起立、気を付け、礼!」

何の変哲もない、朝のホームルーム。


しかし、このホームルームの間にこれか俺の人生を変えるであろう事件が起きる。

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