二一三二年 四月七日(火)昼から夕方
新小岩。
誰にも気づかれることなく赤い歩道を越えて、そのままチェーン喫茶店へ。お洒落っぽいけど、どこか田舎臭いのは、この街にあるもの全てがそうなのでしょうがない。
「アサリのやつとアイスレモンティー下さい」
「俺、ナポリタンとカフェオレ」
席について注文。その三分後には頼んだ品物が届いた。
「ちょっと待って」と理奈。
「なに?」
「あそこに同級生がいる」
「同級生?」
理奈は窓際のカウンター席を目線で指した。金髪で特攻服を着た女が丁度、席に着くタイミングだった。
二十世紀の偉大な発明。レディース暴走族じゃないですか。しかもバリバリ現役だ。
「やばい。カツアゲされる」
「十三人しかいない同級生をカツアゲなんて有り得ないでしょ」
「あの子の名前は?」
「中村麻耶」
「あ、こっちきた」
腰まで伸びてる金髪が揺れる。振り返れば、なかなか気の強そうな顔だけど、それが意外にハマッて、つまりは美人。胸も大きいし、睫も足も長い。白い特攻服には赤い刺繍で『愛羅武勇』と『天上天下唯我独尊』とある。方向性マックスでおかしいよ。ここは二十二世紀なのに、どうしてこんな格好してるんだ。
「ねぇ、金貸してよ」
あぁ、なんて劇的でお約束な展開。これってやっぱりカツアゲじゃないですか。近未来チェーン喫茶店カツアゲ時代の幕開けじゃないですか。
「嫌です」
理奈がきっぱりと断った。
「あんた、今朝、オリエンテーションにいたでしょ。そっちは彼氏?」
不死身の元探偵と花束代わりの地球 @cantokourogi
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