番外 サルとブタとクチバシと尼

「いやぁ、にしてもまさか迷子センターだっただなんてねぇ。イカのアイツのせいで全然わからなかったよ。いやぁ、参った参った。」

「道もわからないのに先頭切って歩かないでくださいよ。空港経験者あなただけなんですからぁ。次のフライトまで間に合わなくても知らないですよ。」

「ケケっ、間に合わなかったらそれはそれで。」

「うむ。」

「そういえば、あのイカなんであそこにいたんだろうなぁ。」

「俺たちと同じように道に迷っていたとかですかね?」

「ケケッ、タクシー乗り場が見つからなかったとか、そういう単純なやつだったりして。」

「うむ。」

「あいつら喋ることができないからわかりにくいんだよ。この中に読心術を使えるやつがいればわかったかもしれないけど。」

「俺は力仕事担当なんで、MPを使う術は使えませんよ。」

「ケケッ、軽い呪文なら使えるけど、さすがにそれは特殊すぎ。」

「フフフ。」

「あっ、やっぱりお前気づいてたんじゃん。その微笑みはひょっとして全部わかってた感じだな。早く教えてくれればよかったのに。やっぱりお前、そういうところ昔っから変わんねぇな。」

「まぁまぁまぁ。1年ぶりなんですから、喧嘩するのはよしてくださいよ。」

「ケケッ、やっぱりいつ見ても二人のやり取りはサイコーですな。わざわざ来た甲斐があるってもんだ。」


人間のお年を召した女性二人組が声をかけてきた。


「あのーすいません。もしかしてなんですけど、『元祖西遊記ファンキーモンキー大冒険』の4人組ですか?」

「えっ、ええ、そうですよ。」

「あっ!あの噂は本当だったんですね。クランクアップした後も定期的に主演4人が仲良く旅行しているっていうのは。」

「んーまぁ、あのゲームで全然活躍できなかったのが悔しかったんで、定期的に反省会開いてたら、最終的に旅行会みたいになっちゃっただけなんすけどね。」

「ケケッ、世間的にはクソゲーとか言われてんだけど。俺たちにゃ関係ねーよ。魔法も何もさせてくれなくて、ただの付き添い扱いだもの。そりゃそんな評価だよな。」

「いやぁ、すいません。今、あのゲームとおんなじ感じで道に迷っちゃってて。迷子センターで道を教えてもらったところなんですよ。」

「ああ、そうだったんですか。あのーもしよければなんですが、写真撮って頂けないでしょうか?」

「いいですよ~。こうイエーイって感じでいいのかな?」

「ありがとうございます!じゃあカメラ渡すからよろしくね。」

「オッケー。じゃあ、笑って笑って~。」


パシャリと音が鳴る。


「じゃあ、私と交代。もう一枚お願いします。」


パシャリと音が鳴る。


「ありがとうございます。ところで人間界に行くつもりのようですけど、どこへ観光しに行く感じなんですかね。」

「トットリとか言う地方でCMを撮ったから思い出巡りとしてそこに行くつもりですよ。」

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私はドラゴン、ファンタジー俳優 野良ぺリカ @nora_perikan

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